【測量 基礎の基礎】トータルステーションを用いた観測
測量士の八重樫です。こんにちは。
そもそも、測量とは何か。
wikipediaには
測量(そくりょう)は、地球表面上の点の関係位置を決めるための技術・作業の総称。地図の作成、土地の位置・状態調査などを行う。
と、記載されている。
実際には、様々な業務があり、様々な技術が用いられているが今回はその中でも最も多く採用されている基本的な「トータルステーションを用いた測量」について解説する。
トータルステーションとは
測量機器の歴史等は端折らせて頂く。あまりにも多すぎて書ききれない。
トータルステーションは、現在最も多く使用されている測量機器である。
距離を測る光波測距儀と、角度を測るセオドライトとを組み合わせたものだ。
近年、測量機器の進歩も著しく、GNSSや自動追尾など様々な機能を備えた物がある。
道端で作業服のオジサンが覗いているカメラのようなアレは、角度と距離を測っているという認識で間違いない。
トータルステーションで測れるもの
トータルステーションでは
●斜距離
●鉛直角
●水平角
の3つを測る。
実際には、気温や気圧等も計測され、気象による観測誤差を補正する計算もされているが、ここでは省略する。
斜距離と鉛直角
鉛直角は、直上を0°としてトータルステーションの軸から目標までの鉛直方向の角度だ。
斜距離は、トータルステーションの軸から目標までの距離だ。
斜距離だけでは、トータルステーションを設置した点から目標までの正確な距離を得る事は出来ない。
地図に斜距離を採用してしまうと、図のように高低差がある地形や、トータルステーションを設置した高さによって距離が変わってしまう。
よって、水平距離が必要になる。
実際には地球は平面ではない為、縮尺係数という数値を用いて補正を行うが、それはまた今度。
水平距離は鉛直角と斜距離から求める事が出来る。
トータルステーションの軸から目標までの水平距離の線を引くと、このような直角三角形が出現する。
ここで、現在解っているのは鉛直角-90°の角度θと、斜距離のふたつだ。
三角関数の三角比の公式を用いる。
sinθ = A / C
cosθ = B / C
tanθ = A / B
なので、
cosθ = 水平距離 / 斜距離
で、求める事ができる。
例として、鉛直角が120°、斜距離が10.000mだったとしよう。
cos30° = 水平距離 / 10.000
√3 / 2 = 水平距離 / 10.000
水平距離 = 10.000 ✕ ( √3 / 2 )
水平距離 = 8.660m
と、水平距離を求める事が出来る。
また、同様にトータルステーションの軸と目標の高低差も
sinθ = 高低差 / 斜距離
tanθ = 高低差 / 水平距離
で、求めることが出来る。
この例では
sin30° = 高低差 / 10.000
1 / 2 = 高低差 / 10.000
高低差 = 10.000 ✕ ( 1 / 2 )
高低差 = 5.000m
と、高低差を求める事が出来る。
この高低差はトータルステーションの軸と目標との高低差なので、地面の高さを求める為には、トータルステーションを設置した点の標高と、地面からトータルステーションの軸までの高さ、地面から目標までの高さが必要になる。
このように、測量では三角関数を用いる事が多い。
資格試験でも出題される事が多いので、受験者の方は必ず覚えておいて欲しい。
水平角と方向角
測量では、このように「座標値の定まっている点」、既知点を基に観測し、目標(上図では新点P)の座標を求める。
「座標値の定まっている点」は、基準点(電子基準点、三角点、水準点等)といい、国土地理院や市区町村で管理されている。
方向角とは、座標軸Xの方向を0度とした右回りの角度だ。
座標を求める際にはこの方向角が必要になる。
方向角は、既知点2点の座標から計算する事が出来る。
例として既知点T1の座標が X = 100.000 Y = 100.000
既知点T2の座標が X = 186.603 Y = 150.000だったとしよう。
図のように、XとYがそれぞれどれぐらい距離があるか線を引くと、直角三角形が出現する。
水平距離の計算と同じように
tanθ = 50.000 / 86.603
tanθ = 0.57735
測量士及び測量士補の試験の際には、問題集の最後に関数表が記載されている。そこから逆引きすれば θ = 30° と知ることが出来る。
また、このように角度を求める際には逆三角関数を使う。
この場合は、tan^-1 又は arctan と表記される。
逆三角関数については測量士及び測量士補の試験では使われる事がないし、解説する自信がないので、関数電卓やExcelを使って試してみて欲しい。
tan^-1 ( 0.57735 ) = 29.99986833 になるはずだ。
あとは、求められた30°に180°を足せば方向角が210°だという事が解る。
そして、水平角が270° 00′ 00″、水平距離が70.000mだったとしよう。
ここまでで、緑の角度が30°という事は解っているので、既知点T1から新点Pへの方向角は 30° + 270° で 300° だ
新点PまでのXとYそれぞれどれぐらい距離があるかを求めたいので
図に線を引くと直角三角形が出現する。
先程の既知点T1から新点Pへの方向角300°から三角形の外にある270°を引いた角度30°と距離70.000mを三角比の公式に当てはめT1とPのXとYそれぞれの差を求める。
先ずXは
sin30° = X / 70.000
X = sin30° ✕ 70.000
X = ( 1 / 2 ) ✕ 70.000
X = 35.000
と、求められる。
次にYは
cos30° = Y / 70.000
Y = cos30° ✕ 70.000
Y = √ ( 3 / 2 ) ✕ 70.000
Y = 60.622
と求められる。
ここで求めた距離はT1とPとの距離なのでPの座標を求める為にはT1の座標にそれぞれ足し引きをする。
先ず、XはT1から見てPの方が+方向なので
X = 100.000 + 35.000
= 135.000
次に、YはT1から見てPの方が―方向なので
Y = 100.000 - 60.622
= 39.378
よって、新点Pの座標は
X = 135.000
Y = 39.378
と、求められる。
まとめ
このようにして、トータルステーションを用いた観測では座標値を決定する。
実務においては、全ての計算はコンピューターを使って行うが、どのようにして計算されているかを知る事で、観測の際に何が必要なのかを知ることが出来る。
また、このような計算を知る事で、試験の際にも解ける問題が多々ある。
三角関数はマジ有能なので、是非覚えておいて欲しい。
最後までお読み頂き有難う御座います。モチベーション維持の燃料にサポートいただけると有り難いです。