父が意識不明になって初めてエンディングノートの大切さを実感した
「エンディングノート」を作っている人はどのぐらいいるだろう?
私は、父が倒れたのをきっかけにエンディングノートを作っておくことにした。
突然、意思疎通ができなくなった
2023年夏、ある日の早朝、兄からの電話。
「父さんが倒れた。くも膜下出血で緊急手術をしている。」
父が夜中に強烈な頭痛に襲われ、電話で兄に助けを求めて兄が救急車を呼んだそうだ。(兄家族と父は近所。私は飛行機の距離。)
父は70代、賃貸マンションで一人暮らし。
母は末期ガンになり闘病の末すでに亡くなっている。
父の手術はうまくいったが、1~2週間程度は予断を許さない状態が続いた。
その後2ヶ月間は目を覚まさなかった。
それから数週間が経過した頃にようやく目を覚ましたものの、一直線に前を見つめているばかりで、言葉を発することもない。つまり今なお意思疎通ができていない。
意思疎通ができず何に困ったのか
手術費用と入院費用(2~3週間)の見積もりが500万円を超えていた。くも膜下出血の手術後の合併症も発生して手術費用がかさんだことも要因だ。
その見積もりに驚き、初めて父の健康保険書を探し始めた。
健康保険証はすぐに見つかり、保険が適用されると一般家庭でも払える現実的な価格になる。(母が末期ガンで入院したときにも思ったが、健康保険は本当にありがたい。高すぎて文句ブーブー言いながらもちゃんと納得して払ってる理由はそういうところだ。)
次に困ったのは銀行印だ。
認印はすぐに出てきた。しかし銀行印がどこを探しても見つからない。銀行印が無いと父のゆうちょ口座から医療費が支払えず、年金が振り込まれても使えない。誰かが建て替えることになる。
ひと月ふた月ぐらいの一時的な費用であれば何とかなるが、今後も継続的に支払うとなると生活を圧迫する程の費用がかかる。
初めて見る「エンディングノート」というもの
銀行印を探す中で父が作ったエンディングノートが見つかった。
家族の連絡先や財産の事、家族それぞれへの思いなどが綴られていた。
そんな中に印鑑の事がこのように書いてあった。
「印鑑の場所は息子達が知っている」
これは印鑑の場所を書くのが面倒だったわけではなく、おそらくセキュリティ意識が高く、あえて具体的な場所を記さなかったのだと思う。
それは良いのだが、なんと我々兄弟は印鑑の場所を誰も聞いていなかったのだ。
エンディングノートになぜこんな不備が発生したのか?
父は仕事を引退して以降、母の治療のこともあり、置かれた状況に合わせて何度か引越しをしている。(バリアフリーの物件へ、病院の近所へ、とかね)
そのたびに印鑑の隠し場所を父から聞かされていたのだが、今回父が倒れたのは新しい賃貸マンションに引っ越してすぐのことだった。
これはタイミングが悪かったと思う。
引っ越し後、印鑑の隠し場所を伝える前に倒れてしまい、誰も知らない状態になってしまったわけだ。
探しても見つからない印鑑、最終的に諦めた
隠し場所の傾向なんて概ね同じでしょ?と思う人もいると思う。
私もそう思っていた。
そもそも過去の隠し場所は、押し入れのバッグの中や木箱の中など、いたって普通の場所だし、探せばすぐに見つかると思っていた。
父は70歳を過ぎて終活を始めていたこともあって、すでに必要最小限のモノしかないし、狭い物件に引っ越したから、なおさら簡単なお仕事だと高を括っていた。
ところがどこを探しても見つからないのだ。
小物入れ、棚、バッグ、冷蔵庫、各種収納どころか、畳を引っぺがしても見つからない。
盗まれた? → 口座から引き出された形跡はない。
紛失した? → つい最近使った形跡があり無くしていないと思われる。
総力をあげて探したけれど見つからず、最終的に諦めるほかなかった。隠し上手が過ぎる。
(エンディングノートには、管理している貴重品が記載されており、実印やキャッシュカードの存在も書かれていた。しかしそれらも見つかっていないので、おそらく一緒の場所に隠してあるんだと思われる。)
エンディングノートに助けられたこと
エンディングノートという名称は「死んだとき用」をイメージさせる。
もちろん死んだときにも家族たちの助けになるだろう。
だがそれだけではなく「意思疎通ができなくなったとき」に有用だ。
例えば、治療に対する考え方だが、父は延命治療を望まないようだ。それどころか、ガンになっても自然に任せて治療はしないとのこと。(おそらくガンで亡くなった母の看病をしていて感じたことがあるんだろう)
父の治療に対する意思が記されていたことで、命にかかわる極めて難しい判断であっても、家族はある程度納得して決断できる。
そんな指標がない場合、「あの決断は正しかったのか?」といつまでも考え続けることになるだろう。
私自身は、ちょっとだけ長生きするために激痛や苦痛に耐えたくないし、意識が戻る可能性がなくただ心臓を動かし続ける治療は受けたくないと考えるタイプだが、そんなことは人それぞれで本人にしか分からないから他人が決断するのはツライはずなのだ。
だから今回は父のエンディングノートがあってとても助かった。
エンディングノートを作ることにした
今回の父の件で、もしも私が突然の事故や病気で意思疎通ができなくなった場合、誰がどのようなことに困るのかを実感を持って理解できた。
私の年齢は40代前半。エンディングノートを作るには早すぎるように思える。けれども独身の私の場合、親兄弟に合うのは年1回程度で連絡頻度も少なく、自分だけしか知らないことが多い。
いざという時に家族を困らせてしまわないように、エンディングノートを作ることにした。
長期間の入院を伴う場合は継続的に大きな出費となるため、お金の事がとても大切になる。また、治療方針について誰かに重い決断をさせてしまうこともありうる。その場合のために、あらかじめ私の意思を記しておく。というのが作成の方針だ。
参考までにノートに記したことを列挙する。
免許証やマイナンバーカード/保険証などの保管場所
銀行/証券口座(当面の入院費用&死んだときの遺産)
有償サービス(サブスク、ネット回線、スマホ、賃貸、光熱費、自動車保険、JAF、スポーツジムなど定期的に費用が発生するサービスの解約方法)
不動産の情報(固定資産税など)
意識不明時or認知症時の希望(治療/介護の希望から、費用支払いなど)
死亡時の希望(葬儀のことや知らせてほしい人など)
上記の記載に加えて、ノートに記した情報の鮮度を保つため「エンディングノートの更新日」を定めた。
Googleカレンダーの1月1日付で、年1回の予定として組み込まれている。
ちなみに私のエンディングノートは100均で手に入る普通のノートを使っている。専用のノートもあり、書き漏れが無いようにひな形がしっかりしているようだけど、自分に関係のない記入枠もあってしっくりこなかった。
あなたも作ってはどうですか?
エンディングノートは1日もあれば作れる。
たった1日で大切な人たちを困らせずに済むと考えれば安いもんだ。
めんどくさがらず、ぜひ作ってみて欲しい。
ちなみに記事見出し画像にある木工は父の作品です。
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