「鳥山明が描く女性キャラ」という記事への疑問
今日の話題
PRESIDENT Onlineに、こんな記事が載っていました。
この記事を読んで、いくつか気になったことを書いてみます。
『ドラえもん』と『Dr.スランプ』の差
記事のライターは、藤井セイラさんという方でした。
SNSでも、
ドラえもんのアニメでは、近年まで「女性の風呂に男性が入ってキャーといわせるオチが面白い」をやっていた。
それに比べて鳥山明作品では、1980年代から相当に繊細なものをふまえた女性の描き方をしていた。
……という感じに、「鳥山作品は時代の先を行っていた」系の発言をしておられます。
お風呂オチのこと
『ドラえもん』は原作から、しずちゃんのお風呂オチが多いです。
このように女性への加害行為が「オチになる」「面白い」と思う感覚が、藤井セイラさんの嫌うところ。
その点で、鳥山明先生は1980年代から繊細なものをふまえていて、時代の先を行っていたという意見なのですが……。
鳥山作品でも、「のぞきで捕まるのが面白い」というオチをやったり、
「スカートめくりがギャグとして有効」をやったりしていて、
そういうところは描かれた時代相応だったように、私には感じられます。
『Dr.スランプ』と『ドラえもん』のセクハラは違うのでしょうか。
両者の違い?
藤井セイラさんの認識では、
ドラえもん → セクハラ行為がなんら咎められない
鳥山作品 → セクハラ行為にちゃんとツッコミが入る
という違いがあるそうです。
鳥山作品にもセクハラ行為はあるけど、ちゃんと咎められる分だけ『ドラえもん』より好ましく感じるとのこと。
実例
しかし、『ドラえもん』でも、のび太がギタギタにされることはあります。
逆に、鳥山作品でセクハラ行為が咎められないこともあります。
千兵衛さんがノゾキに夢中になっているうちに、目を離した赤ちゃんが死ぬのですが、ギャルはノゾキに気が付かなくてお咎めなし。
それから、痴漢をしたらエロ本をもらって得するやつとか……。
たぶん、傾向としては、『ドラえもん』より鳥山作品の方がツッコミが過激だったりはするのですけど……。
どちらも描かれた時代相応の内容で、セクハラへの感覚に、そこまで明確な違いは感じ取れませんでした。
「変な意味のサービスカットがない」
それから、鳥山作品には「変な意味のサービスカットがない」という主張も、解釈に迷うのですが……。
一般的には、こういう巻頭カラーで意味もなく女性の裸みたいなやつを「サービスカット」と呼ぶと思います。
ランチさんがカメハウスに来た直後に下着姿にされるのとかも、
「男性読者へのサービス」+「セクハラをギャグにして面白がっている」と解釈できそうな気もします。
ランチさんについて
PRESIDENT Online の記事は、「鳥山作品の女性キャラは、添え物ではなく、自分の意志で動いている」という感じの内容でした。
その実例として、ランチさんの名前も挙がっています。
確かに、ランチさんは労働から自由な犯罪者で、イキイキとしていて、やんちゃで魅力的かも知れません。
ただ、そもそもランチさんは、カメハウスに「ぴちぴちギャル」要員としてスカウトされて来ました。
「男ばかりで華やかさに欠けるから、ただ若い女がいるだけでいい」という、ド直球の昭和発言を受けてドラゴンチーム入り。
このランチさんを、「男性の願望を反映した役割消費はされず」の例として挙げられると、やや混乱します。
参考:同時代のジャンプ
ちなみに、ランチさんが登場した回の『ジャンプ』は、こんな感じ。
たとえば、
『シティーハンター』の香
『ウイングマン』のあおい
『シェイプアップ乱』の乱子
などと比べて、ランチさんだけが「自分の意志を持って動いていく個性ある女性」として描かれており、その点で鳥山作品が「時代の先を行っていた」とは、私には感じられません。
(その当時の作家として時代を作ったことは間違いないのですけど)
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