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原発への攻撃はジュネーブ条約違反

ロシアがウクライナのザポリージャ原子力発電所への攻撃を開始したとメディアが報じました。原子力発電所への攻撃はジュネーブ条約違反(髙橋洋一氏)と言う話しを聞いたため、ジュネーブ条約について調べてみました。

 

1.   ジュネーブ条約とは


ジュネーブ条約は、スイス人青年実業家アンリ・デュナンの献身的な活動に端を発します。 1859年、北イタリアでのソルフェリーノの戦いの惨状を目撃したスイス人青年実業家アンリ・デュナンは、近隣の農家の婦人達を組織し、敵味方なく傷ついた兵士達を救護しました。 後に、デュナンは2つの提案をします。
・平時から戦時に備え、傷病兵を看護する組織を各国に整備しておくこと
・各国の傷病兵を救護する組織の活動を中立なものとして国際条約で保護すること

この提案は多くの支持を受け、1864年には、12カ国の代表が調印しジュネーブ条約が成立します。このジュネーブ条約では、敵対行為に参加しない、あるいはもはや参加していない人(紛争犠牲者)の保護を規定しています。 

その後、数度の改正を重ね、現在のジュネーブ条約は、
 陸の条約 / 海の条約 / 捕虜の条約 / 文民の保護
という4つの条約より構成されています。さらに、この4条約を補完する3つの追加議定書があります。

2.   ジュネーブ条約における原子力発電所


それでは、ジュネーブ条約において原子力発電所はどのように位置付けられているのでしょうか?外務省のホームページ(ジュネーヴ諸条約及び追加議定書の主な内容)には、原発に関して3か所の言及がありました。(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/k_jindo/naiyo.html)

・第1追加議定書(第4編 文民たる住民の保護)
 危険な力を内蔵する工作物等(ダム、堤防、原子力発電所)の保護
 (第56条)
・第1追加議定書(第5編第2部 「重大な違反行為」の追加・拡大)
 故意に行われ、死亡又は身体・健康に対する重大な傷害を引き起こす
 次の行為
 ・危険な力を内蔵する工作物等(ダム、堤防、原発)に対する攻撃
 (第85条3)

・第2追加議定書(第4編 文民たる住民の保護)
 ・危険な力を内蔵する工作物等(ダム、堤防、原子力発電所)の保護
 (第15条)
髙橋洋一氏の言う通り、「ダム、堤防、原子力発電所は保護されるべき(=攻撃対象としてはならない)」となっています。 

昨年、中国の三峡ダムが決壊するのではというニュースがありましたが、もし決壊すると大規模災害となると言われていました。原発だけではなく、ダム、堤防は危険な力を内包する工作物にあたり攻撃してはいけないとされています。

3.   条約違反を行った場合の措置


「重大な違反行為」に対しては、次のように定められています。
「締約国は、この議定書の「重大な違反行為」を処罰するために必要な立法をおこなうとともに、容疑者の国籍・犯罪地を問わず、「引渡しか処罰か」の義務を負う」となっています。要するに、各締約国は、この議定書の「重大な違反行為」をおこなった者や命じた者に対する処罰のための国内法を整備し、処罰する義務を負わせています。したがってジュネーブ条約とは、条約に違反した個人を国内裁判所で訴追すること原則としており、国際裁判所での処罰が想定された制度ではありません。

となるとジュネーブ条約締結国であるロシア(ロシアは条約を批准している)にも、ロシア国内法で、原発に対する攻撃を行ったものに処罰する法律があるということになります。では、ロシアがロシア軍(=プーチン)のしたことを「重大な違反行為」として処罰するかというとそんなことはありえるはずもありません。

4.   自分事として考える


原発に対しての攻撃は行ってはならないとされていますが、原発が恐ろしいのはそれだけではありません。原発を制圧し、コントロールを放棄すると原発事故が発生します。そうなるとその地域は、チェルノブイリ化することになる(髙橋洋一氏)わけです。プーチンはルビコン川を渡ってしまったようにみえます。「ウクライナのNATO入りは絶対に認めない」というプーチンは、何をしでかすかわかりません。
我々は傍観者としてこれらのニュースに触れていますが、とてつもなく恐ろしいことが起こりうる危険性があります。また、昨今言われているように、中国の台湾侵攻が現実となった場合のことも考えておくべきでしょう。

#ウクライナ
#ジュネーブ条約

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