あだち充先生が「これは読まなくていい」とコメントした過去作『無情の罠』
前置き
2018年に『あだち充本』という書籍が出ています。
これは「先生ご本人のインタビュー」「歴代担当編集者の話」にページを割いた、資料性の高い本です。
「あだち充自身による全作品解説」では、『タッチ』『みゆき』といった連載漫画だけではなく、単行本に収録されていないような読切までもが対象になっていました。
それに目を通すと、古い作品については、
……という感じで、描いた本人も覚えていないという正直なコメントも多かったです。
『無情の罠』のコメント
さて、あだち充先生は1971年に『無情の罠』という読切を描いていて、
2018年のあだち充先生は、次のようにコメント。
内容を忘れたわけじゃなくて、ある程度記憶にあるけど「読まなくていい」と言っているらしいのがポイント高いです。
そんなこと言われたら、逆に気になります。
てなわけで、今日は、この『無情の罠』って、どういう漫画だったの? というのを、ネタバレありで紹介させて頂こうと思います。
『無情の罠』までの経緯
ただ、『無情の罠』の話をするには、その前に描かれた『消えた爆音』にも触れる必要があるので、まずはその話から……。
あだち充先生のデビューの経緯を簡単に振り返ってみます。
投稿時代~アシスタント
あだち充先生は、高校在学中に『COM』に投稿。
4度ほど惜しいところに載りますが、入選には至りませんでした。
この高3の時点で、漫画家になることは決めていて、ほとんど学校に行かずに漫画と麻雀の生活だったそうです。
そうして、『COM』編集部の紹介で、1969年2月から石井ひさみ先生のアシスタントに。(高校卒業は1969年3月)
あだち充先生は、18歳にして『くたばれ!! 涙くん』の人物のペン入れを任されていたそうです。
アシスタント~デビュー
そして、1970年。
実兄の「あだちつとむ先生」が双葉社で劇画を描くのに、あだち充先生を使っていたのが石井先生にバレて怒られたそうです。
石井ひさみ先生は「そんなことしていたらダメだ。デビューしたいならオレがなんとかしてやる」と、サンデーの武居記者に相談。
武居記者曰く、
という感じで、あだち充先生の商業誌デビュー作『消えた爆音』が生まれたのでした。
劇画について
『消えた爆音』は、石井ひさみ先生のアシスタントをしながら、3か月~半年くらいかけて描いたそうです。
当時の『くたばれ!! 涙くん』は、こんな感じの絵。
『消えた爆音』にも、ある程度「石井先生のアシスタント」っぽさを感じます。
『消えた爆音』のあらすじ
『消えた爆音』の主人公は、剣持という警察官。
非番の日はコースに出て、スポーツカーを飛ばすのを趣味にしているスピード狂の若者です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?