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2021最難関国立大学入試分析④-2 大阪大学(文学部以外)大問2
さて、本日も始めます。
昨日は熱を込めすぎて総字数5,000字に迫る分析を上げてしまいました
このぐらいの熱量を込めて国立大学の入試問題に向き合っていきたいと思います。全国版もこの方針で再開しようかな、と。
では、本日は大問2
【文章】
『代表制という思想』早川誠
論構造は「対比」「抽象・具体」など、基本を追っていけばわかりやすい。政治制度についての文章。代表制(=間接民主制)の限界が叫ばれる中、筆者はむしろその「限界」こそが民主主義において必要なものであると説く。
うん、難しい。けれども大阪大学に入学するレベルであればこの程度は読んできてね、という大学側からのメッセージともとれる。やや難ぐらいの判定で。
問一 漢字
a 駆逐 b 喚起 c 擁護 d 没頭 e 曖昧
難しいものはないが、受験生が間違えそうなものでもある。漢字の練習も忘れずに。
問二 換言記述
<プランニング>
① 一致点と異なる点の記述
A 一致点 → 直接民主制と代表制の共通点が記述されている点を探す。
B 異なる点 → 上記の反対。本文中の内容に即す。
② 80字という字数
あまり多くないのでA・Bそれぞれ30~40字程度でまとめる。
③ 構文
両者の一致点はAであるが、異なる点はBである。
このようにまとめるイメージで。ここまでの方針は立てやすい問題である。
<解答への手順>
A について。文章全体から捉えることもできるが、3段落を根拠にする。
③ 人民の意志を反映することは民主主義の基本である。
直接民主制も代表制も「民主主義」なので、ここを使用する。
しかし、「意志」はこの文章の中で定義されている言葉なので安易に使えない。「民意」ぐらいに置き換えよう。
A 両者とも政治における民意の反映を基本とする点で一致しているが、(31字)
B次第では削る余地も残る感じである。
Bについて。直接民主制と代表制の違いについて筆者は5段落以降で「意志」と「判断」という観点で論じられている。なお、9段落に出てくる「熟議民主主義」は「直接民主制」と同じであることも理解したい。
その熟議民主主義について12段落で語られている。
⑫ そこには制度的に意志と判断を切り離す仕組みが存在しない
そして、結果として意志が強調されるのである。
代議制については13段落に対応する内容が論じられている。
⑬ 代表という制度を使うことで、意志は有権者から強制的に切り離される。
そして結果として「判断」が強調されるのである。
これがちょうど対比の関係にあるのでここを中心にまとめていこう。
直接民主制は意志の反映を重視する
代表制は判断をより重視する。
あとは「判断」と「意志」という言葉の処遇である。これらは本文中では特殊な定義がなされている。
「意志」= 人々の意志
「判断」= 政治的判断
ぐらいに補足することでより抽象的な内容となる。
B 直接民主制では人々の意志の反映を重視するのに対し、代表制では意志から区別されるた政治的判断を重視する。(51字)
A+Bはちょいオーバー。あとは字数調整。
<タケガワなりの解答>
両者とも政治における民意の反映を基本とする点で一致するが、直接民主制では人々の意志の反映を重視するのに対し、代表制では意志から区別された政治的判断を重視する。(79字)
問2 理由説明問題
<プランニング>
① 傍線部の分析
理由説明問題においては傍線部は「結果」なので、傍線部から逆算しながら考えていく必要がある。
<傍線部>
代表制と直接制は、民主主義が適切に機能するために必要とされる二つの同等な制度であり、両者が否定しあう必要はない
A 「民主主義が適切に機能するために必要な二つの同等な制度」
→ 両者間に優劣はなくそれぞれの役割がある、という内容になればOK。
B 「両者が否定しあう必要はない」
→ では、どのような関係なのか。この点を書いていく必要がある。
これらの要素を明らかにしていこう。
② 構文
AだからBであると言える(から)
という構図が描ければいいだろう。受験生はBが抜けがちだと思う。
<解答への手順>
Aについて。
直接制は問二でも確認したとおり、民意を直接反映する制度である。
代表制と直接制については、問二の内容を踏まえて25段落を参照しよう。
㉕ 曖昧で不定形な民意を、あらためて考え直し議論して政策体系に昇華させることが代表制の意義である
こうすれば、直接制により反映された「不定形な民意」を活かすことができる代表制という、それぞれの役割について説明できていると言える。
ここからAの内容をまとめる。
A 直接制が不定形な民意を政治に反映できるのに対し、代表制はその民意を一度人々から切り離し、再度議論をすることで政策体系に昇華させることが可能である(72字)
まあまあな字数。
ついで、B。
Aをまとめている時点で補えるし、そもそも傍線部が21段落にあり、具体例であることに注目すると、対応する抽象的内容が書かれている20段落に気づくことができる。
⑳ むしろ、代表制という安全装置が採用されているからこそ、安心して直接民主制を活性化させることができる。
つまり、代表制があるからこそ直接制が生きる。
ここで本文中にはないが適切な語句を思いつくか、も一つのポイント。
語彙力は大事。
B 両者は相互に補完する関係性にあると言えるから。(23字)
字数的にもぴったり。
<タケガワなりの解答>
直接制が不定形な民意を政治に反映できるのに対し、代表制はその民意を一度人々から切り離し、再度議論をすることで政策体系に昇華させることが可能であるので、両者は相互に補完する関係性にあると言えるから。(98字)
いい感じにまとまったね。
問四 換言記述
<プランニング>
① 傍線部分析
字数の割には設問があっさりしていて戸惑いそうだが、まずは字数など度外視して必要な要素を考える。
A 非民主的性質
まずこれが何なのか。そもそも何が含み持つ性質なのか。そこら辺を切り口に考えていこう。
B プラスの効果
これは、Aを踏まえたうえでどのような意味での「プラスの効果」を持つのかを確認する必要がある。
② 構文
○○にはAという性質があるが、その性質がBという効果を発揮している。
③ 字数
とりあえず骨格を作ったうえで字数を考えていこう。この時点では一度保留。
<解答への手順>
① 傍線部の処理
Aについて傍線部を含む一文の確認から始める。そもそも、何が非民主的性質を持っているのかというと、「代表制」となる。
では、代表制の持つ「非民主的性質」とは何か。これは問二においても確認された「民意と判断の分断」という内容になるのではないだろうか。13段落を参照してみよう。
⑬ これに対して代表制ではいかなる意志も制度上ひとまず政治への反映を阻止される。……代表という制度を使うことで、意志は有権者から強制的に切り離されるのである。
ここからAを作ることが出来そうである。
A 代表制においてはあらゆる民意は一度代表者の下で留保され、政治的な判断から切り離されてしまう(45字)
そしてここで、この切断は問3を踏まえると、政治的な体系に昇華可能という内容と結びつく。ここを含めてもよいだろう。
A 代表制においてはあらゆる民意は一度代表者の下で留保され、政治的な判断から切り離されることで、代表者の間で再度議論が可能となり、その結果として政策体系に昇華されるようになる。(86字)
ここで問三の内容を使えるかどうかは得点を左右するポイントになりそう。
そして、Bである。どんな利点があるのか。
傍線部の直後にこのような内容がある。
㉓ 代表制を擁護することで問題解決の道が開けるのである。
この問題とその解決について考えていくとBの内容が見えてきそうである。
問題点は24段落を参照しよう。
㉔ 現代民主主義においては、有権者の意見と、議会の意見が乖離しているといわれる。民意が反映されず……
では、Aをふまえるとどのような解決がもたらされるのか。それは26段落に示されている。
㉖ 市民にとって必要なのは……常に市民の意見の動きや変化を伝えて政策論争の材料を提供することである。
つまり、届かないものと思われた民意を伝える機会ができるということである。これはすなわち「市民の政治参加」といえるだろう。これらを踏まえてBをまとめる。
B その(Aの)プロセスにおいて、市民の中で問題視されていた自分たちと議会の意見が乖離しているという点が、代表者に民意の動きや変化を伝えることで論争の材料を提供するというかたちでの政治参加を可能にするという効果をもたらしたこと。(106字)
こんな感じでどうでしょうか。
② 字数
ややオーバー。この程度なら調整可能でしょう。
<タケガワなりの解答>
代表制においてはあらゆる民意は一度代表者の下で留保され、政治的な判断から切り離されることで、代表者の間で再度議論が可能となり、その結果として政策体系に昇華される。その過程において、市民が代表者に民意の動きや変化を伝えることで論争の材料を提供し、議会と民意の乖離の解消をもたらすかたちで政治参加が可能になったという民主主義にとって良い効果をもたらしたということ。(180字)
まとめるにあたってやや推敲。
市民の中で問題視されていた自分たちと議会の意見が乖離しているという点が
この部分をトリミングして場所を変えることで意味の重複を解消する。
後は文末に「民主主義にとっていいこと」というニュアンスを加える。
こんな感じでしょうか。
今回も解いていて楽しかったです。それでは。
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