フェロトーシスとは

細胞死は、本来、恒常性を維持する重要な機構の1つです。
発生、炎症、免疫、発癌など重要な生理的な役割を持ち、過剰あるいは不十分な細胞死は、組織の恒常性維持に影響を与えて様々な病態に関与します。

細胞死の多くは、制御された細胞死、すなわちアポトーシスです。
一報、それ以外の細胞死は、過剰な刺激による偶発的なネクローシスとされてきました。しかし近年、ネクローシスの中に、制御される細胞死が存在することが明らかとなり、ネクロトーシスをはじめ、ネクローシスの中でも新しい概念であるフェロトーシスが注目されている。

フェロトーシスは、アポトーシスともネクローシスとも異なる経路で起こります。活性酸素種と2価の鉄イオンの反応によって脂質の過酸化が増加することで細胞死へと誘導されます。

抗がん剤であるエラスチンは、シスチンの取り込みを制御するシスチントランスポーターを阻害することによって、細胞内のグルタチオン量を減少させる。その結果、グルタチオンペルオキシダーゼ活性が低下し、鉄を介したフェントン反応によって細胞内にリン脂質の酸化が亢進し、フェロトーシスが誘導される。脳卒中だけでなく蘇生後の肺障害にもフェロトーシスが関与していることが報告された(SHOCK, vol.58, No5, 464-469, 2022)。そもそもフェロトーシスとは何か調べてみると”鉄依存性の脂質過酸化反応による細胞死”とのこと。作用機序は、生体膜の脂質に活性酸素種が反応することで、脂質ラジカルが発生します。この脂質ラジカルが酸素と反応することでペルオキシ脂質ラジカルが産生されます。さらにこのペルオキシ脂質ラジカルが生体膜の脂質と反応することで、再び脂質ラジカルが産生されます。このような連鎖反応によって脂質過酸化反応が引き起こされ、細胞死へと繋がります。

フェロトーシスは脳卒中だけでなく蘇生後の肺障害でも認められており、鉄のキレーターによってのみ抑制される。

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