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OTC医薬品のプライベートブランドの売り方

多くのドラッグストアではCMで見る医薬品と同じ成分で値段の安い、いわゆる「ジェネリック医薬品」の様な扱いのPB(プライベートブランド)の医薬品があります。


値段は基本的にプライベートブランド(PB)の方が安いです。しかし値段が過度に安かったり名前がナショナルブランド(NB、いわゆる先発品の様なもの)を意識した薬もあり効果に不安を感じる人もいるかと思います。

また購入に懐疑的な人もいるため販売する際にうまく説明して購入につなげるのが難しい場合もあると思います。会社でPB商品を推す様に言われていると少し困った話しになってきますよね。

そこで今回はPB商品を販売する際に何を考えどう伝えるべきかについて紹介していきたいと思います。ただ販売する状況は十人十色なのであくまでも参考程度に読んでみてください。

※以下ブランド品をナショナルブランドNB、プライベートブランドをPBとして説明していきます。


プライベートブランド(PB)を販売するために


ジェネリックと先発品のエビデンスを提示する

OTC医薬品でNB商品とPB商品の効果を比較した試験はありませんので、医療用医薬品のジェネリックと先発品の効き目を比較した論文を紹介します。

ある論文によると心疾患に対する医薬品を先発品とジェネリック医薬品を比較した際に臨床的な効果としては同等性とされたという報告があります。この中には血圧を下げる薬や血液をサラサラにする薬も含まれています。
これはつまり心疾患に使用するような医薬品だとしても効き目に差はないとする結果です。


その他にも心疾患に関する薬以外にもてんかんの薬であったり緑内障の薬等が先発品がジェネリック医薬品よりも優れているという報告はありません。

すると結論として「後発品だから効果が劣っている」と考えるのは間違いともいえるでしょう。


テレビや雑誌でも時々ジェネリック医薬品は効かないと主張しているものがあります。確かに個人的な主観で効かないと感じるケースもゼロではないと思いますが、大々的にジェネリック医薬品は効かないとするのは間違っていますし、実際に医療用では7割を超えた医薬品がジェネリックを使用している現状です(数量ベースにて)。

「エビデンスを提示する」と言うと何だか大層な気がしますが、要は効き目は変わらない事が示されていると言うだけの話しになります。


PB商品とNB商品の違いと安い理由を説明する

「PB商品はNB商品と比べて主成分は同じで添加物だけ違います」「開発費がかかっていないため安いです」と言う説明は正しいかもしれませんが、それだけだとピンとこない人もおり、そもそも「主成分が同じなのにどうして値段が安いのか」と疑問に思う人もいるかと思います。

しかしはっきり言ってPB商品が安いのではなくNB商品が高すぎると言っていいのではないでしょうか。

NB商品の値段はCMなどの広告費、開発費、物流コストがかかってしまいますが、これらは薬の効果とはほぼ関係ありませんよね。ですからPB商品が安過ぎるというよりもNB商品に余分に経費がかかっているといった方が正しいともいえるでしょう。


例えばアレグラFXは人気の花粉症薬で医療用と同じ薬として人気が高いですが定価で1錠94円となりますが医療用のアレグラは1錠53.7円となっています。それにアレグラはもともと医療用から市販薬にスイッチした医薬品になりますので開発費もそこまでかかっていません。そうなるとCMにかける費用がかさんでいると考えた方が自然ですよね。


PB商品をNB商品に替えても症状改善の期待は高くない

PB商品もNB商品も主成分は同じです。当然ながら使用している人の主観によっては若干の効果に差が出る可能性はありますが、客観的に見てPB商品が効かないからと言ってNB商品に替えた所で効果が劇的に変わる可能性は高くありません。ですからもしPB商品の効果に不安を持っている人がいたら「PB商品が効かない時はNB商品を勧める事はありません。効果が劇的に変わる可能性は高くないからです。私ならば他の薬を提案します」と言いきるのも1つの手段です。


そしてもしPB商品を使用してみてやはりPB商品は効かないと言われた時には「薬の効果を実感するのは症状の度合やその時の環境が影響を受けます。薬を飲むタイミングでも改善具合が異なります」と伝えて、場合によっては受診勧奨を行う必要があるでしょう。


薬の値段を直に見せて納得してもらう

百聞は一見に如かずです。実際に同じ効果の薬の値段を見て判断してもらいましょう。
ただ場合によってはPB商品の方が多く入っているためNB商品と比べてあまり値段が変わらない場合もあるかと思いますが、その時は1回あたりの値段を電卓で弾いてあげるとより値段の安さが際立つと思います。


ただし初めから値段で攻める方法は「安い裏には何かある」と考える人も多いため、まずは効果について納得してもらってからダメ押しの手段として値段の安さを利用してはいかがでしょうか。


使用する頻度に応じてアピールポイントを変える

例えば日頃薬をあまり使用する事がない人、購入しても短期しか使わない人には「どうせ高い薬を買っても結局は余って使わない分は破棄することになる。薬にも使用期限がある」と説明し値段の安いPB商品を勧めましょう。

では逆に日頃から薬をよく使用する人で長期で使用する人には「たくさん使うなら安い方が絶対いい」とシンプルに伝えてアピールポイントを変えて紹介してみてください。


よく売れていると伝える

世界中の人を乗せた船が沈没しようとしているがボートが足りず、各国の人を海に飛び込ませるための謳い文句として、アメリカ人には「飛び込めばヒーローですよ」、ドイツ人には「規則ですので飛び込んでください」と言った沈没船ジョークがあります。そして日本人には「みなさんはもう飛びましたよ」とされています。

これはジョークですが、やはり多くの人が使用しているといった安心感が与える影響はとても大きいと思います。
ですから実際によく売れている事を伝えてあげるのは感情の面からも購入欲の向上に繋がるでしょう。


また医療用医薬品のデータになりますが平成30年12月の段階でジェネリックの普及率は72.6%(数量シェア)となっています。この時点から時間が経過していますのでさらにジェネリックのシェアは増えているでしょう。つまりもはやジェネリックを使用する方が多数派なんですね。



PB商品を販売する側が知るべきこと

ではここからはPB商品を販売する人が知っておくべき事について紹介していきます。


PB商品はジェネリック医薬品とは違う

「PB商品とNB商品」の関係は「ジェネリック医薬品と先発医薬品」の関係と違う点があります。

具体的に何が違うかと言いますとジェネリックは薬が「吸収」「分布」「代謝」「排泄」されるいわゆる代謝過程が先発品と同等とみなされる臨床試験を行っています。
代謝過程とはざっくり言うと「薬の成分が体内に入って効果を発揮して身体から排出される一連の流れ」となります。この代謝過程がジェネリック医薬品はほぼ「同等」であると担保されているんです。


しかし市販薬に関してはすでに発売されている成分の薬であればこの試験をパスすることができるんです。つまりPB商品は医療用のジェネリック医薬品の様な厳密な試験は行われていないと言うことなんです。よく「PB商品はジェネリックである」と言われますが厳密には違うんですね。


ただ薬を販売する短期間の間にそこまで話ができないという点と少し話がややこしいとからシンプルに「ジェネリックの様なもの」と説明するのは間違いではないと思います。それに「主成分は同じ」で「作っているメーカーが異なる」と言う2点を考えればそこはジェネリック医薬品と同じと言えるでしょう。

安さは時にデメリットにもなる

同じ医薬品なら1円でも安い所で購入したい人でもPB商品となると途端に身構える人も多いです。しかしこれはおかしな話しではありません。


たとえばあなたが良く行くお店で通常1杯700円のがラーメンともう1種類見た目は同じ1杯500円のラーメンがあったとしたらどうですか?もしその200円分安い理由が分からないと怖くて安いだけと言う理由で飛びつくのはためらってしまいますよね。またどうして安いのか尋ねても「材料が少し違います」と言われても見た目が同じならばやはり不安は解消されないと思います。おまけにお店の人が「味はたいして変わらないので500円のラーメンの方がおすすめです」と言ってきたらどうでしょう。余計に怪しく聞こえませんか?

そんな時に「自社商品なので」「開発費がかかっていないため」と説明しても今ひとつピンとこない人も多いのではないでしょうか。

その様な人が本当に知りたい事はその薬の効果と安全だと思います。

ですからPB商品に懐疑的な人は「値段だけ」で推されても警戒心の方が強くなる事があるため注意が必要です。


安さは慣れでもある

再びラーメンの話しを引用させてもらいますが、もし日頃500円のラーメンを食べていて、急にお店が1杯700円の見た目が変わらないラーメンを販売してきたらどうでしょう。おそらく大半の人が「500円のラーメンでいいや」となるのではないでしょうか。

実際に初めからジェネリック医薬品を使用している人は別の薬に切り替える事は少なかったという研究結果もあります。


つまり安さにに慣れる事は簡単ですが値上げには抵抗があるのが人間であり、一旦安い所からスタートしたならばそこにPB商品かNB商品かという先入観はそこまで大きな影響を与えないのではないかと考えます。

ですから初めから値段を重視する様な人には値段を推して推奨する方がいいでしょう。


大切な事は不安を解消すること

という事でPB商品を販売するための事について書いてきましたが、ある研究によると病院の薬でジェネリックを選ぶか先発品を選ぶかは年収だったり加入している保険に影響したという結果あります。

また別の研究では実際に病院で患者がジェネリックを受け入れる要素に「医者」があるそうです。医療において患者は目の前の医者を信頼していますから「医者がジェネリックを使用する=医者が勧めるから問題ない」と言った信頼がジェネリックを受け入れる要素になるそうです。


そしてNB商品を選択する人はブランド品に信頼となじみを持っている人も多く、かたや初めからPB商品に懐疑的な人でその不安が払拭されていない場合には実際に効果に影響する可能性も否定できません。


ですからそのような時は無理にPB商品を勧めずにあくまでも選択肢として紹介する方がいいのではないかと考えます。

そこまでPB商品に不安を感じる人は先入観が効果に影響する可能性も高めになるかもしれませんので、やはり最重視すべきは購入する人が安心して薬を使用してもらう事になりますので、その場合はNB商品を販売しましょう。

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