“楽をしたい大人たち”による今、最大の被害者「譜久村聖」【後編】

長らくHello!Projectの総合プロデューサーであったつんく♂は、2014年に喉頭ガンが発覚。それを機に総合Pを退き、現在はサウンドプロデューサーとしてモーニング娘。に携わり、他グループについてはいち曲提供者の立場である。
また私生活においては、2016年にハワイに移住。日本とハワイを行き来する日常を送っていた。

ところが折しものコロナ禍で、海外の行き来は隔離などの必要を迫られ困難なものに。
これによって、総合P勇退前から接してきたメンバーと、勇退後の加入のため接点の少ないメンバーとのそれぞれへの興味の差がさらに進んでしまったた印象だ。
コロナ禍後初のシングル「純情エビデンス/ギューされたいだけなのに」が前作に比べすっかり“元の鞘に戻ってしまった”のは、そのことが分かりやすく表れていると思う。

元々、総合Pを退いてからというもの、それ以前と以後のメンバーへの興味の差は次第に開いてきていた。そして、“それ以前”の中で“歌える”人だった譜久村聖と小田さくらの偏重も進んでいく。(佐藤優樹は、あくまで鞘師里保の後釜として2人よりは一歩引かせている感がある)
新メンバーが加入するとデビュー作ではフィーチャーするが…。卒業メンバーにはフィーチャー曲を作るが…。それ以外はいつもの顔触れでお届けします、というのが次第にお決まりになっていった。

レコーディングでは、まず全員に一通り歌わせているのだが、結局譜久村小田偏重になってしまう。それは何故か。
意識してなのか意識せずなのかは不明だが、1から曲を作る時点で、譜久村や小田の歌や癖を想定している。だから全員に歌わせたところで、結局は譜久村や小田が一番ハマるのである。
そして、そうやって作り続けてきたから、そうするのが一番“楽”なのだ。つんく♂楽曲のディレクターである鎌田こーじも、事務所の制作陣も、これがやり慣れているから一番“楽”なのだ。
また、声帯の摘出によって思い描く細かなニュアンスを伝達するのが困難。しかしガン以前のやり方を熟知しているメンバーはある程度容易に理解できる。コロナもガンも、病というものはつくづく憎い。

ガン以前のつんく♂を知り、コロナ以後も大きく変わらず接点を持つ。現在の体制においてそのアドバンテージはとてつもなく大きい。
譜久村は「だからこそ私がつんく♂さんとコミュニケーションをとり続けなければいけない!」という思いでいるのだろうけれど、じゃあ接点の少ないメンバーとの橋渡しを!という姿勢はどういうわけか見えない。
それゆえ、つんく♂に“取り入ってる”ような印象を持たれてしまっている。譜久村自身は、取り入っているつもりは無いのだと思うが。

特定メンバーの偏重というものは、別に今始まったことではなく、例えば高橋愛が偏重されていた頃は一部で「タカハシステム」と揶揄されるなどもしていた。それでも、他メンバーのファンが今ほど不満を持つことはなかった。
それは、秀逸なカップリング曲やアルバム曲も常に充実し、それらではシングル曲ではあまりフィーチャーされないメンバーの見せ場も豊富だった。コンサートツアーは常に新鮮だった。
しかし、2014年頃を境に激変。カップリング曲は基本無し。ほぼ毎年のように出ていたアルバムは数年に1枚間隔へ。
こうなったのは、販促イベントの消化が一定期間必要なこと、リリース1回ごとの単価を上げるため両A面またはトリプルA面で仕様違いを多数作り出さなければいけないことなどが考えられる。
「One・Two・Three/The 摩天楼 ショー」~「わがまま 気のまま 愛のジョーク/愛の軍団」にかけては、カップリング曲も仕様違いでいずれも3曲以上作られていたのだが。やはり、今のやり方が“楽”なのだろう。
それに、楽曲を充実させたところで、結局はCD=販促イベント券と化している今そうする意味は低下している。仕様違いのカップリング含めて6曲であろうが、両A面の2曲だけであろうが、イベントの為にファンは買ってしまうのだから売れる数は大きくは変わらない。ならば、少なくしてしまえというのは理には適っている。こうなったのは、イベントに入れ込むファンにも原因の一端がある。

”楽”をし続ける為に、そして金の為でもあるが、コロナすらも事務所は利用してメンバーをいいように扱ってきた。以前の譜久村の証言として、『コロナは時が止まったと思ってくれ』と、あるスタッフに言われたのだとか。末端の若いマネージャーがそんな事を言えるわけもなく、当然ある程度偉い大人だろう。
2019~20年にアンジュルムで卒業が立て続いた時は、大人と若い女の子の時間感覚の違いも指摘された。中西香菜の卒業発表の際には「相応しい場を用意できるまで待つように言ったが本人の意思は固かった」そうだ。ただ、この場合引っ張ってもさほどの需要は期待できないという判断もあったようにも思う。
佐藤優樹の時は、卒業シングルの販促を少しでも長く行いたいが為に、笠原桃奈の「花鳥風月」参加スケジュールを後出しで変えるという一種の騙し討ちさえも行った。できるだけ他グループに影響を与えない為には、もっと早い段階で医師との相談を含めた話し合いを始めるべきであったのに。
これといって具体的なビジョンもないのに、もうどうにもならなくなるギリギリまで先延ばす。
譜久村聖もそうなってしまった印象。具体的なビジョンもないので卒業を意識させないよう、歌・ダンス・演技・その他諸々、”ほどほど”の自信を持たせ続けた。色々な大人たちが”楽”をし続けられる為に。
「2020年から卒業の相談をしていた」?どうだかと思う。2021年に「リーダーを譲るのは癪」と言ってしまっていたのに。前述の「コロナは時が止まったと」云々のやり取りなんかを、卒業の相談ということにしているのでは。

ひなフェス2021に端を発した女ヲタSとの繋がり騒動以降というもの、“楽”をしたい大人たちがしてきた事のツケを、利用された側である譜久村も払わされている。
もうこのような被害者を生まないよう、事務所の体質が根本的に改められるよう願いたいが、アップフロントがやることを20年以上見てきた者から言わせると、その望みは薄い。
60名以上いるハロプロメンバーが皆少しでも幸せでいられますようにという、漠然とした思いを抱くことしかできない。

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