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今日が9月31日だったらいいのに

 また今年も10月1日が来てしまった。今年もNPB球団の第一次戦力外通告期間が始まる。唎酒師的には今日は日本酒の日でもあるけど、いま日本酒を飲んだらベッロベロに酔って悲しみやら色々吐き散らかしてしまう。

 球団発表を待たずして、ベイスターズからは須田幸太投手と荒波翔選手の戦力外構想の報道があった。ファーム最終戦の様子からしてもしやと思ってはいたけれど、やっぱり超ショック。そして田中浩康選手までも。まだこれからどんどん発表がある。もう絶望しかない。

勝手に命を救われた哀れで必死な野球ファン

 2015年4月19日、私は体調を崩して緊急入院した。

 前日は神宮で現地観戦して、負けてやけ酒あおったりしたせいか体調が悪かったので、その日は球場には行かず自宅でラジオを聴いていた。延長12回、三塁飛雄馬のサヨナラエラー負けで試合終了のお知らせと同時に、一気に腹痛が悪化し、うずくまったまま動けなくなった。救急搬送時の体温は40度近かった。原因は急性ストレス。どう考えてもサヨナラエラーがトリガーなんだけど、医者は野球に興味がなさそうだったので不摂生ということにされた。

 入院してもしばらく回復せず、熱は下がらないし発熱に伴う悪寒や痙攣も続いて、誇張なしで三日三晩飲めず食えずだった。

 何の楽しみも回復する予感もなくて、布団にくるまって寒気と汗に悶えながら、点滴に繋がれた手でスマホを握りしめてニコ生でベイスターズ 戦の中継を観ていた。熱も下がらないし薬も効かないし私このまま死ぬんじゃないかと思いながら。

 そんな入院4日目の4月22日、仕事帰りに見舞いに来ていた夫と衰弱しきった私はハマスタ阪神戦をニコ生で観ていた(懲りてない)。6回裏、7番センター荒波がメッセンジャーから2号3ランを放った。白球がライトスタンドにぶち込まれたあの瞬間、「あーハマスタ行きてえ! もっと生きてえ!」という謎のエナジーがどこからともなく湧き上がって来て、そのときまで全く飲めなかった経口補水液を思いっきり飲んだ。熱で喉が腫れて痛みで水が飲めなかったのに、うれしかったから、つい勢いで。そこから次第に回復し、GW前にはなんとか退院にこぎつけた。

 あの荒波のホームランに命を救われたと、今でも勝手に恩義を感じている。すごく一方的な話だけど、こうやって勝手に思いを寄せている。そして、今とても悲しんでいる。

 今日という日は、ファンなんて何もできないちっぽけな存在だと思い知らされる。ただただ必死で、なんて哀れで愛おしい生き物なんだろう。残念ながら明日は9月32日じゃないし、悲しいけど今日も生きている。そして今週もきっと球場に行く。須田も荒波も浩康もいない神宮へ。球場に行って、声援を送って、写真を撮って、グッズを買うよ。そういえば飛雄馬のサヨナラエラーをした時のヤクルトのスタメンに浩康もいたなぁ……

2015年4月22日横浜−阪神戦

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