きょうのまなび #17

シグニファイア(signifier)

 対象物と人間との間のインタラクションの可能性を示唆する手がかりのことである。デザイン用語としては、アメリカ合衆国の認知科学者ドナルドノーマンによって提唱された。俗にアフォーダンスとも称するが、本来アフォーダンスとは「対象物と人間との間のインタラクションの可能性」自体を指し、「対象物と人間との間のインタラクションの可能性を示唆する手がかり」を指すわけでは無い。


“デザイン側が期待することを誘導するサイン”
良いシグニファイアはメンタルモデルが重要!人間の「これはこういうものだ」という頭の中にある思い込みがメンタルモデルである。例として、「水=青」「お湯=赤」というイメージは、蛇口に“この蛇口からは水、お湯が出ます”と書かなくても人間は安全に使用することができる。(HCD=人間中心設計)


個人的には、『シグニファイア=メンタルモデル=思い込み、当たり前』と考える。
シグニファイアを取り入れてデザインするときはこれを逆算する。
下記に事例としてあげているが、「棘のついた甲羅=トゲゾー」は、「棘を踏むと怪我をする」という“あたりまえ”なことを表現することで、子供でもわかるように設計された優れたデザインであると言える。


事例としては、例えば駅や公共施設に設置されるゴミ箱の投入口の形状。丸い形状の入り口は、缶やペットボトルを捨てることを示すシグニファイアであり、細長く四角い入り口は雑誌や新聞を捨てることを示すシグニファイアである。これらのシグニファイアがゴミ箱に直接付与されることにより、利用者はより直感的にゴミを分別することができる。


一般的にデザイナーは対象物の用途や仕様に沿うように設計すべきとあるとされるが、あえて反するようなシグニファイアが設計されることもある。
シグニファイアは視覚のみでなく、聴覚や触覚などの知覚される特徴もまたシグニファイアとなる。


〈よりわかりやすい事例〉
扉の取っ手部分に取り付けられた平たい板
扉の向こうに行こうとする人間にとって、この平たい板は「押し開ける」という行為を想起させるシグニファイアである。同時に、この平たい板は「押し開ける」というアフォーダンスを利用者に提供する。

はんだごての形状
ペンと共通したその形から「ペンのように持つ」ということを想起させるシグニファイアである。ただしはんだごては「ペンのように持つ」というアフォーダンスを利用者に提供しない。

Webページに設置されたボタン状のリンク
ページを移動したい利用者にとって、ボタン状のリンクは「ボタン状の枠内をクリックすれば遷移する」というデザイナーの意図を想起させるシグニファイアである。

駅のホームで待つ人々
駅のホームで電車を待つ人々は、電車に乗ろうとする人間にとって「電車がまだ来ていない」ことを想起させるシグニファイアである。これは意図的で無い現象が偶然シグニファイアとして働いた事例である。

マリオのゲーム(アフォーダンス)
踏むと甲羅になる緑色の亀(ノコノコ)と、踏むとダメージを受ける赤色の亀(トゲゾー)。ノコノコは棘がないから安全=踏んでも良い、トゲゾーは棘があるから危険=踏んではいけない。棘という視覚的なサインによって踏んでも倒せないというアフォーダンスを与えている。

これらは一応デザイナーとしての考え方の1つに持っておいて損はないと思います。

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