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大江健三郎先生の『セブンティーン』『政治少年死す』の思い出

大変申し訳ございません。
今月、更新ペースを維持することができなかったため、過去に雑誌に書いた記事の再掲載をさせていただきます。

以下は、2008年3月の『ネットランナー』に書いた文章の再掲載となります。
(『ネットランナー』は文字数が少なくて色々削っていたので、多めに加筆しています)


ノーベル賞作家

春になりました。
新しい学校や職場で「趣味は抱き枕カバーの収集です」という言葉をグッと飲み込んで「趣味は読書です」と自己紹介したものの、好きな本を聞かれて「『撲殺天使ドクロちゃん』です! ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー!」と叫んで台無しにした方も多いと思います。

そこで今日はお役立ち情報。

どこに出しても恥ずかしくないノーベル賞作家・大江健三郎先生の作品を、読まなくても語れるようにご紹介してみようと思います。

Wikipediaには、「現代日本文学の頂点に立つ作家の一人である」と書かれているくらいなので、安心ですね。


『セブンティーン』

さて、大江先生の作品といえば、

バスのなかで男がケツ丸出しで一列に並ばされる恥辱を受けたのちに、プロ市民と警官にセカンドレイプされる『人間の羊』
肛門にキュウリを挿入して首吊り自殺する『万延元年のフットボール』

など、色々あります。

その中で、個人的な一番は『セヴンティーン』という作品です。

これは、17歳の右翼少年が左翼の偉い人を殺害したという実際の事件をモデルに、一般人だった少年が右翼化してテロに至るまでの心のありようを描いた物語です。

まず1ページ目から、少年は勃起について語り出します。

勃起は好きだ、体じゅうに力が涌いてくるような気持だから好きなのだ、それに勃起した性器を見るのも好きだ

「大人の性器の、包皮が剥けて丸裸になった赤黒いやつが嫌いだ
「子供の性器の青くさい植物みたいなやつも嫌いだ

「剥けば剥くことのできる包皮が、勃起すれば薔薇色の亀頭をゆるやかなセーターのようにくるんでいて、それをつかって、熱にとけた恥垢を潤滑油にして自涜できるような状態の性器がおれの好きな性器で、おれ自身の性器だ」

つまり、「青くさい子供チンコが嫌い。赤黒い大人チンコが嫌い。自分の包茎チンコが好き」なのだそうです。

どれだけ性器のことで頭いっぱいなんだという感じですが、さらに「おれは自涜の名手」だと語る少年。

「射精する瞬間に袋の首をくくるように包皮のさきをつまんで、包皮の袋に精液をためる技術までおれは発明した
「ポケットに潜り穴をあければ、授業中でも自涜することができる

『オナニーマスター黒沢』が登場する45年も前から凄いヤツがいたものですが、もちろんこれは大江先生ご本人の学生時代の経験に基づいたお話に違いないと、ちゆは確信しています。

そうして、少年のエロドリームは止まらず、古文の試験を受ければ、

「もよほし顔とはなにをもよおしているのか?」
もよほし顔なんてエロティックだとおれは考え、たちまち猥らな空想におちこんでしまう」

試験が終わったら終わったで、

試験のあとの教室は厭らしい、みんなうつむいて熱心に答案を書いたあとなので頬を上気させ眼はうるみ、ペッティングのあとのような猥褻な表情になっている」

などと考える大江先生……じゃなくて少年でした。

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