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1970年のジャンプの10週打ち切り漫画『シベリアの牙』
この記事には『あらしのエース』『おせっかい』『シベリアの牙』のネタバレがあります。
病魔球について
野球漫画には、いろいろな魔球が登場しますが……。
一番受けたくない魔球といえば、「病魔球」かも知れません。
![](https://assets.st-note.com/img/1718412745136-AfkguHCQnm.png)
はっきり「ガン」と言われているのがストレートに怖いです。
![](https://assets.st-note.com/img/1718413045719-qWQdyCRfSj.png)
野球の試合に出なければ避けられたガンなだけに、なまじ試合中に即死するよりも、死ぬまでの3か月の間に後悔に苛まされそうです。
(ちなみに、ボールで病気にする理屈は次のような感じでした)
![](https://assets.st-note.com/img/1718413270986-kSy0nfkx3p.png)
『あらしのエース』が昨年バズったこと
そんな「病魔球」が登場するのが、『あらしのエース』という漫画です。
掲載誌などの素性は、いまいち分からなくて申し訳ありません。
(2022年追記:『あらしのエース』は1974年から学研の『中学二年コース』で連載された作品。1978年に、学研の子会社の立風書房から単行本化されました)
これほどのネタ漫画なのに、マイナーだったので『コミックVOW』や『マンガ地獄変』にも取り上げられていません。
ネットでは、2012年にこちらのブログで紹介されてから、存在を知られるようになりました。
それから、2017年ごろに電子書籍化されて、Kindleなどで読めるようになります。(現在はスキマで全話無料)
そうして、SNSでもたまに話題になっていたのですが……。
少年野球漫画では数々の魔球が生み出されたが、これに匹敵するものはまずないだろう(笑)いいんか、これ(・_・;)https://t.co/cyhbVkFpur pic.twitter.com/M7PdhYvAG2
— 三条友美 (@tomomisanjo) October 25, 2017
2020年4月にバズって、一気に知名度が上がりました。
たぶん、きっかけはこちらのツイートで……。
いけうち誠一先生といえば個人的には「あらしのエース」ですね。対戦相手高のピッチャーの、相手バッターを癌にする病魔球が衝撃的で。数年前に古本を見かけた時に買えばよかった! pic.twitter.com/J5WrsznxEc
— 長妻じゅるり (@materia_crazy) April 22, 2020
そこから色々なところで話題になって、
『あらしのエース』、存在は知っていたが読んだことないので読み始めている。冒頭から、「奥州の殺人打者」が本当にただの殺人者だったので驚愕しているよ pic.twitter.com/KYirBHYyFM
— V林田 (@vhysd) April 23, 2020
こちらのツイートが一番伸びたようです。
TLで話題の野球漫画「あらしのエース」を読んだ。
— ゼロ次郎 (@zerojirou) April 24, 2020
・最後まで野球のルールを覚えない主人公
・ピンチの切り札が基本的に暴力
・打者を癌にする史上最悪の魔球
などなど、1巻完結とは思えない読み応え。自粛疲れによく効きます。無料なのでぜひ読んでみてほしいhttps://t.co/PDYBscOeAg pic.twitter.com/jtStwC5jT6
たぶん、このときにはじめて『あらしのエース』を読んだ方が多いのではないかなと思います。
『おせっかい』
『あらしのエース』の作者は、いけうち誠一先生です。
1947年生まれで、現在は74歳。
1967年に講談社の新人賞からデビューして、『別冊少年マガジン』などにちょっと怖い読切を描いていました。(当時のペンネームは池内誠一)
初期作では『小ちゃくなあれ』が比較的有名なのですが、なんとなくWikipediaに載ってないやつを挙げてみると……。
![おせっかい](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52755956/picture_pc_6495bd53cb48933d0518f9671f9cd52b.png)
こちらは、サキという小説家の短編を漫画にしたものです。
サキは、E・V・ルーカスがオー・ヘンリーと並ぶと評価した短編作家ですが、日本での知名度は微妙。
それを日本に紹介する流れがあった時期に、松本零士先生や辰巳ヨシヒロ先生でサキをコミカライズするという企画が『マガジン』であり、それに池内誠一先生も参加したのでした。
物語は、仲の悪いキコリとマタギが、倒木の下敷きになって動けなくなり、助けを待つというもの。
先祖代々争ってきた2人が、極限状態を一緒に過ごすうちに和解する……というちょっとイイ話です。
![おせっかい2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52756446/picture_pc_d6d8ad3a86afdcdba497fe856c54ff6b.png)
これからは馬鹿馬鹿しい争いをやめて、友だちになろう……。
2人が本心からそう思ったところで、子分たちが助けに来たと思われる足音が聞こえました。
![おせっかい3](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52756827/picture_pc_5f1fd143b4237ea9ef39e50f33eac3cc.png)
マタギは、怪我で目が見えなくなっています。
だれが来てくれたのか、キコリに聞くのですが……。
![おせっかい4](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52756854/picture_pc_c4621bf4eff3abc2bfc37a74555ea81e.png)
![おせっかい5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52756865/picture_pc_cc321075f1a0fe6fe837300aa7aaafa6.png)
おわり。
やって来たのは狼で、2人とも食われました。
ちなみに原作は、「狼だ!」という台詞で終わる形でした。
![サキ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52756991/picture_pc_94794418dca1b5782584747613857c07.png)
それを漫画化したら、最後の1コマで2人が食われているという形になったようで、良いと思います。
![おせっかいUP](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/52757014/picture_pc_446ac3e777962d7f5fa4b32cc2a6ff31.png)
原作はイギリスの話でウルリッヒとゲオルグのところ、漫画では日本のマタギの話にしちゃったのも味わいですね。
このサキが、オー・ヘンリーが並び称される? らしいです。
日本では、オー・ヘンリーの『最後の一葉』や『賢者の贈り物』は非常に好まれているのですが、サキのこういう作風は、あまり受けなかったようです。
実はジャンプ作家
いけうち誠一先生は、1980年代まで『恐怖の叫び』『たたり』といったホラー系を多く描き、それ以外の仕事も色々と請けていました。
『あらしのエース』のような野球漫画、『長州力』『原辰徳』といった実録漫画、80年代に流行したゲームブックなどなど。
しかし、1980年代から『まんがゴルフ実戦講座』といったゴルフ系の仕事をするようになり……。
結局、ゴルフ漫画がメインの作家という形に落ち着いて、漫画家人生の後半は『ゴルフに乾杯!!』『土堀課長ゴルフ・人生』といった作品に費やしました。
そんな感じで、いけうち誠一先生といえば、『あらしのエース』以外には、怪奇漫画かゴルフ漫画のイメージだと思います。
しかし、ほとんど話題にならないのですが、わりと初期に『週刊少年ジャンプ』で連載したこともありました。
2回連載して、どちらも短期打ち切り。
![](https://assets.st-note.com/img/1718432833662-LUaPZJvMVs.png)
両方とも、犬がメインの漫画でした。
なので、ジャンプ読者だと、池内誠一先生は動物漫画の人というイメージだったりします。
この2作品、『銀牙 -流れ星 銀-』の高橋よしひろ先生がデビューする以前のジャンプの犬漫画という点でも、無視できないものがあります。
(しかし、わりと無視されています)
『シベリアの牙』
てことで、「病魔球」で有名なゴルフ漫画家・いけうち誠一先生は、『週刊少年ジャンプ』での連載経験がある!
という前フリから本日紹介するのが、10週打ち切り犬漫画『シベリアの牙』です。
単行本化もされておらず、今後一生読む機会のない漫画だと思うので、画像多めでストーリーをそのまま紹介させていただきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1718413864364-pNeGS74sgk.png)
この第1話の扉絵、個人的にはメチャ読みたい雰囲気です。
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