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朝ってぇのはクソなのよ。

朝。
ただ単純に太陽が登っただけだというのに、諦めのような無力感のようなどうしようもない気分になるのは何故だろう。
テレビがささやかに笑っている。ゴミ収集車が膨れて走っている。このクソみたいな日常も回収してくれないか。

クソと朝の関係は深い。
満員電車は不快と図体が支配する。
最寄り駅着の列車はNAVITIMEでいう緑くらいの混雑度なため、車両の真ん中くらいにいるのが一番楽だ。
それでも周囲に気を遣い、歪む正中線。唸れモディファイア。
30分程度の小地獄、電子書籍で遠藤周作を読み漁るのが常だった。漁り具合はRTAの如く。
意識を遠藤周作に集中させなければならない。
朝はなんかめっちゃ腹が痛くなる。
不快な時というのは時が経つのが遅く感じる。みんな大好き相対性理論。ふしぎデカルト。
体感時間が長いほど、腹痛リスクは高まる。
腹痛から目を逸らした先が遠藤周作だったのだ。
反さわやか会社員が便意を紛らわすために己の書へ喰らいつくとは遠藤周作も想定外だろう。
事実とは小説より奇なり。本当に申し訳ない。海と毒薬からの悲しみの歌は人生でベストに入る小説です。
腹痛時の平沢進はガチで腹に来るよね。頭痛には平沢進だって8000年前くらいにバズってたけど腹には叛逆するから。
すべてのものが脱糞を支援しているように思える。
なぁ、見えるか?あれが東京だよ。
幼い頃に一度だけ訪れたこの街並で、今、己の便意と戦っているんだ。
大人になるってそういうことなのかな。
会社の最寄りはNAVITIMEの赤で、まるで腹の東京アラートだね。
スイマセン、オリマースと唱えるとたまに避けてもらえるし、避けてもらえなくても変形しながら進まなければならない。トランスフォーム適用。
ここでワンポイント、なるべく駅のトイレに入らないほうがいいよ。
トイレは安寧の地であるため、着席した瞬間に気も輪状筋肉も緩むよ。
出られなくなり遅刻するリスクを考えたら、出来るならもう少し我慢したいね!
そういうアドバイスは全無視する人生だった。
もう少し人の話を真面目に受け止めていたら、こんなことにならなかったのだろうか。知らねーよ。

子どもの頃からサラリーマンに憧れていた。
鈍臭いガキで、しかもアホだった。
二十歳になれば勝手に大人になると思っていた。
中学生の頃から朝はずっと腹が痛かった。
一時間目の授業はわりと保健室にいた。
高校生になると午前中は授業に出なかった。
もうどうでもいいやと思って自分好みの女の子アンドロイドを育てる携帯のブラウザゲームばかりしていた。
大学では昼に腹が痛かった。朝は起きていないから。
それでも夕方と夜はとても楽しかった。
朝の数だけ絶望して、歳ばかり重ねてきた。
絶望とともに腹痛はやってきて、どうにかこうにかやり過ごして交感神経を宥めすかしていた。
いつの間にか、腹の痛みも日常の一部だという心持ちになっていた。なんとか付き合っていこうと。
大人とはなにか?永遠の議題だ。
きっと諦めることが大人になるということだろう。
もう腹を痛めない朝は諦めた。
それでも、人間の尊厳は諦めたくない。
これが子どもの我儘というのなら、そんな世界に太陽なんか登らなくてもいい。

ただ、それでも、旅館に泊まった日の朝ご飯は超絶わくわくするし、死ぬほど食う。

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