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ボランタリーカーボンクレジット価格暴落

以下図1(Nature系クレジットであるCBLマーケットのNGEO)にもあります通り、ボランタリーカーボン価格の下落が止まりません。ここ最近の同商品対する信頼性や有効性に懐疑的な報道が連発されたり、一部の機関投資会社は同商品による相殺を認めない方針をアナウンスしたり等、ネガティブなニュースがよくあります。それが売り圧力につながり今の価格に反映されております。ポジションを保有している方々は「紙切れになるかも??」と恐れている事でしょう。

図1カーボンクレジット価格推移

私自身、各プロジェクトのクレジット自体の信頼性や有効性を直ぐにジャッジはできなく、何が正しいのかは実際企業・行政のプロジェクト書類や、認証機関の認証プロセスの書類をチェックしたり、プロジェクト現場に行かなければ判断できない事も多分にあるのかと考えております。それを怠って大きく批判したりする事は誤っていると思うと同時に、投資家は上記プロセスをしっかり踏んで投資すべきとも考えます。

ナラティブ経済

最近のこれら批判は正にNarrative economy(ナラティブ経済)の最たるものなのかと考えております。ノーベル経済学賞を受賞した方が提唱したのもであり、ナラティブ経済学は、第一に人々が「物語」という形でアイデアを伝承し、第二に人々が「感染性のある」(「ヴァイラル」という言葉が使われる)物語を生み出し、その感染性を高めるために努力することに注目する。例えば、ビットコインは、権威当局を無力化する暗号通貨であり、金融兵器として機能するものだというナラティブ(物語)があった。これが事実かどうかは別にして、このナラティブが感染性をもち、その価値を乱高下させるだけの影響力をもったことは確かだ。(東京新聞記事引用 2021年) 
他の例としては、テスラの企業業績が良好となり株価が上昇、メディアでイーロンマスクはスター扱いされ、それも株価上昇に拍車をかける。逆に業績が悪化して株価は下がると、イーロンマスクが「狂人」「大麻中毒者」扱い、株価は更に下落。市場で何か起こると必ず因果関係を知りたくなる事は人間の自然心理であり、メディアは変化が起こる局面でその因果関係を調査して、「人々が読みたい&見たい内容」をキャッチーでセンセーションに世の中に出す(西側のメディアは殆ど営利組織ですし)。まさにボランタリーカーボンクレジットでも同様の事が起きているのでは?と考えております。

前の記事にも記載しました通り、欧米ではエネルギー問題及びインフラ問題の影響がとても大きく、「脱炭素」や「サステイナビリティ」どころじゃない、将来へのサステイナビリティ活動より足元の死活問題をなんとかしたい、と思っている方々は多々おるのではないでしょうか?カーボンクレジットはまだまだ未成熟なマーケットであり、「まやかし」と考えている方もいるのかと(実際前職でも現職での仕事を通してそのような発言をされている方は何人もいました)。こんな「まやかし」はメディアの格好の的となりやすく、ナラティブも作りやすい、訴求効果はあります。

脱炭素への挑戦を止めてはいけない

一日でも早いウクライナでの戦争の終結を願うばかりですが、戦争終結&プーチン政権転覆、といったような大きな転換が起きた場合、上記の脱炭素関連のナラティブは減少していく可能性も十分にあるのかと私は考えます。
兎に角、この記事でお伝えしたいのは、サステイナビリティで大きな批判をする事はよいが(むしろ肯定と否定が常にあって世の中が議論する事が健全)、現場感がなく論理が薄い場合はミスリードしてしまう可能性が大。それが結果、脱炭素活動・投資のスローダウンにつながってしまう事を懸念しております。批判が多い中でも皆が脱炭素への活動・投資は将来のために挑戦していく事を強く希望します。