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Climate TRACEというイノベーション

先日のダボス会議のビデオ一覧を見ており、Al Gore氏(ノーベル平和賞受賞者で元アメリカ副大統領)がスピーカーとして参加したセッションを発見しました。別でAl Gore氏が環境に関し情熱的に語られている姿をみて興味を持ち、たまたま今回のビデオが目に留まりました。とても良い発見でした。

https://www.weforum.org/events/world-economic-forum-annual-meeting-2023/sessions/real-data-traceability-for-greenhouse-gas-emissions

ビデオの冒頭では、最近のヨーロッパの熱波、パキスタンやアフリカ諸国での洪水、中国の干ばつ等の気候災害につき説明、その後彼自身が参画しているNGO団体であるClimate TRACEとそのツールの機能に関する説明しました。

Climate TRACEとは?

世界中の工場、都市、施設をズームし、各々の温室効果ガスの量を観測しデータとして見せるツールです。衛星、センサー、様々な情報をAIのアルゴリズムにて処理、より正確な情報をタイムリーに展開、AIにより学ばせて継続的に情報量やその精度を改善させる。

使用してみました。

まずホームページにアクセスすると、全世界のマップがみれる。青い線はおそらく、船の温室効果ガスなのかと想像します。産業が集中している場所(中国の海側、中東のオイル産業、アメリカのオイル産業等)や大都市に黒丸が見えますが、これがおおきいほど年間の排出量が多い、という事です。

日本にズームしてみましょう。大都市や産業地帯にやはり黒丸が目立ちます。これら黒丸にカーソルをあてると、各施設や都市の年間の温室効果ガス排出量がみれ、それら施設の温室効果ガス排出量世界ランキングが表示されます。

関東は以下。海側にある火力発電所、製鉄所、油関連の工場がやはり目立ちます(企業名が記載されておりますがここでは控えます)。意外でしたのが、千葉の成田空港。世界の排出ランキングでは1166位で日本の空港トップ、火力発電所とはまではいかないようですが年4百万トン以上排出しております。

上記で挙げました産業の他に、交通機関、農業、建物、ゴミ、フッ素化ガスや鉱山関連もあります。面白いのは、牛のゲップがメタンガスとなり排出され全く無視できない温室効果ガスの量である、というのは有名な話ですが、
これら牛のゲップの排出量も観測しているのです。

Al Gore氏が発言していて、個人的にポイントとなるのは以下の通り
1. 温室効果ガス排出量を過少報告している企業・施設がわかる。特にオイル・ガス産業では自社の報告排出量とClimate TRACEの排出量では約3倍程の差がある(以下図をご参照)。
2. 温室効果ガス排出量が自身でトレースできない企業・施設はこれを使う事ができ、より透明性が向上する。
3. (上にも記載しましたが)AI事体がドンドン進化して情報の量と質を高める。

サステイナビリティを重視するためには、情報の「透明性」が非常に重要です。虚偽の報告など許されない世の中ですし、情報管理がされていない地域・国・産業は多々あり(どうしても情報格差が発生する)、サステイナビリティにフォローできない人々もでます。一定のルールの導入と信頼できるツールで管理し、これをもとにグローバルで建設的な話ができる事が良いのだと考えます。先日お客様より、脱炭素関連でご意見を求めると「信頼できる第三者機関に温室効果ガス排出量を図ってもらわなきゃいけないし、コストは発生するし、そのコストを顧客から回収できるかも不透明。その後監査も必要になる。気が重くなります」という話もありました。Climate TRACEがその役割を果たすにはまだまだ時間がかかりそうですし、そもそもこのツールが適正か否かは議論が必要です。

このClimate TRACE、グローバル企業等も参加しているようです。欧米諸国によくみられる手法と感じますが、欧米主導でイニシアティブを作り、ルールを作り、欧米以外の国に展開して先行者利益を享受する。日本もこのようなグローバルなルール作りを主導するようなリーダーが生まれる事を願います。

Al Gore氏

このAl Gore氏、元米国副大統領という立場当たり前なのかもしれませんが、ものすごい人を惹きつけるスピーチをすると感じました。情熱的で、回りの人を巻き込む。上記ビデオの中でも、質問したブラジル人とパキスタン人の方々の質問に対しても、リスペクトの姿勢、丁寧なコメント&フィードバックをしておりました。

以下ビデオの応答もすごかったです(Youtubeでは英語字幕をつけみました)。ロジカル、情熱的、興奮して顔が赤くなってますね。印象的だったのが、「この前COPでオイル・ガス産業をスケールダウンする事は誰もできない雰囲気だった!」です。

ファンになってしまいました。