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【一幅のペナント物語#24】知らず知らず刻み込まれる日焼け少年の夏

◉ペナントに広がる海は玄界灘だ。奥に見えるのは勝島という名前の小島。ここは神湊(こうのみなと)という印象的な名前の地。浜辺に沿って広がる緑越しには帆を張った小さなヨットかディンギーが浮かんでいる。丁寧に描き込まれた手前の建物が「福岡県立少年自然の家 玄海の家」だ。少年自然の家という言葉の響きに懐かしさを感じる人は多いだろう。そんなノスタルジックな気分にさせてくれる一幅だ。

現在の「玄海の家」の活動メニューを見ると、シーカヤックはあるようだが、ペナントに描かれたヨットやディンギーなどは見当たらない。これも安全性に配慮して切り替わったのだろうか?

【追記】「宗像郡」の表示が気になって調べてみた。平成の大合併に伴い、2003年(平成15年)4月1日に、宗像郡玄海町は宗像市と合併し消滅しており、その後、2005年(平成17年)3月には宗像郡そのものが消滅している。

◉小学校の頃、県西部にある少年自然の家に行ったことがある。日本海を望む山裾にある施設だった。物心ついてから初めての大部屋2段ベッド宿泊にテンション爆アゲだったことや、2日目の朝早くグラウンドに集められて「カ~ブトムシ!カブトムシ!」と言いながら、こっぱずかしい体操をさせらたことは強烈に記憶に残っていたりする。現地に行く前は「チッ、めんどくせ~なあ」とか文句を垂れていた気もするけれど、いまだに覚えているということは、あれはあれで忘れがたい旅のひとつとして記憶に刻まれているということか・・・。もう40年以上経つけれど、いまだに「朝日の山だ~♪ 光る緑だ~♪」で始まるその少年自然の家の歌をそらで歌えるくらいだ。

◉たぶん全国の、もっぱら男子勢を中心に"くだらないけど印象深い"思い出を脳の岩盤にしっかりと植え付けてくれた少年自然の家だが、全国的に激減しているという。以下の記事によれば、この20年間で130カ所の少年自然の家が廃止になっているらしい(青年の家を含めば250カ所以上)。「玄海の家」のように現役で営業している少年の家も厳しい状況にあるところは多いようだ。少子化や施設の老朽化以外にも、3.11の東日本大震災以降、津波を不安視する保護者が増えたことや、教員負担に配慮して学校側が宿泊を伴う活動を避ける傾向が増えていることも施設減少が加速している理由らしい。やむを得ないこととはいえ、やるせない。


【余談】地図を眺めていたら「玄海の家」のそばに「北斗の水くみ海浜公園」という名前のスポットを見つけて、気になって調べてみたら、なかなかロマンティックな星眺めの場所だった。いいなあ、こういう場所。

北斗七星の”ひしゃく”が玄界灘の水を汲む。世界でも珍しい天体ショー(岡垣町観光協会HPより)


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