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「性的興奮で鼻血」表現は、『ヤスジのメッタメタガキ道講座』が最初ではない

「性的興奮で鼻血」表現

Hなことに興奮して鼻血を出すのは、漫画的表現として定着しています。

いちおう、実例を挙げてみますと……。

『おさきに失礼!』(月刊少年チャンピオン 1987年6月号)

こういうギャグ漫画だけでなく、ストーリー漫画のバトルの最中に真面目なキャラがいきなり鼻血を噴いたりもします。

『ザ・グリーンアイズ』(週刊少年ジャンプ 1990年1・2合併号)

こういうのは「古い表現」ではあるのですが、令和になっても普通に使われています。

『ボーンコレクション』(週刊少年ジャンプ 2020年29号)

角川つばさ文庫の『空想科学読本ジュニア19』(2020年3月発売)では、『NARUTO』のイルカ先生と『ワンピース』のサンジの鼻血を取り上げていました。

 

一般論とか

現実には、「性的興奮で鼻血が出る」というのは、漫画みたいによくあることではないようです。
(医学的なことは、私には専門外の分野でまったく分かりませんけど)

いちおう、「興奮する → 血圧が上がる → 血管に負荷」ということはあって、それで鼻の血管が切れたなら鼻血は出るらしいですが……。
鼻の血管が特別切れやすいといったこともなくて、「興奮して鼻血」「チョコを食べて鼻血」などは、そんなにホイホイある現象ではないようです。

(子供は鼻血が出やすいですし、そういうタイミングで鼻血が出た経験を持つ人もいるとは思います)
(1961年の『性を強くする法』という本では、ヘビが強精食として有効という話で、友人がマムシ料理を食べた帰りの電車で鼻血を出したというエピソードが語られていたりはしました)

 

『ガキ道講座』

「性的興奮で鼻血が出る」という表現を世間に広めたのは、『ヤスジのメッタメタガキ道講座』だと思われます。

それは、『週刊少年マガジン』1970年19号~1971年38号に連載された、谷岡ヤスジ先生の漫画。
連載時には、「1回読んだら鼻血ドバドバ、2回読んだらおシッコもれる」というアオリ文句が付いていて……。

『週刊少年マガジン』1970年48号は、「女性の下着を見て鼻血ブー」が表紙になっていました。

この漫画から「鼻血ブー」が流行語になって、

「鼻血ブー もう一つの中国問題」(『週刊文春』1971年1月25日号)
「勝新太郎が"鼻血ブー"にならぬ理由」(『週刊ポスト』1971年3月19日号)

などと週刊誌の見出しに使われたりしました。

ただ、谷岡ヤスジ作品を除くと、70年代前半の漫画では、「性的興奮で鼻血」の描写はあまり見かけません。

(Hなことに興奮して鼻血を出すのは「谷岡ヤスジ先生の持ちネタ」みたいな感じだったのでしょうか? それが一般的な漫画表現として定番化するのは、少し後のことになるようです)

 

「性的興奮で鼻血」表現が生まれた時を求めて

『ガキ道講座』連載開始

何はともあれ、「性的興奮で鼻血」が『ガキ道講座』で最初に出たのはいつなのかは、確認しておこうと思いました。

『ガキ道講座』は、『週刊少年マガジン』の1970年19号からスタート。

(この号)

当時は『あしたのジョー』『巨人の星』が連載中で……。

(目次では「西岡」になっています)

この連載1回目のみ、タイトルに『ヤスジのメッタメタガキ道講座』が付いておらず、単に『くそくらえーだ』でした。

初回のアオリから「キョーレツすぎて鼻血が出ても、当方いっさい感知せず!」と、鼻血がキーになっています。

そして、1話目にして本編開始から6コマで鼻血。

ただし、これは物理ダメージによる鼻血で、性的興奮によるものではありませんでした。

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