ひけめ

とっさに作戦変更した。

美容室に入ると、オーダーしようとしていたのと同じヘアスタイルの子が座っていた。若くてかわいい子。
こりゃダメだと思い、ヘッドスパ中に違うスタイルを必死で考えた、つもりが寝てしまった。いびきかいてなかったかシャンプーくんに聞こうと思ったが、感染対策なのか客層なのかめずらしく店内が静かだったので確認は諦めた。

鏡越しになんとか思いついた感じの雰囲気を伝えると、さすが10年お世話になってる美容師さんだけあって気に入った感じにしてくれた。
あの子と同じよりわたしにはこっちの方が合っている。


若い頃は随分と美容室ジプシーしていた。
わたしのこのやっかいな髪質は男性の美容師さんのほうが攻略してくれると気づき、この街に移り住む前も男性の美容師さんに担当してもらっていた。


会計のとき、担当ではないおしゃれな女性美容師さんが話題を探してたくさん話しかけてくれたけど、うまく返せなかった。帰り際に真正面に笑顔で見られて少し挙動不審になってしまった。

普段話し慣れてないのもあるし、そんなつもりがないのは重々承知なんだけど、同性だと、見定められてる感マウンティングされてる感が気になる。まぁおしゃれな人を目の前にして自分に引け目を感じているのがほんとのところなんだけど。
それから自分も普段は使っている営業スマイルが苦手なのかもしれない。
営業だと分かるからなのか。

どこかと似てるなと思って考えたら歯科だ。
綺麗でにこにこ話しかけてくれる女性スタッフには、気を遣ってしまって疲れる。

歯医者さんと美容師さんには、長くお世話になっていてかなり素で話せる。ちゃんと敬語は使う。
まぁまぁかっこいい人なので最初の頃は緊張した記憶はあるが、ここまでくると口の中とかおでこ丸出しの顔とかをだいぶ見られているので、もうどうにでもなれ的に気を許せるようになったんだと思う。

もうこの歳なので、そういう目線で異性を見ることもなくなってきたのもある。

職場が女ばかりで、同性の目の方が厳しいのもわかるし嫌な面ばかり見ているので、だいぶ訓練されていると思っているけど、だからこそよそではうまく対応できない。


美容室のあとはいつもデパ地下に寄る。
今回はどれを見ても食べたいと思えるものがなかった。
このあいだ食後に胃の調子を悪くしてから、胃がそれはやめておけ、と拒否しているのが分かるようになった。




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