見出し画像

【一幅のペナント物語#6】ブランド力には頼らず勝負するのだ

◉もともとアイボリーの生地なのか、経年でくすんでしまったのかは解らないが、フェルトではなく不織布仕様なので昭和40年代の一品か。茶と緑、黄色で彩られた雄々しくそびえる山をバックに、深い森を挟んだ手前に青い湖が広がっている。その水面には二曹の可愛らしいボート。三角形の先端部に描かれているのはオニユリだろうか。ペナントはこの部分に、その地を代表する花が描かれることが多い。そして中央に鎮座しまします「十二湖」の金色赤縁取りの文字。なんとも潔いシンプルなデザインだ。シンプルが故に、旗竿部側に取り付けられたピンクのリボンに目がいく。

◉「十二湖」と言われましても・・・というのが初対面の感想。調べてみれば青森県。僕にとっては数少ない訪れたことのない県のひとつなので、はじめまして!という感じだ。というか、かの有名な白神山地の一部ならば、それをどっかに小さくてもいいの入れておけばいいのに!と思うのは、余所者の安易な願望だろうか。世界的に有名な肩書に頼らずとも、十二湖はペナントとしての価値を十分に担えるのだ、という想いの発露なのかもしれない。

◉このあたりには全部で33の湖沼が点在しているらしい(それなのになぜ十二湖なのかは諸説ある模様)。このペナントに描かれているのは、面積では4番目(41,150㎡)に大きな「鶏頭場(けとば)の池」だ。その根拠は背後にそびえる崩山との位置関係。標高は940mと、それほど大きな山ではないけれど、実はこの山が崩壊することで無数の湖沼が生まれたと言われており、十二湖にとってはまさに創造主的な存在なのだった。この山からの十二湖の眺めは最高だそうな。
YAMAPのレポートで、コウジロさんという方がアップしていた眺望を見つけたので、是非どうぞ。

◉現地までのアクセスを見ると、おいそれと行けるような場所でもなく、本当に十二湖を目指すくらいの勢いが無ければ出会えない景色である。僕もたぶん行かないかな、というか行けないかな・・・(笑) 静かな奥山に抱かれた神秘的な湖・・・とっても気になるけれどね。想いを馳せるための媒介(メディア)として、ペナントは写真以上にファンタジックかも。

【追記】ボートの貸し出しがあるのはもっと手前の「王池」と「八景の池」くらいらしい。となると、絵の湖は「鶏頭場の池」ではないのかも。ここでもペナントに良くある空間の捻じれが起きている模様。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?