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「鳥山明が描く女性キャラ」という記事への疑問

この記事は4月17日に更新しました。マガジンとしては「3月分の記事」のところ、更新が遅れてしまっており、大変申し訳ございません。

 


 

今日の話題

PRESIDENT Onlineに、こんな記事が載っていました。

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この記事を読んで、いくつか気になったことを書いてみます。

 

『ドラえもん』と『Dr.スランプ』の差

記事のライターは、藤井セイラさんという方でした。

SNSでも、

  • ドラえもんのアニメでは、近年まで「女性の風呂に男性が入ってキャーといわせるオチが面白い」をやっていた。

  • それに比べて鳥山明作品では、1980年代から相当に繊細なものをふまえた女性の描き方をしていた。

……という感じに、「鳥山作品は時代の先を行っていた」系の発言をしておられます。

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お風呂オチのこと

『ドラえもん』は原作から、しずちゃんのお風呂オチが多いです。

例:『ドラえもん』34巻、12巻、19巻、28巻(てんコミ)

このように女性への加害行為が「オチになる」「面白い」と思う感覚が、藤井セイラさんの嫌うところ。

その点で、鳥山明先生は1980年代から繊細なものをふまえていて、時代の先を行っていたという意見なのですが……。

鳥山作品でも、「のぞきで捕まるのが面白い」というオチをやったり、

『週刊少年ジャンプ』1982年39号

「スカートめくりがギャグとして有効」をやったりしていて、

『少年ジャンプ』1981年49号

そういうところは描かれた時代相応だったように、私には感じられます。

『Dr.スランプ』と『ドラえもん』のセクハラは違うのでしょうか。

 

両者の違い?

藤井セイラさんの認識では、

  • ドラえもん → セクハラ行為がなんら咎められない

  • 鳥山作品 → セクハラ行為にちゃんとツッコミが入る

という違いがあるそうです。

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鳥山作品にもセクハラ行為はあるけど、ちゃんと咎められる分だけ『ドラえもん』より好ましく感じるとのこと。

 

実例

しかし、『ドラえもん』でも、のび太がギタギタにされることはあります。

『小学三年生』1982年7月号(てんコミ33巻)

※この話は、前述の『Dr.スランプ』のお風呂侵入オチの回(『少年ジャンプ』1982年8月2日号)と、ほぼ同時期に描かれたもの。

逆に、鳥山作品でセクハラ行為が咎められないこともあります。

『週刊少年ジャンプ』1983年32号

千兵衛さんがノゾキに夢中になっているうちに、目を離した赤ちゃんが死ぬのですが、ギャルはノゾキに気が付かなくてお咎めなし。

それから、痴漢をしたらエロ本をもらって得するやつとか……。

『週刊少年ジャンプ』1982年50号

たぶん、傾向としては、『ドラえもん』より鳥山作品の方がツッコミが過激だったりはするのですけど……。

どちらも描かれた時代相応の内容で、セクハラへの感覚に、そこまで明確な違いは感じ取れませんでした。

 

「変な意味のサービスカットがない」

それから、鳥山作品には「変な意味のサービスカットがない」という主張も、解釈に迷うのですが……。

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一般的には、こういう巻頭カラーで意味もなく女性の裸みたいなやつを「サービスカット」と呼ぶと思います。

『週刊少年ジャンプ』1981年26号

ランチさんがカメハウスに来た直後に下着姿にされるのとかも、

『週刊少年ジャンプ』1985年27号

「男性読者へのサービス」+「セクハラをギャグにして面白がっている」と解釈できそうな気もします。

※このあと、亀仙人が「罰」を受けることになるのですが、ランチさんは、セクハラだと思ってブチギレているわけでもなさそうです。

『週刊少年ジャンプ』1985年27号

 

ランチさんについて

PRESIDENT Online の記事は、「鳥山作品の女性キャラは、添え物ではなく、自分の意志で動いている」という感じの内容でした。

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その実例として、ランチさんの名前も挙がっています。

URL

確かに、ランチさんは労働から自由な犯罪者で、イキイキとしていて、やんちゃで魅力的かも知れません。

『週刊少年ジャンプ』1986年30号

ただ、そもそもランチさんは、カメハウスに「ぴちぴちギャル」要員としてスカウトされて来ました。

『週刊少年ジャンプ』1985年27号

「男ばかりで華やかさに欠けるから、ただ若い女がいるだけでいい」という、ド直球の昭和発言を受けてドラゴンチーム入り。

このランチさんを、「男性の願望を反映した役割消費はされず」の例として挙げられると、やや混乱します。

カメハウスでは若い女性であること自体が役割とされており、「自分が老人から性的な対象に見られているのを利用して、警察から匿ってくれる男の庇護下に入った」みたいな見方もできます。
漫画的にも、ブルマが一時退場したことで「男ばかりで華やかさに欠ける」から登場した「絵的な添え物」だったようにも思えます。(サイヤ人襲来前に雑に失踪してそれっきりという扱いですし)

その辺、PRESIDENT Online の記事では、たまに銃を乱射するという点だけで、時代の先を行った女性描写と判定されているようです。

 

参考:同時代のジャンプ

ちなみに、ランチさんが登場した回の『ジャンプ』は、こんな感じ。

『週刊少年ジャンプ』1985年26号

たとえば、

  • 『シティーハンター』の香

  • 『ウイングマン』のあおい

  • 『シェイプアップ乱』の乱子

などと比べて、ランチさんだけが「自分の意志を持って動いていく個性ある女性」として描かれており、その点で鳥山作品が「時代の先を行っていた」とは、私には感じられません。

(その当時の作家として時代を作ったことは間違いないのですけど)

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