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2020-2021のフォントニュース

色々ありましたが、個人的に気になった情報をまとめてみることにしました。

イワタ:新書体続々

2020年11月に創業100年を迎えたイワタ。この年も柔軟に時代変化に対応した多くの書体がリリースされることとなりました。

福まるご」はかつて活版印刷向けにリリースされていた丸ゴシックを現代の字様に合わせて復刻したオールドスタイルの丸ゴシック。可愛らしく、5ウェイトが揃っています。

東亜重工」は漫画家・弐瓶勉氏の作品に多く登場する独特の字をフォント化した作品。独特の略字、現代的でキレのある造形はフォントでありながらロゴとして様々なアクセント力を発揮します。

みんなの文字」は電通・UDCAとの3社で開発された「見やすく、わかりやすく、伝わりやすい」フォント。ゴシック、明朝が揃っています。

日本リテラル:新書体登場?

木版活字から続く「精美堂」に源流を持ち120年の歴史を持つ日本リテラル。

これまで木版活字に用いられた字様の書体をリリースしてきましたが、2020年4月、公式Twitterで新書体を含んだ書体見本が公開されました。

見本には明朝系と思われる「セイビアカバネ」、丸ゴシック系の「セイビアタゴ」、明朝系デザイン書体の「セイビカナスギ」といった新書体のほか、セイビ角ポップやセイビユニはウェイトが拡充されているようです。

もし発売されれば書体の数は30種を超え、創英企画などと並ぶ数となります。

タイプラボ:「最後の書体」レラシリーズ

ルイカ、ニタラゴ、ハッピー、わんぱく、ラボゴなど数多の名作書体を様々な会社からリリースしてきた佐藤豊氏の「タイプラボ」。

その「最後の書体」と銘打たれた書体シリーズがルイカを元とした丸ゴシック体「レラ」です。

丁寧に作り込まれた優しい書体で、基本書体である「レラ」を筆頭に、それまで氏が制作した仮名書体の丸ゴシック化である「キャピレラ」「墨東レラ」「ニタラゴレラ」「わんぱくレラ」が発売となりました。

氏によればこれが最後の書体で、以降開発は無いとのことです。

モトヤ:基本書体サブスタイルシリーズと新書体

風格と柔らかさを併せ持つ書体を多く開発してきたモトヤ。イワタに次いで同社もあと少しで創業100年を迎えます。

2020年は多くの基本書体に新たな「仮名」が登場しました。その名もサブスタイルシリーズ

モトヤ明朝の「オールド」「モダン」、また明朝・ゴシック・マルベリに対応する「みやび」、そして「モトヤアンチック」が揃い、漫画用途などにモトヤ書体が使えるようになりました。

また「アネモネ」という新書体は「淡々しさと儚さ」を表現するべく、丸みを帯びたエレメントを特徴としています。

Fontgraphica:「グレネード」漢字追加

超極太系デザインゴシック体「グレネード」。

BOOTHにて販売されており非常に安価な特徴がありますが、これまで小学一年生までの教育漢字のみが実装されていました。

この度小学二年生までの教育漢字が実装され、より多くの文章を組むことができるように。

最終的に常用漢字までカバーされるということで、期待されます。

さゆぬ:道路標識書体「Nu みちしるべ」

フォントのリガチャ(合字)機能を用いて道路標識を表現する新書体が登場しました。その名も「Nu みちしるべ」。

制作したのは「Nuワッカオイ」などの作で知られるさゆぬ氏で、リガチャ機能を用いたユニークな発想で多くの注目を集めました。

またその独特な数字の雰囲気も再現されており、純粋にラテン数字の書体として味わうこともできます。

あらたかな:「クローニン」オンライン販売開始

ブラックレター系デザイン書体の波が来ています。

モリサワ&タイプバンク「赤のアリス」、フォントワークス「パルレトロン」に続く妖しげなデザインの総合和文フォント「クローニン」。

以前即売会において販売されたのみの発表でしたが、2020年10月、BOOTHにてオンライン販売が開始されました。

収録字数は和文欧文記号役物と、JIS第一水準漢字2965文字+厳選761文字。

5000円という価格で、ロゴデザインや見出し、動画のテロップなど幅広い分野で使用できる造形の書体が手に入るのは魅力的です。

Google:Google Fontsの和文書体拡充

多くのフリーフォントを提供していたものの、これまで和文書体の弱かったGoogle Fontsにいくつかの和文書体が追加されました。

この度追加されたのはたぬき侍氏の「Yusei Magic」、Font Zone 108の「Potta One」、Nontynet氏の「Hachi Maru Pop」。

また人気のモダンゴシック体である「M+」もGoogleによって支援がなされ、改刻が始まっているようです。

Webフォントなど広く利用されているGoogle Fonts。今後の展開に期待です。

マール社:デジタルフォントをオンラインで再販へ

美術・デザイン図書の出版を行っているマール社。

かつてレタリング向けに書体の字典を制作しており、それをデジタルフォント化したものを一部に提供、発売していました。

長年販売は途切れていたものの、2020年12月よりそのダウンロード販売が開始されました。

人気の「楷書体マール」を始め、「行書体マール」「かんてい流マール」「千社文字マール」「古隷書体マール」「酔虎」「雨点」「石隷」の8書体を再び入手することが可能に。各12,000円+税(セット販売あり)。

砧書体制作所:AdobeFonts&砧明朝体ファミリー

「フォントは言葉に着せる服」というコンセプトで様々な書体を発表し続けている砧書体室。

「丸で構成された全く新しい明朝体」として強く愛願された「丸明オールド」などが知られています。

この度その丸明シリーズを含めた書体がAdobe Fontsで利用可能となりました。これによって用例の増加が期待されますね。

また数年開発されていた明朝体「砧明朝体」ファミリーが発売となりました。

この書体はエレメントに直線が使われておらず、また部首と部首同士の接触が少ないことなどで「優しさ」が表現されています。

モリサワ:新書体、字游工房書体ほか提供開始

DTP向けフォント最大手と仰がれたモリサワ。今年も新書体が追加されています。

目玉は「字游工房」の書体。同社は2019年3月にモリサワ子会社となっていました。

游明朝体」や「游ゴシック体」、「游築見出し明朝体」「游勘亭流」などほとんどの書体が利用可能に。

また欣喜堂「くれたけ銘石」や、独自の新書体としてはフェルトペン風のペン字体「ぺんてる」が発表されました。

フォントワークス:新書体続々。一部書体OFL化

創業から約30年のフォントファンダリー、フォントワークス。

大人気のフラグシップ書体シリーズの筑紫書体では「筑紫AN丸ゴ」3種が発売。筑紫書体のデザイナーである藤田重信さんのTwitterでは、まだまだ多くの新書体の開発がなされていることが伝えられています。

また「中国の清王朝の乾隆帝に愛された隷書体が現代に蘇るリニューアルプロジェクト」として開発された「清御隷書体」も提供が開始されました。

格調溢れる造形は様々な場面で用いられてほしいものです。

また、一部フォントのOFL化が行われ、GitHubで公開されています。

公開されているのは「クレー」「トレイン」「スティック」「レゲエ」「ランパート」「ロックンロール」「ドットゴシック16」。

利用者はこのフォントを無料で利用できる他、ライセンスに従って改変を行うことも可能となっています。

ダイナフォント:新書体、基本書体拡充へ

多くのデザインフォントが好評を博し、多くの利用者がいるダイナフォント。これまで、唯一のネックがゴシックや明朝など基本書体の完成度でした。

しかし2017年の「金剛黒体」、2018年の「UDゴシック体」「UD明朝体」などでその懸念は取り除かれつつあり、2020年10月にはデジタル媒体向けの「青花ゴシック体」を提供開始しました。

デザイン書体の面でもテロップ向けという「娥眉明朝体」「POPミックスS」、独特のゆらぎを持つ「舞風隷書体」などがリリースされました。

写研:モリサワと提携しOpenTypeフォント開発へ

かつて写真植字機及びその書体開発においてモリサワを上回る最大手としてシェアされていた株式会社写研

2019年にウェブサイト用のドメインが再取得されたり2020年4月ごろに埼玉県の工場が取り壊されるなどの動きを見せていました。

2021年、モリサワから出されたプレスリリースで、写研の書体のOpenTypeフォント開発がモリサワとの共同で行われ、写真植字機の特許が出願されてから100年目の節目である2024年より随時発売されると発表されました。

モリサワとはかつて袂を分かち写真植字の業界でシェアを争った関係ですが、こうして協力関係となったことはたいへん歴史的なことです。

往年の名作書体の数々がDTPに蘇ることとなりますが、現代でどのような活躍を見せるのか、期待が集まっています。


以上.

2021/01/18 第一版

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