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「電子版が配信されているのは『マンガ図書館Z』だけ」的なマンガ
※この記事は11月23日に更新しました。マガジンとしては「10月分の記事」のところ、更新が遅れてしまっており、大変申し訳ございません。
「マンガ図書館Z」がサイト停止に
サイト停止
「マンガ図書館Z」が11月26日(火)昼12時で停止するそうです。
「決済代行会社から、『アダルトコンテンツの取り扱い』を理由として10月末での契約解除の通達がございました」
「作家様への還元ができなくなるようなサイト運用を続けることは、結果的に作家様、ユーザ様からの信頼も裏切ることになると判断し、サイトの停止を決断いたしました」
てな感じで、別に違法でも無いものについて、クレジットカード会社が「適切・不適切」を判断して制限をかけるのは問題があると思います。
マンガ図書館Zとは(一応)
「マンガ図書館Z」は、2010年末ごろに始まったサイトでした。
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赤松健先生が主導する、広告収入で作者に還元する絶版マンガ共有システムみたいな感じ。
名称は「Jコミ」→「絶版マンガ図書館」→「マンガ図書館Z」と変化しました。
■当時の雰囲気
2008年ごろ、「ガンガンONLINE」や「クラブサンデー」など、出版社による「無料マンガサイト」がスタート。
2010年のクラサンでは、『いつわりびと空』や『ツール!』が週刊少年サンデーからWebに移行するパターンになっていました。
2012年には「となりのヤングジャンプ」「やわらかスピリッツ」「花とゆめONLINE」などが続いて……。
それから、スマホの普及によって「漫画アプリ」が一般化します。
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その早い段階で登場した、新作ではなく「絶版マンガが読める無料マンガサイト」でした。
『この女に賭けろ』の件
2015年12月には「新型アップロード機能」を実装。(URL)
「第三者による漫画ZIPのアップロード」を受け付けて、権利者が「公開OK」ボタンを押すと、全巻公開されるというシステムだったのですが……。
権利者以外が「公開OK」しちゃうみたいな問題も起きました。
その後、「アップロードできるのは作者本人だけ」という利用規約に変更されます。
赤松健先生がやりたいことは、こんな感じでした。
柴山薫先生の件
2016年には「孤児著作物を合法的に利用するための実験」という試みも始めました。
「作者が亡くなると、著作権はご遺族に移ります。しかし柴山薫先生は独身で、ご両親も先生が亡くなる前後に亡くなっているようで、誰にも連絡が取れません」
「そのせいで、『爆骨少女ギリギリぷりん』『ライバル』『チャラ!』などはどこからも電子化されていないのです」
「元アシスタントさん達からの情報によると、『弟さんがいたらしい』という噂があるのです。実際いるのかいないのかは分からないので、連絡は付きません」
てことで、権利者が分からなくて電子化できない漫画について、裁定制度(著作権法67条)を利用して「マンガ図書館Z」で正規に電子化できないか……みたいな話でした。
結局、
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とのことで、この活動がきっかけで遺族と連絡が付いたらしいです。
そうして、Kindleなどで柴山薫先生の作品が買えるようになり……。
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これが「マンガ図書館Z」のおかげだとしたら、大きな功績だと思います。
(そんな感じで「マンガ図書館Zが電子化のきっかけになった」というケースは多いです)
※余談:柴山薫先生について
柴山薫先生の作品でも、そもそも紙の単行本化にもなっていないものについては、電子化もされていません。
たとえば、『コミックヴァルキリー』の「夢幻少女ドリーマーエンゼルズ」とか、『近代麻雀オリジナル増刊』の「麻雀仕置人」とか……。
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『サファイア』は第1巻に4話まで収録された後、第2巻が出なかったので、この第5話が単行本未収録となっています。
作家応援企画
それから、「マンガ図書館Z」では「作家応援キャンペーン」として、リクエスト色紙とか年賀状の企画があって……。
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私も、岩泉舞先生から年賀状をもらったりしました。
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そんなこんなで
私も正直、赤松健先生の仰る理屈は分かるけど、倫理的に釈然としない部分もあったりはするのですが……。
とにかく、「海賊版しか存在しない絶版マンガを減らして、作品を世に残し、作家の利益に還元する」みたいな方針で、実際に色々と動いて、一定の成果のあったサイトが「マンガ図書館Z」でした。
周良貨先生のように怒った方もおられれば、感謝を表明している漫画家さんもおられる……という感じです。
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PDFを販売する形態
一般的な電子書籍ストアは、そのストアのアプリやサイトを通して本を読ませる形です。
なので、ストアがサ終すると購入した本も読めなくなるというリスクがあります。
それに対して、「マンガ図書館Z」では、本のデータのPDFファイルを購入という形をとっています。
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なので、こうして実際にサ終となっても、「マンガ図書館Z」からダウンロード済みのPDFファイルは、今後も読み続けることができます。
てことで、
「『マンガ図書館Z』以外では電子書籍化されていない」
「Kindleにもあるけど、PDFファイルとして持っておきたい」
といった場合には、サイト停止前の駆け込み購入もアリだと思います。
「電子版はマンガ図書館Zだけ」的なやつ
とはいえ、現状では「マンガ図書館Zでしか読めない」という作品は、イメージほど多くないような気がします。
「マンガ図書館Z」にある漫画は、「Jコミックテラス」や「ナンバーナイン」から各電子ストアに配信されることが多いからです。
「マンガ図書館Z」以外への配信も推進されて、かつては「マンガ図書館Zでしか読めない」と思っていたものが、気がつけばKindleに入っていたということがよくあります。
(勝手な想像ですが、マンガ図書館Zの広告よりは、KindleUnlimitedのほうが作家の収入になりそうな気はします)
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これらの作品は、「マンガ図書館Z」が停止しても、Kindle Unlimited で読めたり、スキマで「いつでも無料」か「待つと無料」だったりして……。
サイト停止によって「電子配信が完全になくなる」という漫画は、思ったより少ない(?)かも知れません。
とはいえ、そういう作品もやはりそれなりにあるので、以下、そういう例を気がついた範囲で挙げてみます。
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