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ある秋の日。

今は夏か?いや、暦上は立派な秋なはず。何度もそう思いながら、呟きながら、まだやる気を見せる太陽にジリジリと照らされ目的地へと歩いていく。
途中、噴水…噴水でいいのかな、一定のリズムを保ちながら飛び出る水が地面を濡らしては流れていく。私の記憶にある噴水とはちょっと違う、子ども達のあそび場。

無邪気に水に突進していく子ども達を横目に、今から目的地を目指す親の態度はドキドキ、ハラハラ。
どこも同じなんだなとマスクで隠れた口元が緩む。「みんな忘れてると思うけど、もう少しで12月なんだよね」目の前を通り過ぎる観光客がボソッと呟いた。
そう、そうなの、目の前の子ども達はびしょ濡れになりながら目を輝かせているけれど、今って11月下旬なの。名も知らぬ彼の言葉に心の中で激しく首を縦に振る。そして、どうかこの旅を終えた後、その温度差で体調を崩さないように気をつけて…と祈りのような心を送る。季節は秋、遠く離れた地では連日マイナスだ、雪だと騒いでいる。相変わらず、同じ日本だとは思えない。

「よし、移動するよー!」濡れないようにと細心の注意を払いながらの遊びはつまらない。聞き分けよさそうな態度とは別に浮かぶ表情がそれを物語っている。それをなだめながら次は着替えを持参してあげようかな、と密かに書き留めた。

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