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【一幅のペナント物語#36】東京国際空港物語(1) ジェットの翼は未来の予感

◉これまた随分年季の入った一品で、ペナントとしてもそこそこ初期のつくりに見えるが、中央の飛行機の部分は厚紙に印刷された写真で、そういう意味では年代不詳のシロモノだ。軽快なフォントで書かれた「JET PLANE」という文字が目につくが、ちゃんと左下に「TOKYO INTERNATIONALAIRPORT(東京国際空港)」とあるように、これは空港で販売していたものなのだと推察できる。そのことから時代を特定してみたい。

◉そもそも「東京国際空港」という名前が正式に誕生したのが1952年(昭和27年)7月なので、このペナントはそれ以降の製造であるのは間違いなく、左下に描かれているターミナル本館が国際線として一般供用開始されたのが1963年(昭和38年)ということは、それ以降のものだろうと思われる。

さらに、写真で紹介されているルフトハンザ航空が羽田に就航したのが1961年(昭和36年)で、写真画像の機体左翼下の番号”D-ABOH”を頼りに海外サイトで見つけた情報から1961年から1973年(昭和48年)の間に、このペナントは作られたことが確実になった。

ボーイング 720-030B D-ABOH「ケルン」は1961年2月14 日に初飛行し、1961年3月8日にルフトハンザ航空に納入された。(中略)1973年7月20日に、この航空機は現在のHK-677としてAVIANCA (Aerovías Nacionales de Columbia) に売却され、1973年に「リボリオメヒア」と名付けられ。この航空機は1981年に解体された。(『INFINITE FLIGHT』より)
『INFINITE FLIGHT』より

◉このペナントの誕生が昭和40年代後半としても、このような写真印刷をはめ込んだようなタイプは比較的珍しいのではないか、と浅い知識で思うのだけれど、実際のところどうなのだろう。なによりもスカイブルーの素材の上に踊る「JET PLANE」の文字が、国境を越えて自由に世界を飛び回ることができるようになった、時代のワクワク感に溢れているのがいい。東京国際空港という場所の存在アピールよりも「ジェットがもたらす新時代の幕開け」を歌い上げているような一品だと思う。


【余談】航空機模型好きでもある僕的には、ちょっと心がくすぐられてしまう今回の「D-ABOH」にまつわるリサーチだったのだけど、幸いお値段的に手の届くようなキットや完成済みモデルなどは見つからなかったので、哀しいような嬉しいような。

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