なくなりかけの歯磨き粉


僕にはバイタリティがない。ただちょっとだけある。これがしんどい。

ずっと限界スレスレで、竹のようにしなることなく、ぎちぎち音を立てながらこの木はいつ折れるんだろうと、ぼーっと眺めている。

ひやひやすることはもうない。どうせ折れないんでしょ?

自分の働く世界には、バイタリティに手足と口と肛門をつけた物体がウヨウヨいる。自分についてるのは、手足と口と肛門だけだ。

もう限界、でもなんとかなってしまう。

そんなとき、自分をなくなりかけの歯磨き粉だと思う。チューブがぺったんこになって、出口の部分にだけギリ溜まっている歯磨き粉。

バイタリティあふれる人は、新品の、それも大容量の歯磨き粉で、握ればにゅうっと出るし、放っておいても垂れてきそうなほどパンパンに入っている。

一方の僕のチューブは、親指に跡が付くくらい捻り倒してようやく、にゅっくらいのものだ。でもなぜかなくならない。いっそなくなってくれたら諦められるのに。

そのちょっとだけで勝負していくしかない、人よりうまく歯を磨くしかない。

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