ひとくち日記 11/1

弊社では、月替わりでそれぞれのチームが掃除当番をする。今月から私の所属するチームが会社の掃除当番で、毎週水曜日は私がトイレ掃除を担当することになっている。

午後5時。席を立ち男子トイレへ向かう。引き戸を開けてオフィスルームを抜け、静かに閉めて廊下へ出る。一直線の廊下の始点と終点にある扉は常に解放されているので、廊下は人の多いオフィスルームより空気が軽い。すでに外は薄暗くなっており、少し早い秋の夜風が廊下を走りぬける。

廊下を少し歩くと、右側手前に男性用トイレがあり、その奥に女性用トイレがある。廊下の突き当りの扉の先は会社の裏口となっており、倉庫がある。裏口で女性の先輩二人が怪訝な顔で話をしていた。二人とも指をさしながら同じ方向に目線を遣っており、その先に何があるのか気になったので話を聞いてみることにした。裏口へ出ると、漫画みたいに倉庫から顔だけを出し、震えながら同じ方向を見ているもうひとりの先輩がいた。


視線の先では鳩が仰向けにひっくり返っていた。


先輩たちの話によると、会社の壁にでも激突したのだろうということだった。先輩の一人が大きなスコップを持ってきた。「さっきそこに穴を掘ったから、スコップに乗せて運んで埋めるのよ」と言って恐る恐る鳩をつつこうとしていた。「気絶しているだけでまだ生きているかもしれませんよ」と脅すと「じゃあちょっと触ってきてよ!!!」とケツをひっぱたかれた。その勢いでお尻をさすりながら鳩に近付いた。

鳩は目を開けたまま仰向けになっていた。胸のあたりを触ってみたが脈動は感じられず、モフモフの羽毛のせいか少し暖かい気がした。体をひっくり返してみると地面に接していた背中はペタンコになっており、そこで何となく死を確信した。「もう死んでます」と言って、鳩を持ち上げ先輩のスコップの上に乗せた。


掃除を終えデスクに戻ると、漫画みたいに震えていた先輩が話しかけてきた。「なんで触れるの?」と聞かれたので「死んでたからです」と答えると「ヒエッ」と言われた。「虫はダメなのでその時は先輩お願いします」と言うと「虫ならイケる!任せて!」と目をキラキラさせながら予想外の答えが返ってきた。

なんで虫ならイケんねん。


今月はトイレ掃除5回かあ、面倒だなあ。

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