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散歩

その日も俺は街に出ていた。
同じ目的を持った仲間と共にひたすら美女に声をかけ続けていた。

そんな最中、ゲームセンターのUFOキャッチャーで遊んでいた二人組に声をかけた。

これが、のちに運命を大きく狂わす出会いとなる。

ゲーセンで少し遊んで、
カラオケへ移動。
ある程度歌ったあと、
女の子2人組のうちの1人と、俺と相方の3人で俺の家に移動した。

俺は薄々感じていた。
カラオケの中、俺の家への移動中。
そして家の中での会話中。

女の子と相方との距離がだんだん近づいていることに。

アイツは
女の子への気遣い、
時折垣間見せる男気、
俺にはないものを持っていた。

魅力的な男に抱かれたいと思うのは当然だ。もし相方が経験豊富な男だったら潔く諦められていただろう。

しかし彼とは同じ童貞同士だった。

だからこそ、
この事実を認めたくなかった。


必死に女の子を振り向かせようとした、その焦りが彼女にも伝わったのだろう。俺が悪あがきをすればするほど、俺と女の子の距離が離れていく気がした。


共に頑張ってきた親友が一人前の男になれる嬉しさと、
親友に女をとられてしまう悔しさの板挟みだった。

悩みに悩んだ挙句、俺の出した答えはこれだ。


俺は親友の門出を選んだ。

俺にはないものを、アイツは持っていた。

それだけだ。

親友の女を奪うなど、俺のちっぽけなプライドが許さなかった。

「卒業おめでとう」

俺はこう言い残し、誰もいない夜の街へと駆り出した。

散歩中、なぜか涙が出てきた。

親友の門出を迎えられた喜びからの嬉し泣きだろう。
そうに違いない。

俺は悔しさを必死に抑えながら誰もいない夜の街を歩き回った。

人生で1番長い散歩だっただろう。

もっと魅力的な男になろう。
後で労いの言葉を入れに行こう。


そんな思いを抱えながら、スマホを確認してみたら、

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

「おれは 童貞仲間に女の子を譲ったら 童貞のままだった」

な… 何を言っているのか わからねーと思うが 

おれも 何がおきているのか わからなかった… 

頭がどうにかなりそうだった… 悔しさだとか嬉しさだとか

そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…

冗談はさておいて、どうやら彼はたたなかったらしい。

なんで最後までやらねえんだよ!
たたなかったってなんだよ!
凄○でもバイ○グラでも何でも飲んどけよ!
無理やりにでもたたせろよ!
女に申し訳ないと思わないのか!
情けない姿みせるなよ!
俺が1番悲しかったよ!
最後までネタに走るのかお前は!
てか最初に声かけたの俺だぞ!
ホテル代浮かすために俺の家にきたのか!
最初から俺のことなんか眼中になかったのか!
俺の涙は何だったんだ!
俺の涙を返せ!

溢れ出る感情を必死にこらえながら、俺は2人を見送った。

2人が帰った後、俺はのたうち回った。

色々な感情がごちゃまぜになりすぎて、自分でも訳がわからなかった。

だけどいつまで落ち込んでいてもしょうがない。
もっと自分の魅力を上げて、
とびきりの美女で童貞を捨ててやる。


そんな思いを抱えながら、
今日も俺は街に出る。

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