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Tajimaの開発職:具体的な仕事内容と経験できること

創業1909年のTJMデザインは、建築用ハンドツールをはじめとした幅広い事業展開をおこなっている老舗のメーカーです。
長い歴史の中で「高品質・高性能・高デザイン性」を軸に様々なものづくりをおこなってきたTJMですが、その代表的な商品となっているのは創業当初から手掛けてきた「巻き尺(コンベックス)」。私たちは世の中に出回っている他社製品におけるユーザーの不満を解消するため、シグマストップという今までにない新しい構造のコンベックスを開発しました。
この開発プロジェクトを紹介するとともに開発職の具体的な仕事内容と経験できることをお伝えします。

タジマツール事業本部 開発職 渡邊
大学卒業後、ソフト会社でSE・技術営業に従事。その後派遣会社へ転職し、車載カメラや釣り具など多岐にわたる設計開発を担当。
メーカーへの転職を志したこと、また前職でTajimaの製品を使用していたことをきっかけに2010年6月 TJMデザインへ入社。


【具体的な仕事内容と経験できること】

■ 徹底的なマーケティング

建設や建築に携わる職人たちにとって現場でモノの長さや距離を測るときに不可欠なのが「コンベックス」です。コンベックスと一口に言っても世の中には様々な機能を持つコンベックスが存在し、ユーザーは目的や用途に合わせて使い分けています。
そこで私たちは出したテープが自動で巻き戻らず、かつボタンを押せばテープの固定もできるという”これまでに存在しない”「オートストップ&ロック機能」付きのコンベックスを開発することになりました。

Tajimaの開発は商品企画担当者がユーザーへのヒアリングや市場調査の結果をもとに新商品を企画するところから始まります。経営層も交えた商品戦略会議を経て企画がスタートすると、私たち設計開発担当のところに依頼が来る流れです。この商品を担当することになった当時、私は入社して1年目。ユーザーが抱えている課題をなんとか解決したい!という強い思いを持って挑んだことを覚えています。

リサーチした内容を元にとにかく手探りで様々な形の機構を試作した

二つのロック機能を持つコンベックスをつくるには既存の機構では難しいことが分かったので、上長とも相談した結果「それであれば新しい機構を作ろうじゃないか」という話になりました。
机とにらめっこしていても何も生まれないので、まずはライバルとなる会社の製品を片っ端からリサーチするところからスタート。世に出回っているオートストップまたはロック機能のついた他社製品をずらっと並べて分解し、それぞれにどんな特徴がありメリット・デメリットが何かを全て洗い出して表にまとめました。それを見ながらデメリットに対して何か解決できる方法や構造は無いか、二つの機能を共存させるにはどうすればよいかをひとつひとつ考えていきました。


■ 生産プロセスを全体統括

試行錯誤の末、全ての開発課題を満たせる機構をなんとか作り出すことがきたのでそれを元に図面を作成、サプライヤーへ試作部品を発注しました。通常の設計開発の流れとしては図面を元にモノを作っていくことが大半かと思いますが、この時は図面も何も存在しなかったので作り出したモノを元に図面を書くという逆の流れでしたね。
サプライヤーから届いた試作部品を組み立て、実際に使って検証・試験をおこない、構造的に問題無い事が確認できたらいよいよ量産立ち上げです。工場のラインで試しに100個ほど製作し、作業者にミスが起きないかや計画通りの製品が出来上がるかなどを設計者立会いのもと確認します。トラブルが起きず、きちんとしたクオリティの製品を作れることが確認できれば晴れて量産、市場で販売されることになります。

日本で開発したシグマストップは海外へも展開している

そうして様々な困難を乗り越えた末に、開発当初の課題を全てクリアしたコンベックス「シグマストップ」を発売することができました。
今では海外を中心に同機構を使用したサイズ違いやテープ厚・長さ違いなどの商品がいくつも展開されています。
また何といってもシグマストップはユーザーや販売店からのクレームがほぼありません。オートストップやロック機能のついた他社製品は問題を抱えていることが多いですが、そういったクレームが無いということはそれだけユーザーの満足いく商品を提供できているという事だと思います。


■ 任せてくれる環境

TJMは「やりたいという意思を持てば自由にやらせてくれる」会社です。もちろん一定の社内ルールはあり上長への相談や会社の承認は必須ですが、試作品を作るにしても実験をおこなうにしても基本的に自分が提案したことを「ダメだ」と言われたことは無かったです。過去に派遣社員として働いていたとき、ある大企業では試作品をひとつ作るのに何人もの上長の判子が必要だったり、何か工具を使うたびに責任者への許可取りが必要なところもありました。判子スタンプラリーをしている間に「自分はいま何してるんだっけ?」と、開発目的が分からなくなるようなこともあったんです。
その点TJMでは自分の考えたことを素早く試せて形にできましたし承認がおりるのも非常にスピーディーなので、「開発」というゴールに向かってきちんと向き合い没頭することができました。お金が動くことで経営層の承認が必要なときも申請後30分で事業責任者から承認がおりることもザラにあります。

会社の中でも「開発」を重要視しており私たち社員を信頼してくれていることを感じます。社員ひとりひとりが裁量権を持って働ける環境は、昔から変わらないTJMの風土だということを先輩社員からも聞いたことがありました。非常に柔軟な会社だなと感じますし、開発をおこなう上でとても魅力的な環境だとも思っています。 

何度も検証を繰り返した試作室

■ いつでも相談に乗ってくれる仲間

 TJMは「何か課題が見つかるとそのたびに必ず相談に乗ってくれる仲間がいる」会社でもあります。今回のプロジェクトにおいてもチームで一丸となりながら検討を重ね、樹脂の種類を変えてみたり部品の角度を微修正したりとトライ&エラーを繰り返しながら、どうすれば解決できるかを何度も話し合いました。また今回は新構造の製品で部品の耐久性を検証する試験機が存在しなかったため、自社工場の製造技術担当者へ相談しシグマストップ専用の耐久性試験機を作ってもらいました。

検証をおこなうことでまた新たな課題が見つかることもよくあるのですが、じゃあ今度はこれをクリアするためにはどうする?と、ひとつひとつしっかりと地を固めながら目標に向かって上へ上へと積み上げていきました。
シグマストップのメイン担当は私ではありますが、これまでに無かった機構のコンベックスを作り出すことはチームメンバーの皆にとっても”挑戦”だったと思います。


■ 開発者としての変化と成長

プロジェクト立ち上げ当時は3Dプリンターがまだ無かったので試作品も全て手作りでした。プラスチックの板を用意し、ノコギリで切って、穴をあけてネジで繋ぎ合わせて…。機構部分もどの部品を何の素材でつくるのか、そうするとコストはどうなるのか、使用するゴムをどんな配合のものにすれば耐久性が高まるのか…など毎日試行錯誤の繰り返しでした。原理試作品の数はもはや何個作ったか思い出せないくらいです。当時「この構造でいける!」となった瞬間は本当に嬉しかったことを覚えています。 

そして長年にわたってコンベックス以外にも様々なアイテムの開発を担当し、私自身も変化してきました。今最も意識していることは、初回量産時に何もトラブルが起きないよう設計から量産立ち上げまでをおこなうことです。「トラブルを未然に防ぎ、スムーズかつスピーディーに発売まで持っていく」という、TJMの開発担当者としてあるべき姿が私の中で定まってきたのだと思います。「目の前の仕事の成功」から「仕事全体の成功」へ目標の視座が変わってきたことは、長年経験を積んできたからこその「成長」の表れだと実感しています。


関連サイト
株式会社TJMデザイン
Tajima(ブランドサイト

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