RPA Communityへの問題提起と提案

概要

 RPA Communityが抱えているように見える、現状の問題点・不明瞭な点と、それにまつわるリスク、および改善案の提示です。
 ステークホルダーが複数居るため、1on1的に話すよりは、いったん意見を纏めて書いた方が伝わりやすいと考えて、このような形式にしました。

 色々長くなって申し訳ないですが、複雑な話もあるので、ご理解いただけると幸いです。

前提とか経緯とか

 まず、自分(たかぎ@LEDの人)は、それなりに日本のRPA関連コミュニティに顔を出しています。
 もちろん「もっと顔を出している」人はたくさん居ると思いますが、逆に部外者というわけではない程度の自負はあります。
 コミュニティ以外の経歴として、過去に1年ちょっとの間、いわゆる「RPAのユーザー企業」の情シスで導入支援やRPA構築を行い、その後、RPAベンダーにこれまた技術職として1年ちょっと勤務しました。なのでRPA歴はトータル2年半ぐらいです。
 故に、というわけでもないですが、コミュニティ以外のRPAにまつわるステークホルダーの存在、すなわち「ベンダー」「導入支援をするSIerやコンサル、システム開発会社」「ユーザー企業」のおおよその温度感や関係性などは理解しているつもりです。
 元々、いわゆるIT業界に15年以上いるわけで、RPA以外のものも色々見てきてます。

 さて、RPA Communityに関して、もちろんRPA Community内というか、参加メンバーからは極端に否定的な言葉を聞くことはありません。
 が、複数の「RPAユーザーかつコミュニティに積極的な人」から、RPA Communityに対して、かなり批判的な意見を聞くこともあります。
 すべての批判的な意見を聞いたわけではないので、当然、自分の理解にも漏れがあることは間違いないのですが、その中でも凡そ、いくつか共通の内容を感じたので、そこだけでもシェアしようと考えています。

 先に率直な自分の立場を書いておくと、正直なところ、RPA Communityで活動している人は真摯に見えるし、ユーザーコミュニティが存在すること自体は非常に良いことだとは思っています。
 しかし、本稿で提示するような問題点も孕んでいるため、手放しには肯定できないし、全力で協力するのも憚られる、と考えています。

 ただまあ、私は「批判だけして対案を出さない人」にはなりたくないので、オープンに(問題と感じる部分を)書く以上は、対案もきちんと書かなくては、と思ったのが、このnoteを纏めた経緯になります。

問題と感じている点のサマリー

 問題と感じている点のサマリーを以下に記載します。

① 「コミュニティマーケティング」という言葉と実態の乖離
② スポンサーの存在と中立性、運営資金の不明瞭さ
③ ビジョンと参加者の不一致

 以下、それぞれについて詳細を記載します。


① 「コミュニティマーケティング」という言葉と実態の乖離

 RPA Communityの運営をされているチャラ電Mitz氏は、RPA Communityはコミュニティマーケティングであると公言されています。(具体的にはこのツイートとか。探せばいっぱいあります)
 他方で、「コミュニティマーケティング」という世間一般の用法・用例としては、以下のように記載されることが多いです。

コミュニティ・マーケティングは、企業が目的とする商品開発や販売促進、顧客ロイヤリティの向上などを達成するために、企業が一方的に顧客に対して質問するだけではなく、企業と顧客、顧客と顧客の双方向コミュニケーションを行い、顧客を「ファン化」させ目的を達成しようとする点が大きな特徴である。
 -日本総研「コミュニティ・マーケティングとは(後編)」より
コミュニティマーケティングは、その名の通り、ユーザーコミュニティを活用したマーケティング手法のことです。
一般的には、「既存顧客を対象としたコミュニティ」をマーケティングに活かすことを指します。
(中略)
すなわち、「コミュニティを構築すること自体が目的になっている」場合、それは言葉の定義上コミュニティマーケティングとは呼びません。
 -commmune 解説より

 一字一句どこにでも同じことが書いてあるわけではないですが、要約すると、
・企業が自社製品やブランド、サービスのユーザーに対して
・コミュニティを醸成し、意見交流を行うことで
・自社製品の開発や改善、ユーザーによる新規ユーザーの獲得を目指す
 あたりが、大枠として共通認識であると考えられます。

 では、RPA Communityはどうか、と考えると。「RPA」というのは特定の製品やソリューションを指すわけではなく、昨今では多くの製品が出回っています。
 また、製品・ソリューションによって、「RPA」という概念に対する思想や目的意識にも多少の違いがあり、それは製品の適用範囲や機能性に現れる部分です。すなわち、万人が納得する「RPAの定義」をすることすら、現状では難しくなっています。

 そう考えると、ユーザー主導を旨とし、特定の製品を対象とはしていないと主張するRPA Communityの在り方は、コミュニティマーケティングとは明確に異なるものなわけです。
 これに関して、主催や運営から何もメッセージが出ていないことが、現状、RPA Communityという組織として「胡散臭く見える」原因と考えています。

 故に、以下の2つのどちらかを明確にすることで、この問題を改善できるのではないか、と提言します。すなわち、RPA Communityの立ち位置が明確化され、その目的に対して嫌疑を抱かれにくくなるというメリットがあります。

α: 「コミュニティマーケティング」という言葉を世間一般の意味とは異なるニュアンスで独自定義して使っているのであれば、それを止め、新しい言葉を使う。また、その意図するところ(コミュニティマーケティングとの違い)を明確にする。

β: 特定の製品ベンダーの意向で動いている(すなわち世間一般の言うところの「コミュニティマーケティング」を指向している)のであれば、その製品名を明確にし、一般名詞となっている「RPA」を冠することを止める。

 如何でしょうか。

 ちなみにβみたいな話だとは思いたくないのですが、残念ながらRPA CommunityのメディアパートナーはBizRobo!のベンダーでもあり、更にRPA BANKと一般名詞の「RPA」を冠しているわけで、穿ちすぎと一笑に付すには少しばかり厳しい状況と考えます。

② スポンサーの存在と中立性、運営資金の不明瞭さ

企業や特定団体の主導・運営ではない、純粋な「RPAに関わるユーザーメインのコミュニティ」です。

 RPA Communityのcompassページには、上記のように記載されています。しかしながら実際に参加してみると、ベンダーやRPA関連企業がスポンサーとして参加しているわけで、この表現が正確であるかは甚だ疑問が出てくるわけです。

 もちろん「スポンサーとしてRPA Communityに協賛し、金は出すけど口は出さない」という約束が行われているのかもしれませんが、参加者にはそれは把握できないのが実情です。

 そして、そのことの何が問題かというと、前提に書いたように、RPA製品はベンダーによって理想や設計思想が異なり、またRPAに携わる企業も考え方は多種多様です。
 そういった企業がスポンサーとしてついているにもかかわらず、それらの影響を排していると言えるかどうか、という点は、RPA Communityの健全性に少なからぬ影響を与えると考えます。
 なぜなら、スポンサーとなって「RPAとは何か的な話」や「どんなLTやコンテンツをユーザーに提供するか」に影響を与えることができれば、自社に有利な(すなわち企業が主導するのと同じ)結果を得られてしまうからです。

 上記の問題に関して、以下のように提言します。

 スポンサーが財政的に必要なのであれば、そのスポンサーがどれだけコンテンツに影響力を与えられているかを明確にすること。
 スポンサーなしで運営できるのであれば、スポンサー枠を廃止すること。

 また、この問題は会場費等の運営費だけでなく、ボランティアではない運営陣メンバーが居るのであれば、その人がどこから対価(資金)をもらっていて、スポンサーの意向にどこまで影響を受けるのか。
 資金提供者が、RPAとは全く関係ない立場に居る篤志家のような存在であれば兎も角、そうでないなら、上記については『ユーザー主導』『純粋な「RPAに関わるユーザーメインのコミュニティ」』を謳う以上は、公開するのが筋でありましょう。

③ ビジョンと参加者の不一致

 ユーザー主導であるなら、少なくとも「ベンダー側の社員」や「リセラー・SIer・コンサルタント等、特定の製品を推すことで利益を得られる人」のLT参加は、ある程度制限が必要になるのではないでしょうか。

また、特定の企業やソリューション、サービス、製品にこだわることなく、様々なITツールや手法の情報・技を皆で共有し、企業のためではなく、特定の個人のためでもなく、全国各地・参加者の皆様全員にとって一番良い「働き方改革」その先にある「幸せ」に繋がる事を目標としております。

 特定の製品を主体的に扱う企業(ベンダーやリセラー等)の人間が積極的に参加することは、RPA Communityのページに書かれている目的にも、ときとして矛盾します。

 というのも、ベンダーやリセラー、SIerの社員は、自社製品の普及で食べているわけで、極端な言い方をすれば「現場ユーザー等、他の参加者を不幸にしてでも、自社製品のマーケティングをすることも1つの選択肢になりうる」からです。

 そこまで邪悪な人が居るのか?というのは、居ないと思いたい気持ちは自分にもありますが、さりとて居ないと断言できるわけでもありません。
 故に、上記に対する不安が、そのままRPA Communityへの不安感・不信感に繋がっていることは、想像に難くないわけです。

 いや、まあ、これはある意味、私自身の自己矛盾を孕む要素でもありますが。何しろ自分はベンダーの社員だった時期にも、RPA Communityに参加した、というか「参加どころかLTまでできてしまった」ので。
 そこで自分が「潔癖だった、所属企業に有利になることを言ってはいない」と主張するのは簡単なんですが、それを立証するのは自分でもできないな、と今更ながらに考えているのです。

 さて、上記に関して、以下のように提案します。

 RPAのエンドユーザーを主体とするのであれば、相応の対処(ベンダーやリセラー等の関係者に関して、参加ガイドラインを定める、一定の制限を行う等)をする。
 ベンダー等のステークホルダー全てを含めてのRPA関係者とするなら、その利害不一致が発生しない具体的な方策を明示する。

 いきなり完璧な対策を行うのは難しいであろうことは重々理解しています。ですが、試行錯誤にせよ、あるいは方法論の議論にせよ、何かしらの対応を行わなければ、上記の問題は徐々に深刻化していくでしょう。

最後に。

 英語に「Not for me」という言葉があります。直訳すると「私向けではない」ですが、よく使われるニュアンスとしては、自分にあわないものをアグレッシブに対応する(批判など)のではなく、自分から離れて距離を置く、的な感じです。
 これは精神衛生上、非常に良いことだし、不要な摩擦を防ぐこともできます。

 また、別にコミュニティに限った話ではなく、すべての人に受け入れられるsomething(何か)というものは、まず存在しないでしょう。故に、否定的な人をいちいち相手にせず、肯定的な人だけを巻き込んで物事を進めるのは、決して悪手ではありません。

 しかし、コミュニティの建前・主張と矛盾する問題点があり、改善できる方策もあり(具体例は示したとおりです)、それでもなお放置するとあれば、何か裏があるのでは?という疑念は更に悪化するでしょう。

 そして、RPA Communityの現状を失敗と捉えている人、胡散臭いと考えている人に対して、改善を見せることで協調できるようになれば、それはコミュニティの拡大というメリットがある筈です。

 この提案をすべて実施してくれ、と言うつもりはありませんが、RPA Communityの今後の発展のための叩き台にしていただければ、幸甚の至りです。
 言い換えれば、この記事の内容に関して、「自分への」返答は不要です。ここに書いた問題点を感じている少なからぬ人たちに向けて、何かしらのメッセージをRPA Communityの運営陣の方から発していただけることが、自分の望みです。

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