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「東大教授が教えるヤバいマーケティング」を読んだのでメモ

消費者は不本意な購買をしている

人の情報処理能力には限界があります。そのため人は情報処理可能な範囲の情報のみを利用して、購買等の意思決定をしています。そしてマーケターは、人の情報処理能力限界を研究・利用してモノを販売しようとしています。そのため賢い購買を実施できていると考える消費者も、実は非合理的な意思決定を行っています。

人は非合理な決断をする

人の情報処理能力には限界があるので、効率の良い情報処理のために人はヒューリスティック(※1)を利用しています。このヒューリスティックを利用することで、合理的な判断ではないが、満足できるレベルの判断を行うようにしています。そして人の持つヒューリスティックには3つの種類があります。

■利用可能性ヒューリスティック
利用可能性ヒューリスティックとは、「馴染みのあるものは頻度が高い」だと判断してしまう意思決定プロセスです。例えば広告において馴染みのある有名人を起用することは、広告が現実以上に頻繁に放映されている印象を与える効果があります。

■代表性ヒューリスティック
代表性ヒューリスティックとは、「あるカテゴリーの典型例が全体を代表している」と判断してしまう意思決定プロセスです。
代表性ヒューリスティックの例を紹介するために、以下文章を読んでみてください。

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会社員のお父さんが自分のこどもを幼稚園に送り届けました。
しかし、こどもは幼稚園の滑り台から落下して骨折をしてしまいます。
幼稚園の園長さんは大慌てで病院へ連れていきます。
診察に当たったお医者さんは骨折をしている園児を見て、びっくりしてこう言いました。
「これは私のこども!」
“””

一見混乱したと思います。それは「医者 = 男性」という代表性ヒューリスティックによるものです。

■固着性ヒューリスティック
固着性ヒューリスティックとは、提示された数値や情報が基準点となるなり、物事を判断してしまう意思決定プロセスです。
例えば商品に記載されているメーカー希望小売価格を設定することで、人はメーカー希望小売価格を基準点とするため、実売価格を安く感じてしまっています。

企業は消費者の非合理判断を利用してしている

人はヒューリスティックを利用して、購買行動を行っています。そしてヒューリスティックについては研究が行われ、企業はその研究の結果を元にマーケティング活動を行っています。つまり企業は非合理判断を促すマーケティング活動をしていると言えます。
以下ではマーケティング戦略の4Pを用いて、企業がどのように人の非合理判断を促しているかを確認していきます。

プロダクト:企業が松竹梅の商品を用意する理由
なぜ企業は3種類の選択肢を用意するのでしょうか?企業は、人が極端なものを嫌うという性質(極端の回避効果)を利用するため、3種類の選択肢を用意しています。つまり企業は梅の販売数を増やすために、あえて3種類提示しているのです。その結果、自分が購入したい商品ではなく、真ん中の商品(梅)を購入することになります。このようにして企業は人の非合理判断を促しているのです。
余談となりますが、選択肢が多い場合は、意思決定の負荷が大きくなり、選択自体を躊躇してしまう傾向にあります。(限定合理性)これはサブウェイがなかなか流行らなかった一つの原因ではないかと考えられています。

プライス:分割して価格のショックを抑える
人は支払い総額を分割されると、購入のハードルが低くなります。(デノミネーション効果) 例えば1dayコンタクトの購入を検討する時は、1日あたりXX円だと営業をかけられます。これは1dayコンタクト90日分の総額で営業するよりも、1日あたりの金額で営業することで、購入のハードルが低くなるからです。このようにして企業は人の非合理判断を促しているのです。

プロモーション:悪いことも伝える
ネガティブの要因とポジティブ要因を両方伝えることによって、人は情報に対して信頼を抱く傾向にあります。
最近の広告だとバーガーキングの広告は、この両面提示広告の性質を利用していると考えます。腐るというネガティブ要因を伝えることによって、人口防腐剤を使っていないというポジティブ要因を強く伝える理にかなった広告設計が行われています。

このような広告を利用して、企業は最大限の高い評価を世間から獲得する活動し、人の判断に影響を与えています。

プレイス:正しく比較ができているか?
特定の流通経路のみ販売する目的で、市場商品と類似した製品を販売することをブランデッド・バリアントと呼びます。例えば通販で「XXXモデル」と名付けられている掃除機などです。ブランデッド・バリアントによって、人は市場商品と類似した製品の正しい比較ができなくなり、市場商品がたとえ安いとしても、類似した製品を購入してしまうことがあります。
このようにして企業は商品の比較検討を難しくし、人の非合理判断を促しているのです。

まとめ

人は非合理な決断をしてしまう生き物です。そして企業は、人が非合理な判断してしまう性質を利用したマーケティング活動を行っています。
そのため満足できるレベルの判断をしていると考えていても、それは合理的な判断ではなく、企業のマーケティング活動に起因する非合理的な判断です。
※1 ヒューリスティック:先入観や経験に基づく思考法

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