「ストレスに強い人」の正体
一般的に「ストレス耐性が強い人」と聞くと、多くの人は「心が強い」やというイメージを抱くかもしれない。だが、実際には違う。彼らが持っているのは、「強さ」ではなく「受け流す力」であり、ストレスを受け止めず、他人の問題を自分ごととして過剰に考えこまないのだ。
ビジネスをする上で仕事ができる経営者ほどこの傾向があると感じるし、自分自身も同じ感覚がある。持論を述べたい。
真面目な人ほど心を病む
真面目で他人の話に真摯に耳を傾け、問題を自分ごととして考える共感性の高い、いわゆる「いい人」ほどストレスに弱い傾向がある。彼らは、他人の悩みや問題をあまりにも真剣に捉えすぎ、結果として自らの心に負担をかけてしまう。
仕事ではこれが強み、弱みとして機能する。たとえば感情労働に従事する人たちにいえる。感情労働とは、他人の感情に寄り添ったり、その感情に応えることが求められる仕事で、看護師や教師、カウンセラーなどの職業が該当する。
自分も昔コールセンターのオペレーターという感情労働をやっていたからよく分かる。お客さんの気持ちに寄り添い、クレームを真摯に聞き入れるオペレーターは非常に顧客からモテる。「◯◯さんと話がしたいので代わってください」と指名で電話がかかってくることもあるほどだ(ちなみに指名電話はお断りしなければいけない)。
しかし、この強みが仇になり弱みになることもある。あまりにもお客さんに共感しすぎるので強いストレスがかかる。顧客満足度が高いオペレーターほど、気持ちを病んで仕事をやめていった。
アメリカ心理学会の調査によれば、感情労働者多くが職務中に強いストレスを感じ、一部の人は鬱や不安障害に悩まされているというデータがある。真面目で優しい人ほど、打たれ弱い。そしてどんなに心を強くしようとしても性格を変えるのは難しいと感じる。仮に一時的には耐えられても、人間のメンタルコンディションはよく変わるし、ボディーブローのようにじわじわダメージが蓄積するといつか耐えられずに崩れ落ちてしまうのだ。
経営者のメンタルが強い理由
一方でストレス耐性が高い人は、相手の話を深刻に受け止めすぎず、自我が強いタイプだといった。彼らは他人の意見や感情に適度に耳を傾けつつ、感情を入れずにフラットに聞く。相手の話の「感情」を受け取らず、「情報」だけを処理をするイメージだ。そのため、自分の問題として重く捉えず、心を響かせることを選ばない。特に、経営者やリーダーシップを持つ人たちにはこの傾向が顕著である。
よく「経営者はサイコパス」や「人の気持ちがわからない」などと言われることがあるし、確かにそういう感じの経営者は世の中にいる。だが、実はそれが良い経営をする上で必要な資質でもある。なぜなら、会社を経営する上では、時に感情を殺して冷徹な判断が求められるからだ。
例えば、会社に合わない人材を解雇したり、不採算部門をカットしてしまう決断は、心の優しい人には難しい。普通の人であれば、そのような判断に心を痛め、実行に移すことができないだろう。
だが経営者という役職は、こうした他の人がやりたがらない困難な役割を避けられない。もし、すべての人に対して良い顔をして、誰も傷つけず、全員を救済しようとすれば、最終的には会社全体が沈んでしまう。従業員一人ひとりに対する配慮はもちろん必要だが、それ以上に経営者としての冷静な判断と決断力が重要なのである。ストレス耐性が高い経営者ほど、感情に流されずにこれらの決断を下し、結果的に会社全体を守ることができる。
気分の切り替えが大事
ストレス耐性が高い人といっても、何でも受け流して何も感じないわけではない。やはり誹謗中傷や攻撃的な態度を受けるとイライラする瞬間はある。そんなとき、こうした人達はもう1つの特徴を持っている。それがストレスを感じたときの気分の切り替えである。
筆者の場合はしんどいときには「寝る」ことで気分をリセットすることが多い。まるで子どものような話だが、精神が揺さぶるようなことがあった日は即座に寝る。夜は脳も体も疲労していることで、物事をネガティブに捉えがちだが、いざ朝になってみるとその悩みもどうでも良くなっていることも多い。
また、他の楽しいことで感情を「上書き保存」することもある。自分の場合は仕事で強いストレスを感じた時は気持ちを落ち着けるために映画館へいく。映画鑑賞中は内容に集中し、終わった時には仕事のストレスは消えて冷静に建設的な対処法を考えることができるようになる。
最後にそもそも嫌な要素は入口でシャットアウトすることが肝要である。自分の場合は仕事柄、ニュースを見ざるを得ないが、ビジネス、経済、金融、テクノロジー、グルメといった仕事や趣味に関係する情報以外はできるだけ遮断するようにしている。
悲惨なニュースや胸糞悪いゴシップ、他人のケンカやトラブル話は流れてきても毎回「おすすめに表示しない」をクリックして見なくて済むようにしている。また、人間関係でも愚痴不満を言う人とは付き合わずに距離を置く。嫌な話を聞き続けると、それがじわじわと心に浸透してきて仕事でも前向きな発想ができなくなるためだ。いつも気持ちが暗くて前向きになれない人は、日常的にあまりに多くのニュースとSNSで嫌な話を聞きすぎている。
現代社会はストレスがつきものであり、それは感情の処理との戦いである。自分は昔、夜遅くまで寝付けず悶々として大事な人に話を聞いてもらい、翌朝言い過ぎて後悔することもあったが、嫌な気持ちになる要素は入口で排除し、さっさと寝てしまう事を勧めたい。
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