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共同出版の忌み子『玉使い』の思い出

大変申し訳ございません。
今月、更新ペースを保てなかったため、過去に雑誌に書いた記事の再掲載をさせていただきます。

以下は、2009年12月の『ネットランナー』休刊号に書いた文章の再掲載となります。

2001年から97回書いた『ネットランナー』のコラムの最終回です。
(といっても、これといって何もない、すごく普通の内容です)


「共同出版」とは

本を出版するのもギャンブルです。

印刷代や紙代がけっこう高く、もしも1万部くらい刷って8割が売れ残ったりしたら大損害。
人気が出て増刷を重ねれば出版社もウハウハですが、何冊出しても初版どまりの作家は編集者に「増刷童貞」と罵倒されて仕事がなくなり、40歳から工事現場でアルバイトを始めたりすることになります。

ところが、世の中に本を出したがる人は多く、相対性理論は間違っていて俺の理論の方が正しいと主張したいオッサンとか、絵も描けず楽器もダメだけど文字は書けるから小説ならイケるような気がするクリエイター志望のニートとかは、あとをたちません。

そこで登場するのが、著者が出版費用を負担して本を出す「共同出版」です。

本来なら出版はギャンブルですが、必要経費+αを著者から受け取ってしまえば、あとは本が売れようと売れまいと、出版社の利益は確保。
お金を出す側としても、「書籍コードが付いてAmazonで買える商業出版物の著者」になれて自尊心チャージ。
みんなが幸せになれます。

かくして、それ系の会社からは素人の本が大量に出版されます。
適当にタイトルを列挙すると、次のような感じで……。

『アーッ、時空がずれたー!』(「天動説と地動説を超えた更なる階層的時空間渦構造に秘められた謎を解明する本」とのこと)

・『戦国風雲児 借金地獄で虹を見た』(著者:織田長信

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