おかあさん、おかあさん。3

食卓でごはんを食べているとき、家族の誰がすでにどういう家事を分担し終わっていて…と、メンバーが順番に割り振った仕事の均等さを数えていく。家事をこなした量の少ない人が、食器洗いを担当するわけ。


「ふつうのいえのこどもは、こんなにたくさん家事を任されないと思うんだけど」という文句の言い方を、私たちこどもは、なぜだか持ち出すことができなかった。

無理な分量の家事なのだけれど。

父は腰が痛い、とか足が痛い、とか言って日中もたびたび横にならないといけないし、あとから聞いたのだけれど父の父も母も…私にとってはおじいちゃん、おばあちゃん、両方とも…心臓に不整脈があって父もそうなのですって。

腰が痛くて座っていられなくって、父が会社を辞めたのが、私と嵐が3歳と1歳のとき。

で、冒頭の母の「しごとがなくなるのがこわくて」

という状況がつくりだされていったわけで。



こういう、ため息が終わらない状況を、どう言っていいかわからないよ、と母に質問すると

「泣きっ面に蜂、とか、弱り目に祟り目、とか、悪いことは重なるもので、とか、底を打ったと思ったらまださらに底があって、とか、転落の軌跡、とか、まぁいったん底辺に落ちますと、とか、悪い時にはとことん運の悪いことは次々起こるもので、とか、そんな感じ」

と、わーーーっと「とか」で語句を並列したあと、ひといきついて
「みたいな候補を書いてみて、しっくりくるものを選ぶといいよ」

と結んだ。

そして、
「漢字を書くときにわかんなくなったらば、お母さんに口できかずに、辞書を引きなさいよ。口で言う言葉で確認が済むものと、目で見て触ってみて、現地現物で確認しないといけないものは、ちゃんとわけなさいよ」
と、やはりひとことばかり余計な教育をいれてきた。



ーー母は、私たちこどもが

「歩く人間辞書」とよぶぐらい、いろいろしっているので。

「最大値の2割」ぐらいで構わないから、ご機嫌でいたい。いろいろあって、いろいろ重なって、とてもご機嫌でいられない時の「逃げ場」であってほしい。そういう書き物を書けたら幸せです。ありがとう!