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【新発売】メジコン咳止め錠Proについて思う事


2021年8月5日にメジコンせき止め錠Proが発売されました。

市販薬の風邪関連薬は何かと成分がごちゃごちゃ入っている作りになっていますが、こちらは咳止め成分1剤とシンプルな形で医療用医薬品からスイッチされた珍しいタイプの薬となります。

※ちなみにメジコンせき止め錠Proは医療用のメジコンと比べてデキストロメトルファンの量はもちろん添加物も同じです。


しかし基本的にスイッチ化した医薬品は単剤が多く使い勝手が良い薬が多いのですが、この度発売されたメジコン咳止め錠Proは一筋縄ではいかない事情も多いため、その辺も諸々含めて紹介していきたいと思います。


メジコンせき止め錠Proの咳止め効果

メジコンせき止め錠Proの成分は咳止め成分のデキストロメトルファンになります。

咳止め成分は大きく

・麻薬性鎮咳薬
・非麻薬性鎮咳薬

の2つに分類され市販薬で言えば麻薬性にはジヒドロコデイン、そして非麻薬性にはデキストロメトルファンやメチルエフェドリンが有名です。

一般的には麻薬性であるジヒドロコデインが最強と思われている事も多いですが、デキストロメトルファンはジヒドロコデインと同等の効果を発揮します。

ですからかなり強めの咳止め効果が期待できますが、風邪の咳に関しては正直大した効果は期待できません。ちなみに風邪の咳においてジヒドロコデインはフラセボと差がないという報告がされています。デキストロメトルファンはそんなジヒドロコデインよりはマシといったレベルです。

ですからメジコンせき止め錠Proが最も効果を発揮するのは風邪等の急性期の咳と言うよりも慢性的な咳等においてより推奨できると思います。


メジコンせき止め錠Proの注意点

メジコンせき止め錠Proはなぜか眠気の副作用のため車の運転等に関する注意喚起がありません。医療用医薬品ですらこの注意喚起がなされているのに市販薬では眠気に関しては一言も触れていません。

基本的に市販薬は医療用と比べて注意喚起などの適正使用に関しては厳しめな扱いが多いのですが、メジコン咳止め錠Proはこれが逆転しているかなり珍しい現象が起きています。

メジコン咳止め錠Pro

と思って添付文書をよく見てみるとなぜか使用上の注意の欄ではなく一番下に一言注意喚起がされていました。でも車や機械の操作を「不可」とするのではなく「注意」になっています、これはつまり車の運転は注意すればOKと言う事なんですがどうして市販薬だけ緩いの理解できません。

メジコン咳止め錠Pro2


もちろん眠気の副作用はありますので販売する際には「車等の機械の操作は不可」と考えた上で販売しましょう。


またデキストロメトルファンには併用禁忌の薬があります。それはパーキンソン病に使われるMAO阻害薬(セレギリン等)と言う薬があるのですが、こちらと併用は禁忌となっているため、念のためパーキンソン病で治療を行っていないかの確認は必須となります。


メジコンせき止め錠Proは第二類医薬品

メジコンせき止め錠Proはスイッチ医薬品ですが、販売後すぐに要指導医薬品(薬剤師による店舗販売のみ)ではなく第二類医薬品(薬剤師不要でネットでも購入可)に分類されています。これはすでにデキストロメトルファンを含んだ薬は市販薬には山の様にあるため、わざわざ要指導医薬品にする必要性はない事を汲んでの事だとは思うんですが、この薬こそ要指導医薬品であるべきだと考えます。その理由は濫用性のためです。


メジコンせき止め錠Proの濫用性の危惧

メジコンせき止め錠Proの成分であるデキストロメトルファンは濫用性の危険性が危惧される成分になります。実際に厚労省が指定している濫用等のおそれがある医薬品のリストは以下となっています。

・エフェドリン
・コデイン(鎮咳去痰薬に限る。)
・ジヒドロコデイン(鎮咳去痰薬に限る。)
・ブロモバレリル尿素
・プソイドエフェドリン
・メチルエフェドリン

「デキストロメトルファンは入ってないじゃん」と思うかもしれませんが、確かに厚労省が指定したリストの中にはデキストロメトルファンは入っていません。

しかしデキストロメトルファンは中枢に作用しセロトニンの量を増やす作用から海外でも濫用性が問題視されてきた歴史があり、米国では当時高校生の6%が過去1年間にデキストロメトルファンを濫用したと答えたそうです。

※デキストロメトルファンの海外の情勢の問題視されてきた歴史に関してはアポネットR研究会の小嶋慎二先生が当時の状況を随時まとめてくださっていますので興味のある方はぜひこちらを参考にしてみてください。

デキストロメトルファン濫用問題で9月にFDA諮問委開催へ


そしてデキストロメトルファンの濫用は決して海外だけの話ではなく、日本においても個人輸入の形でメジコンを輸入したり、デキストロメトルファンの配合量が多い市販薬を大量に服用し濫用している現状があります。

こちらも「デキストロメトルファン OD」や「デキストロメトルファン トリップ」等で検索すると濫用の現状が分かると思います。


かたやメジコンせき止め錠Proを発売するシオノギヘルスケアのHPには以下の様に宣伝されています。

鎮咳去痰薬に含まれるコデインやジヒドロコデインをはじめ、一部の有効成分を含む市販薬は、厚生労働大臣により「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されています。また近年、主に若者間で市販薬の濫用が増加している背景もあることから、適正使用に向け非麻薬性成分への置き換えを推進すべく、当社初の「せき」の効能に特化した新製品「メジコンせき止め錠 Pro」を発売しました。https://www.shionogi-.co.jp/content/dam/shc/jp/news/2021/08/20210820.pdf


ざっくり言えば「麻薬性鎮咳薬のジヒドロコデインは濫用のリスクがありますがデキストロメトルファンなら安全です」と書いてある様にも取れますが、これを書いた人がデキストロメトルファンが濫用目的で使用されていることを知らない事はまずないでしょう。確かに個人的にもジヒドロコデインを配合している市販薬は全てデキストロメトルファンに置き換えてしかるべきとも思いますが、デキストロメトルファンは濫用薬剤に指定されていないからと言って手放しでデキストロメトルファンの安全性を主張する様に見せるのは少し違うのではないかと考えます。


単剤である事のメリット・デメリット

ものは考えようで、これまでは市販薬にはデキストロメトルファン単剤の薬が存在していなかったため、仮にデキストロメトルファンを濫用する場合には色んな成分が配合されている市販薬を購入し服用する必要性があり、デキストロメトルファン以外の成分の過剰摂取にもつながってしまいました。

有名どころで言えば常にネットでの風邪薬ランキングトップ3に入る「金パブ」で有名なパブロンゴールドAは濫用には関係ないアセトアミノフェンの過剰摂取による悪影響も危惧されます。

一方でメジコンせき止め錠Proは余計な成分は配合されていないため、そういった過剰摂取となる成分を最大限に抑える事が出来るのは不幸中の幸いだと思います。

しかしそれ以上にデキストロメトルファンが容易に手に入る状況が拡散され、これまでデキストロメトルファンを知らなかった人の耳にまで届き、新たな濫用薬剤として認識される可能性は十分考えられます。むしろそっちの不幸の方が強そうです。


メジコン咳止め錠Proの総評

このご時世、咳症状が続くと周りの目線が気になって仕方ない人が大多数だと思います。

そして現状せき止め薬として有効な薬はジヒドロコデインベースかデキストロメトルファンベースか、はたまた漢方の3パターンになると思います。しかし中にはいきなり漢方を使う事に抵抗を示す人もいますし、ジヒドロコデインのリスクとベネフィットを考えると選択肢としてはかなり後回しになるため、メジコン咳止め錠Proは単剤ですし有用性が高いと考えます。何よりも販売する側も推奨しやすいでしょう。


ただ
・眠気の副作用に使用上の注意で一切触れていない点
・コデイン類の濫用を煽る一方で自身の濫用性のリスクには全く触れていない点
・第二類医薬品と言う購入ハードルが皆無に等しい点

これらを鑑みると素直に推奨できないのも事実です。


ただ当然ながら適正に使用する人が大半だと思います。

そしてそんな時にこのメジコン咳止め錠Proは良い武器になると考えます。ですからリスクをしっかり理解した上で適切に販売し、もし2箱以上購入を希望する際には何の拘束力もないため難しいかもしれませんが、できれば一言声をかけてあげてください。


シオノギヘルスケア
https://www.shionogi-.co.jp/content/dam/shc/jp/news/2021/08/20210820.pdf

メジコン添付文書
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2223001B1210_2_01/

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