エンジニア転職の登場人物を透明化する

Sansan株式会社の高橋と申します。Sansanではもともとエンジニアとして開発をしていて、2018年12月から人事部に異動してエンジニア採用を担当しています。

光栄にも「転職透明化マガジン」の第1回ということでお声がけいただき、この記事を書いています。転職透明化マガジンについては、やすおさんの以下の記事をご覧ください!

この記事の概要

開発プロジェクトの要件定義においても、ステークホルダー、登場人物を明らかにすることは非常に重要です。しかし、転職における登場人物は、求職者側にあまり認識されていないんじゃないかと感じています。各登場人物の役割、目的を明らかにし、そういった人物との会話における会社選びの情報収集に役立てていただけたら嬉しいです(なのでこの記事は求職者の方をメインターゲットとしています)。

なお、登場人物の役割や分担は場合によって大きく異なります。私は人事としては1社しか経験しておらず、他社の情報としてもそこまで多くのサンプルを集めているわけではありません。網羅できていないパターンも多くあるかと思います、ご了承ください。

用語について

この記事では転職透明化らぼの通例?に従い、転職する人を求職者、転職する先を企業、と呼ぶことにします。

ざっくり全体像

画像1

転職エージェント
・キャリアアドバイザー
・リクルーティングアドバイザー
転職サイト
・エージェントが運営する求人サイト
・ダイレクトの求人サイト
・スカウトサイト
企業
・面接を担当する現場エンジニア
・面接を担当しない現場エンジニア
・エンジニアではないが開発に関与するメンバー
・開発に関与しないメンバー
・開発マネージャー
・社長、役員、CTO、VPoE
・中途採用リクルーター
・中途採用アシスタント
・入社前受け入れ担当

転職エージェント

大手だとリクルートキャリア(リクルートエージェントの運営会社)さんやパーソルキャリア(dodaの運営会社)さんなどがこれにあたります。人材紹介業を行っている企業は日本だけでもなんと10,000社以上あるのだとか。

私は不参加でしたが、以前に転職透明化らぼでも「よいエージェントの見分け方編」というテーマでイベントが開催されていました。

転職エージェントの中にも、実は登場人物が複数存在します。

キャリアアドバイザー

求職者の方々と直接対面する人物です。会社さんによってはキャリアコンサルタントなど、呼称は様々です。

リクルーティングアドバイザー

採用アドバイザー、ということで企業側にアドバイスする人物です。複数のキャリアアドバイザー、複数の企業の橋渡しをします。キャリアアドバイザーに対しては各企業の特色や採用ペルソナを伝えたり、企業に対しては各求職者の進捗や転職市場全般の状況を伝えたりします。

なお、転職エージェントによってはキャリアアドバイザーとリクルーティングアドバイザーを同じ人が担当している場合があります。こういったスタイルを両面型と呼びます(別れている場合は分業型と呼びます)。広く知られる転職エージェントは多くの場合は分業型を採っています。こちらのほうが多くの企業、多くの求職者とやりとりできるからです。一方で、コミュニケーションする登場人物が間にワンクッション増えることになります。転職エージェントさんを利用される場合は、この特性についても確認しておくとよいでしょう。

KPIはエージェントさんによって異なりますが、キャリアアドバイザー、リクルーティングアドバイザーいずれもご自身経由で転職が決定したかどうかは大きいです。ちなみに、企業はエージェントに費用を支払うわけですが、多くの場合は決定タイミング、すなわち、ある求職者に内定が出て、その求職者が内定を承諾したら、その年収のうち特定の割合の金額をエージェントに支払う、という事が多いです。

転職サイト

こちらは特定の登場人物というとちょっと違うかもしれませんが、転職の形として紹介します。

エージェントが運営する求人サイト

いろんな企業の求人が掲載されていて、エントリーするとエージェント経由でその企業に申し込まれるというもの。エージェントさんとやりとりしながら選考が進むことになります。

ダイレクトの求人サイト

いろんな企業の求人が記載されているという点ではエージェントが運営するものと同じですが、エントリー後は企業と直接やりとりすることになります。選考においてその求人媒体の中の人とやりとりすることは基本的にはありません(ユーザーインタビューなどはあるかもしれませんが)。GreenさんやOpenWorkさんなどがこれにあたります。

スカウトサイト

求職者が求人媒体に自身の情報を登録すると、企業側から求人を紹介されるというもの。上記2つの求人媒体と重複する(求職者からのエントリーができる)こともありますし、スカウト限定(求職者はエントリーできずスカウトを待つのみ)の場合もあります。転職ドラフトさんなどは後者にあたります。

企業

転職先を選ぶという判断において、その組織にどんな印象を抱いているか、は非常に強い影響力をもちます。そしてその組織の印象づけをする要素としては、その組織の構成要因としてコミュニケーションをとったことがある人の影響が強いと思います。

しかし、たとえば面接が3回だったとして、面接官3人にしか会わなかった場合、その3人の印象だけで企業の印象を固定化してしまうのは過小学習、すなわちサンプルが少なすぎるのではないかと私は思います。企業の印象の解像度を上げるため、企業の中にどんな登場人物とコミュニケーションをとりうるか、を認識することは重要です。

面接を担当する現場エンジニア

通常は書類選考や1次面接で登場することが多いと思います。企業側としては、面接で外部の方に対面で会話させるということから、社内でもかなり信頼をおけるエンジニアを選抜させていると思います。求職者からすると、人柄や技術力などを見定めるうえで非常に有用な情報を得られると思います。

また、ここでの重要な要素として、このエンジニアと同じチームで働くのかそうじゃないのか、ということがあります。同じチームで働くことになるわけではない、あるいは決まっていないが、ただ面接官として登場している、ということもあります。「一緒に働くエンジニアの印象を何よりも大事にしたい」という場合は注意が必要かもしれません。同じチームで働くという場合であれば「一緒に働くエンジニアが欲しい」というモチベーションが強いでしょう。後者の場合、面接が業務としてどう評価されるか、は難しい問題です。おそらくKPIとして採用数が課されることは無いのではないでしょうか。

面接を担当しない現場エンジニア

面接を担当しない場合でも立派な登場人物です。カジュアル面談やオフィス見学、あるいは勉強会やカンファレンスなどで会うことができます。友人にその社員がいる、という場合もチャンスです。第三者的な視点からいろいろと情報を教えてもらえるというところがポイントです。こちらも、一緒に働くのか別チームなのかで状況は変わるかもしれません。別チームで働くことになるけども、組織、プロダクトを成長させるために優秀なエンジニアがほしいと思っているメンバーからは、その情熱を感じとることができるでしょう。役割としても、サーバーサイド、クライアントサイド、インフラなど、異なる立ち位置のエンジニアの意見も面白いと思います。

エンジニアではないが開発に関与するメンバー

一緒に仕事をする社員としてはデザイナーやプロダクトマネージャー、ディレクターなどのメンバーでしょうか。こうしたメンバーが互いに尊敬し合っているか、という点も働きやすさの観点では重要かもしれません。

開発に関与しないメンバー

日常的に一緒に仕事をするわけではないが、営業やマーケティングなど社員もいます。そういったメンバーから見て開発組織がどう見えているか?という点も入社後の体験としては意外と大きいこともあると思います。たとえばB2Bサービスなどの場合は実際に利益を上げるのは営業さんですから、彼ら彼女らがプロダクトにどういう考えを持っているか、という視点も検討材料になりえます。通常の選考プロセスで登場することは多くないと思いますが、面談など打診してみるのも面白いかもしれません。

開発マネージャー

2次面接あたりで登場することが多いかなと思います。メンバークラスのポジションの選考であれば、入社後に求職者のマネージャーを務めることになるでしょう。上司としてついていきたいと思えるか、という観点でも大事になってくると思います。

採用人数をKPIに持っていることもありますし、単純に自身の開発組織を成長させたいという思いは強いでしょう。ただし、採用計画や入社後のオンボーディング、について、エンジニアリングマネージャーなどの呼称で他の社員が担当している場合もあります。この点も確認する価値はあるかもしれません。

社長、役員、CTO、VPoE

ひとまとめにしちゃいましたが、最終面接あたりで登場する人物。面接以外でもWebなどのメディアでインタビューなどを参照したり、イベントで登壇している様子を見たりできることもあります。規模によっては、業務で直接絡むことは少ないかもしれませんが、会社の方針に大きく影響を与える人物です。この人物を尊敬できるか、この人物に経営判断を任せてもいいと思えるかどうかは非常に重要なんじゃないかなと私は思います。自分たちの組織をどう成長させるか、という点について誰よりも大事にしている人物です。

中途採用リクルーター

リクルーターときくと、新卒採用において出身大学の後輩に声をかけたりする現場メンバー、という文脈で耳にされたことがある方が多いかもしれません。しかし採用に注力している企業では通常、人事部に所属し採用活動に専念する社員がいて、その人物をリクルーターと呼んでいます(新卒も中途も同様)。現場のニーズや経営計画から採用の計画を立てたり、求職者と直接コミュニケーションをとり、情報の不足や不安に思っていることを解消したりします。企業によっては書類選考や面接なども担当します。逆に選考に関する権限は全くもっていない(合格/不合格の判断は別の社員が担当する)場合もあります。

KPIとしてはポジションと採用数、あるいは採用単価などがあるでしょう。というところを聞くと「採用目標を達成して評価上げるぞ!!」というモチベーションの方が多いという印象をもたれるかもしれません。しかし私が知っているリクルーターさんは定量評価をあまり気にしていなくて「その企業にマッチする候補者に入社してもらうことで候補者、企業の両方が幸せな状態になる」というところに喜びを感じる方が多いように感じています。

リクルーターには、ぜひ本音で不安や懸念を伝えてください。あなたが必要としている情報を提供してくれるはずです。

中途採用アシスタント

リクルーターの採用業務の補助ということで、求職者と面接官の日程調整やメールのやりとりなどを行います。何気に、コミュニケーションの頻度としてはこの人物が最も高くなることもあり得るかなと思います。リクルーターがすべて担当する場合もありますが、スピードが重要なところでもあるので、さばききれない場合など求職者やポジションが多いと分けることが多いです。アシスタントとしてはKPIを持っていることはあまり無いかと思います。

まとめ

エンジニア転職の登場人物を簡単に紹介してきました。いま対峙している人物はどんな人物なのか?を意識することによって、転職活動の解像度は更に上げられると思います。企業側の登場人物も沢山紹介しましたが、闇雲に沢山の人に会えばいいというものでもありません。自身の転職活動の軸に照らし合わせ、足りない情報や思いがけない情報を得るためにはどんな登場人物と会えばいいのか、中途採用リクルーターとコミュニケーションをとってみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?