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始めるより、終わらせる方が難しい

「人生は引き際が肝心」といわれる。あちこちでこの言葉の重要性を痛感させられる。歌手などのアイドル、ビジネスマン、経営者、芸術家、いつまでも過去の栄光にしがみつき、引き際を失敗したことでかつての栄光に自ら泥を塗ってしまうケースがある。

個人的には新しく始めるより、美しく終わらせる方が難しいと思っている。

引き際の美学

完璧なまでに美しく引き際を作った人は世の中に何人かいるが、中でも歌手の安室奈美恵さんやゾゾタウンの創業者の前澤友作さんはお見事だと思っている。引き際が美しい、を一言でいうと「引退時がピーク」ということである。両氏ともに歌手、ビジネスの最高のピークを付けていた時期の引退であった。これはなかなか真似の出来ないことだと思っている。

現状がうまくいっている時に身を引くことは大変難しい。たとえば会社経営者でもビジネスマンでも、「あの人は若い頃は今と違って切れ者で、バリバリやっていたんだけどね」と陰口を叩かれ、今はすっかり生気が枯れてしまったり、窓際族で抜け殻のようになっているケースは多い。

人気を博したYouTuberの多くは目標となるチャンネル登録者をかかげ、それを達成すると「次は100万人を目指します」と次の目標に向かっていく。次々と目標を達成し続けられれば素晴らしいのだが、栄枯盛衰で勝ち続けられる人は本当に少ない。結果として引き際を誤るという事が起こりえる。

もっと身近な例で言えば親子の関係だ。子が何歳になっても親の感覚が抜けきれない人もいる。子が成人して孫を育てる段になっても口やかましく干渉する親だ。この場合は親という立場の引き際を誤っていると感じる。

美しい引き際は大変難しいのだ。

目標を達成したら引退する

上述の通り、人は目標をかかげそれを達成したら次の目標に向かって進むのが一般的だ。いつまでも上を目指して進み続ける。アイドルのような人気商売ならなおさらその傾向は強まる。だが引き際を誤ると「あの人、昔は良かったんだけどね」と言われてしまう難しさがある。どうすればよいか?

結論的には「目標を達成したら潔く引退する」が一定の合理性を持つ文脈が存在するのではないだろうか。筆者は英語を教えるYouTubeチャンネルを運営している。自分はチャンネル登録者は数より質が重要だと考えているので数には興味がなく、あまりチャンネル登録者数は見ていない。逆に急激に数が増えると、何かと面倒事も増えてしまうので「バズなんて要らない。少しずつ微増くらいが理想」と考えている。

仮に引き際よく引退することを実現するなら、「チャンネル登録10万人を達成したら、次は100万人を目指します!」という代わりに「10万人到達したらそこで動画の更新をやめ、新しく別の仕事を始めます!」という方が良いのかもしれない。いつまでも同じことを繰り返しても、自分も見ている側も飽きてしまうだろう。それなら小さな実績を残した時点でスパッとやめてしまうのだ。引き際よくやめる戦略を持つことは、人生全体を最適化を考える上で合理的である。


引き際が美しい人は尊敬をする。人は過去や現状の栄光にしがみつき、そこから自己肯定感を受け取り続ける。それはまったく新しいことを始めるよりはるかに楽で確実だからだ。しかし、人生は短いようで発展性のない日々を送るには長すぎる。少しずつ、引き際を考える時が来ているのかもしれない。



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