カーボンクレジットの信頼性①

「カーボンクレジット市場はカーボンニュートラルに必要不可欠な機能」という意見を仰る方は多々おり、私も賛同しております。EU ETSという世界で一番規模が大きいカーボン市場が導入されているEUでは、温室効果ガスの排出量(GHG)が減っており、同市場が大きな役割を果たしているのかと考えます。(以下図1をご参照)
これは集中的にGHG排出量が多い産業を対象とし、
1)基準値以上を排出する会社には罰を。(超過分はクレジットを購入・相殺、又はペナルティを課す)
2)基準値以下の場合はインセンティブを。(基準値よりも下回る場合、下回った量をクレジットとして販売可)

基準値を段階的に厳しくする事で、より企業は対策を行い努力をする。

図1 欧州での排出量は下落トレンド

このような政府主導の市場は世界にいくつもあり、これから導入していく国も増えていくといわれている。もちろん日本も検討中。

ボランタリークレジット市場では?

それでは最近注目されいてる政府主導ではない民間ベースのボランタリーカーボン市場に関してはどうだろうか?前回の記事でも記載したが、興味をもつ企業が増加、海外の投資家は投資のアセットクラスの一つとしてボランタリーカーボンクレジットをボートフォリオにいれる、という方々も何回か耳にした事があります。(ビットコインがアセットクラスの一つとなったように)

しかし、こんな記事がでておりました。日本経済新聞非会員の方は「ところが日本経済新聞の調べによると、一部で実際の削減量より過大に発行した疑いがある事業のクレジットが使われていた」の一文に着目頂ければと思います。

そもそも取引の対象となる商品自体が信頼性がなければ、商品としての価値がないのは勿論の事、これらクレジットを購入して相殺した企業は「グリーンウォッシュ」(*)と批判される可能性がある。

(*)環境に配慮しているように見せかけて、実態はそうではなく、環境意識の高い消費者に誤解を与えるようなこと

同様の記事を数回掲載後、クレジット認証団体であるVerra社は、以下のウェブサイトリンクにもあります通り、(日本経済新聞のライターを名指し)同記事を強く批判しております。「Nikkei Asia has published a series of factually inaccurate and misleading stories that appear designed to do nothing but discredit the use of carbon finance to save forests and promote sustainable land use – two practices critical to meeting the climate challenge」
要は正確性がなくミスリードするような話をして、森林系カーボンファイナンスの利用を否定する、です。

当時かなり強烈に批判をしたな、と感じました。この日本経済新聞社とVerraの対立だけでなく、他国でも同様の応酬がみられます。

ボランタリーカーボン市場及び商品自体、まだまだ「未熟」という表現があっていると個人的に思いますし、信頼たるクレジットが流通すべきというのは当たり前で、その認証プロセス含めたルール作りは急務なのかと。これを放置しておくと、脱炭素活動を実施してクレジットを創出したい企業のインセンティブも低くなる且創出自体もリスクに考える企業が出てくるのは当然の事なのだと想像ができます。