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チャンピオンの『ゆび』について(原作小説との比較など)

以下の文章には、週刊少年チャンピオンに連載した『ゆび』と、その原作小説『ゆび』のネタバレが含まれます。

 

無意味な前置き

このnoteでは、70年代の漫画とかの話題が多くなっています。

たとえば『ジャンプ』の漫画でも、『シベリアの牙』(1970年)や『闇の戦士』(1971年)については、これまでにほとんどネットで語られていないらしくて、そういうのを補完していきたいと思っているからです。

『侍魂』の健さんが1979年生まれくらいですし、世代的なアレで、ネットに70年代以前の情報が少ないのかな? と思います。
もちろん、ネットには年配の方だって大勢いらっしゃるのですが、実際、『マウンドの稲妻』(1980年)くらい強烈なジャンプ漫画でさえ、ネットではあまり知られてなかったりで……。

そして逆に、すでにネットで語り尽くされている有名なネタについては、いまさら私がその話をする名目がないという気がして、やりにくいです。

でもやります。

 

『ゆび』とは

てことで、今更感があるかもですが、今日は『ゆび』という漫画の話です。

『週刊少年チャンピオン』2005年50号

ネットが普及した時代(2005年)の漫画なので、掲載当時からネットで話題になって、クソ漫画界では有名な作品になっています。

……とはいえ、単行本も出ておらず、当時の『週刊少年チャンピオン』を見る以外には、読む手段のない漫画。
なんだかんだで、人類の99%は実際に読んだことがないでしょう。

(もう16年前の漫画で、当時読んだ人も記憶が曖昧だと思いますし、実は、私が思っているほどメジャーな漫画ではないかもです)

 

基本情報

この漫画は、2005年に『週刊少年チャンピオン』で4週だけ連載しました。
(2005年50号・51号・52号・2006年1号に掲載)

基本的には、1999年のホラー小説『ゆび』を漫画化したものです。

この原作小説は、柴田よしき先生の作品。
1999年7月に祥伝社文庫で刊行された、書き下ろし長編でした。

発売日を意識したのか、作中ではノストラダムスにも言及。
また、パソコンが重要な要素として登場するのですが、1999年なので、作中で子供がiMac(っぽいもの)を欲しがったりします。

呪いのゲームみたいなヤバいブツがフロッピー1枚で受け渡されるのも、いま読むと90年代感ありますね。

 

原作改変

祥伝社文庫の小説を『週刊少年チャンピオン』の漫画にするにあたって、かなりアレンジをしたようです。

たとえば、主人公の「上村」は、原作ではリストラされて職安通いのオッサン。妻子持ちで、9歳になる娘がいます。

しかし、漫画版は少年誌連載ということで、上村が男子高校生に変更されました。

漫画の上村は、幼なじみの雪奈ちゃんと友達以上恋人未満な高校ライフを送っている、反抗期ボーイです。

 

雪奈ちゃん

原作小説では、上村の妻が「瞳」、上村の娘が「舞子」、上村がちょっと気にしている人妻が「繭子」という名前でした。

「雪奈」というのは、「上村の娘の友達」として登場する脇役。
原作では、あまり重要な登場人物ではありませんでした。

原作の雪奈は、「主人公(上村)の知人」であり、「キーパーソン(裕太)の従妹」でもあるということで、上村と裕太をつなぐ存在として配置されているのですが、雪奈そのものは特にどうでもいいキャラでした。

普通に考えたら、漫画版のヒロインの名前は「瞳」がふさわしそうで、どういう意図で「雪奈」にしたのかは地味に謎です。

とにかく、原作小説では「結婚10年目の夫婦関係」が問題になっていたのに対して、漫画版では「恋愛未満の高校生カップル」が思春期してます。

と、第1話から、原作には全く存在しない「女子高生のパンツをおろすサービスシーン」まで登場。

そのパンツの中から「ゆび」が出てくるのが、主人公と怪異の初遭遇になるというオリジナル展開でした。

(原作小説には、性的なシーンはほぼないです)

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