『スパイラル ~推理の絆~』で、水野英多先生のホームページがわりとフリーダムだった思い出
大変申し訳ございません。
11月は比較的時間があって、それほど無駄な時間も過ごさなかったはずなのに、あまりうまくいきませんでした。
今月の残り(25・26・27・28・29・30日)は毎日更新いたします。
26日まで、電子書籍サイト「ebookjapan」で、『スパイラル ~推理の絆~』の1~7巻が無料で読めるそうです。
全15巻で、8巻以降を読みたいなら3474円。
特にオススメできない微妙さです。
でもまあ、せっかくなので、『スパイラル』について15年前に書いたコラムを再掲載させていただきます。
以下は、2005年12月の『ネットランナー』に書いた記事です。
城平京先生について
推理小説には、禁じ手があります。
・密室殺人の正体が「被害者は勝手に滑って転んで頭を打って死んだのだ!」
・遠隔殺人のトリックが「実は犯人はかめはめ波が撃てたのだ!」
だったりしたら、読後感はせつなさ炸裂です。
そんな禁じ手の1つが、「未知の毒薬の使用」です。
しかし、城平京先生の『名探偵に薔薇を』では、最初に「飲むと何の証拠も残さずにサクッと死ぬスーパー毒薬」が存在するという状況からスタート。
そのローカルルールの中でのミステリを紡ぎ上げてみせました。
そんな感じで、やや特殊な舞台設定を得意とするミステリ作家が城平先生です。
先生のセンスは若干ハジけていて、
・前述の毒薬の名前が「小人地獄」(毒を飲んだ首相が「こびとだ、小人地獄だ」と言いながら死ぬ)
・事件の発端が「ピラミッドパワー信者と電波人間のカップルが殺されていた」
・作品のタイトルが『鋼鉄番長の密室』
といった感じでした。
(ちなみに『鋼鉄番長の密室』はとても面白いです)
『スパイラル』
さて、6年前、『少年ガンガン』の編集部が『金田一少年』の二番煎じの学園ミステリ漫画を作ろうと企画した際、何を血迷ったのか、そんな城平先生がストーリー担当に抜擢されました。
もちろん、われらが城平先生は素直に『金田一少年』を作ってくれるようなタマではありません。
作品は編集部の思惑をすっぽ抜けた「推理で戦う対決漫画」に変異。
しかし、それが人気を博してアニメ化され、結果的には正解でした。
ただ、物語が佳境に入ると、いよいよ城平テイストがノーブレーキで発揮。
神と悪魔と造物主が飛び交うファンタジーな世界の中で、主人公たちは会話するだけで精神的に決着を着けつつ、人はなぜ生きるのか考える……という新しい漫画が完成。
多くの読者を置き去りにしたまま、華麗に最終回を迎えてしまいました。
その作画を担当した漫画家は、水野英多先生。
作品終盤の展開について、城平先生と打ち合わせた時の様子を、自分のホームページでこう語りました。
「いや、もう本当に聞いてただけだったよ。スケールでかいのかちいさいのか、口はさめねえ。みたいな」
水野英多先生のホームページ
新キャラのデザインについて、城平先生が水野先生に「とにかくかわいく、小さく、マルチのイメージで」と指定したこともあったそうです。
マルチのイメージ、出ているでしょうか?
そんな感じで、苦労しておられた水野先生。
当時のホームページの日記には、原稿を描きながら「精神的に限界が来たらしく、ぷるぷるしながら涙をぼろぼろ流し(以下略)」といった話もありました。
作画が終わらなかったときは、
「銃の下描きが半日で終わるとのたまった担当さんは考えが甘すぎ甘すぎ!」
「ゴージャスな背景とてっぽうが何十ページにもわたってなければできたのにね! アハハ!」
……とぶちまけたかと思うと、その10日後の日記では、担当さんにロシア料理をごちそうになっていました。
私たちが普段読んでいる漫画が作られる裏では、漫画家の先生が悲惨な目にあっては、編集者がロシア料理で鎮めているのです。
水野英多先生、アニメの声優への不満を語る
……という文章を『ネットランナー』に書きました。
この水野英多先生のホームページには、ほかにも色々と面白いことが書かれていたので、今日は、それを紹介させていただきます。
たとえば、2002年11月の日記。
真っ白ですね。
……そう、懐かしのドラッグで反転すると読めるヤツです。
その文面は、こんな感じでした。
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