ラノベ作家・ろくごまるに先生が角川を批判(「自分と同時期の作家で消えた人たちは、たぶん角川に潰された」など)
・実績のあるラノベ作家が「自分の電話番号を角川が闇金に漏らした」「角川はネット工作をしている」「角川の編集者は、見込みの薄い作家を故意に潰している」などと訴えている話です。
・過去の経緯、最近の動向、個人的な感想などを軽めに書きます。
※過去の経緯の一部は、『二次元ドリームマガジン』vol.87(2016年2月発売)に書いたコラムと一部重複します。
始まりはファンタジア大賞
「ファンタジア長編小説大賞」という新人賞があります。
1989年の第1回で『スレイヤーズ!』の神坂一先生が準入選。
1991年の第3回で『魔術士オーフェンはぐれ旅』の秋田禎信先生が準入選。
……あの大ヒット作『スレイヤーズ!』もココから生まれた!! ということで、90年代前半のラノベ作家志望者が、もっとも憧れる新人賞でした。
『GOTH』の乙一先生も『スレイヤーズ!』からラノベに入り、はじめて書いた小説はファンタジア長編小説大賞に応募したそうです。(参考)
そして、1992年の第4回で審査員特別賞を受けたのが、ろくごまるに先生でした。
審査員たちの評価は微妙だったけど、火浦功先生だけが絶賛したため、「審査員特別賞」というのが特別に与えられた(?)らしいです。
審査員特別賞では賞金はナシで、授賞式への交通費は自腹だったそうです。
ろくご先生のブログでは、その日をこう振り返っておられます。
こっちも社会人をやってたわけで、名刺が流れてこない、すなわち仕事の相手として認識されてないことぐらい判るわね。
結局、ワシがいただいた名刺は春樹社長からのものだけだった。
(中略)
そんでもって翌日、担当がつくわけでもなく新幹線にのって大阪に帰ることになったのだ。
これについては、富士見の編集部がひどい気がします。
なお、この2年後、第6回で審査員特別賞を受賞した川口大介先生は、
「交通費も宿泊費も持ってもらえるというリッチな待遇」
で授賞式に行き、すぐに担当がついたそうです。(同人誌『MAKING OF そん血』より)
よく分かりませんが、角川も反省して対応を変えたのかも知れません。
富士見ファンタジア時代
ともあれ、1994年。
ろくごまるに先生の初単行本『食前絶後!!(くうぜんぜつご)』が発売されました。
(挿し絵は『モンスターメーカー』の九月姫先生)
幼なじみに差し出されたお弁当が「さっぱりとしたアスファルト味」だったという導入から、実験的な文章表現やキレたアイデアが散りばめられた、独特の作品でした。
そして、1995年から、代表作となる『封仙娘娘追宝録(ふうせんにゃんにゃんついほうろく)』というシリーズがスタート。
1998年の第7巻まで、4~6か月に1冊ずつのペースで、安定して出版されていきました。
(以前ツイートしたのですけど、こういうところが好きです ↓ )
しかし、1999年に第8巻を出したあと、消息が途絶えました。
ネットでは死亡説が流れたり、「出版社に電話して生存確認したところ、生きていた」という凸報告が2chに書き込まれたり(2001年)しました。
そして、2003年4月、次巻は「今夏発売予定で作業中」と告知されます。
ファンは夏を心待ちにしましたが、その年の夏も、その翌年の夏も、次巻は出ませんでした。
そうして、もう夏は来ないのだと私たちがあきらめかけた3年目の夏、「秋には刊行します」という告知があって……。
その年の11月、6年ぶりの新刊が発売されたのでした
「伝説復活!」
さらに2007年・2008年と刊行されて、シリーズは完結。
「復活そして、大・団・円!!」
第1巻の発売から完結まで、12年半でした。
(個人的には、このラスト3冊が非常に面白かったです)
特に、『刃を砕く復讐者(下)』が好きです。
(ネタバレ絡みでうまく説明できないので、以下は読み飛ばして欲しいのですけど…)
・ほぼ何の役にも立たない性能のゴミが、思わぬ形で役に立つ
・奇跡を願ってやった行動は無駄で、都合のよい奇跡など起こらなかったけど、「無駄なことをしていた」ということ自体に意味は生まれた
・そのため、「強者が油断して雑魚に討たれる」展開が、「話の都合」っぽくならず、納得できる感じで描かれた
・それでも、奇跡を起こす役に立たなかったものが、奇跡が起きなかったことで生じた復讐を果たす役に立っただけという皮肉で…
・それが「『刃を砕く復讐者』ってそういう意味かよ!? 冒頭のアレはそっち視点!?」という驚きと綺麗にハマって終わる
あと、『天を決する大団円(下)』も、個人的には満足でした。
「たとえリセットされるとしても、こんなひどいことをする理由ある? 話の都合でキャラに無理やり変なことさせてない?」と疑問になったところ、結末で「理由納得したわ。なにそれ美しい。しかも奮闘編のノンキな世界観の説明としても成立するのかそれ。すげえ」ってなりました。
その大ネタひとつで、私的には十分でした。(ほかの小ネタの数々も面白かったですし)
……でも、世間では1~7巻の方が人気らしくて、私のようなラスト推し勢は少数派みたいです。(私の感覚がズレてるのかもです)
ともあれ、この『封仙娘娘追宝録』の完結まで、ろくごまるに先生は富士見ファンタジア文庫に書いていました。
ソフトバンク時代
しかし、『封仙娘娘追宝録』の完結から1年以上が過ぎた2009年。
ろくごまるに先生のブログに、次の告知が出ました。
「ろくごまるに、に小説を書かせてみたいという出版社の方、連絡をお待ちしております」
曰く、
「いったい何があったんじゃい? とかは詮索しない方向でよろしくお願いしたい」
「簡単に説明すると、ろくごまるにとして、俺としての矜持を保つ為なのです。頼るツテもないんでブログで募集告知をしたという次第で」
よくわかりませんが、富士見とは決裂したようでした。
それから結局、ソフトバンクと話がまとまったみたいです。
2010年、GA文庫から『桐咲キセキのキセキ』という新作が登場しました。
2巻の出版予定は決まっているということで、1巻では伏線をバラまき、ずっと「K」と呼ばれていた主人公の本名が思わせぶりに明かされたところで2巻に続く!
……だったのですが、その後、2巻は出ませんでした。
「小説家になろう」時代
そうして、ろくごまるに先生はソフトバンクからも姿を消しました。
ファンは再び「夏」を待ち、時は流れて2014年。
4年ほど止まっていたろくごまるに先生のツイッターに、久しぶりのツイートがありました。
「『小説家になろう』というサイトで普通に一般参加者としてなんか書きます」
『小説家になろう』は、だれでも投稿できる小説サイトの大手。
『ログ・ホライズン』や『魔法科高校の劣等生』などが生まれましたが、基本的には、ベテラン作家が挑戦するような場ではありません。
ともあれ、約4年ぶりの新作『トーキョーまで0.8光年 【にょろにょろ島根編】』が始まったのですが……。
と、「序」だけ書かれて、それ以降は投稿されませんでした。
先生は再び、1年半ほど沈黙します。
そして、2015年末。
今度も「小説家になろう」で、『ヒノデ村恒例! 年末デスゲーム祭り』が投稿されました。
これは、12月27日から31日までの物語を、5日間リアルタイムで更新するという実験的な企画でした。
原稿を事前に準備していたわけではなく、毎日即興で書くスタイルにしたところ、やはり時間が足りなかったようです。
その後、補完的な内容の作品も少し投稿されました。
・作者によるコメンタリー付きver(ヒノデ村アンコール)
・世界観とかを掘り下げる続編(ヒノデ村第ニ圏)
これも個人的には好きですけど、やはりろくごファン向けの作品という気はします。
ともあれ、ろくご先生が執筆活動を再開したということで、2016年2月発売の『二次元ドリームマガジン』に、私はこう書きました。
仮にも最大手レーベルの看板作家のひとりだった先生の発表の場が『小説家になろう』という現状に思うところはありますが、なんであれ新作が読めるのはうれしく、とにかく応援しています!
カクヨム時代
そんな2016年2月、角川が「カクヨム」という新サービスを始めました。
(一言でいうなら、角川版「小説家になろう」みたいなものです)
※ろくご先生が以前執筆していた「富士見」も、角川の系列でした。
すると、その始まったばかりの「カクヨム」に、ろくごまるに先生が投稿しました。
タイトルは、『カドカワ 富士見と独占契約したけど本が出ないハートフル物語《ストーリー》』。
株式会社KADOKAWA 富士見ブランドカンパニー様。
あたくし『食前絶後!!』『封仙娘娘追宝録シリーズ全巻』の電子出版契約を結んだ、ろくごまるにという者です。独占的に許諾するってェ契約のやつで。
2015/01/01に契約を交わしてから一切音沙汰がないのですが、どうなっているのでございましょうか。
(中略)
……という本当にあった怖い話があるのですよ、カクヨムに集う作家を目指す若人の皆さん。
みたいな文章で、ジャンルは「ホラー」とのことでした。
「カクヨム」のスタートダッシュで、もっとも伸びた作品がコレだったという事実もホラー。
ろくごまるに先生がネットに書いた作品の中で、唯一のヒット作がコレというのもホラー。
とにかく、作家志望者を集めるサイトに初手告発というインパクトで、この件は注目されました。
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