見出し画像

『ドッジ弾平』に先駆けたドッチ漫画『爆裂ドッチャー・銀』

幻のドッチ漫画

時代背景

先日、コロコロの『ドッジ弾平』vs ボンボンの『爆風ドッジ』の話を記事にしました。

1980年代後半から盛り上がった「ドッジもの」の時系列は、だいたい次のような感じで……。

1987年11月:『熱血高校ドッジボール部』アーケード版
1988年7月:『熱血高校ドッジボール部』ファミコン版
1988年:コロコロでドッジ漫画の企画がスタート
1989年:ボンボンでドッジ漫画の企画がスタート
1989年10月:コロコロで『ドッジ弾平』連載開始
1990年4月:ボンボンで『爆風ドッジ』連載開始

1987年11月の『熱血高校ドッジボール部』、1989年10月開始の『ドッジ弾平』が、ゲーム・漫画・アニメで成功しました。

また、『爆風ドッジ』をきっかけに「日本ドッジボール協会」が設立されたことから、ドッジボールの「統一ルールと全国大会」が定着していきます。

 

ヤツはいた

しかし、そんな「ドッジの流れ」が来る直前。
1987年3月に始まって7月に打ち切られた、単行本も出ていないドッチボール漫画が存在していました。

その名は、『爆裂ドッチャー・銀』。

『コミックバーガー』1987年 4/14号(3月24日発売)

『熱血高校』や『ドッジ弾平』が現れる前に「ドッチボールは格闘技となった!!」というコンセプトを打ち出し、9話で打ち切られたというスゴいヤツです。

連載されたのは、スコラの『コミックバーガー』でした。

(こんな雑誌。写真の号は夢枕獏先生の短編『のけもの道』のコミカライズなどを掲載)

この青年漫画誌に、突如ドッチ漫画が現れたのでした。

『コミックバーガー』は1986年に創刊。『コミックバーズ』『月刊バーズ』と形を変えていき、2018年に休刊しました。

 

巻上ゆうき先生のこと

作者の巻上ゆうき先生については、よく知らなくて申し訳ありません。

1987年に『爆裂ドッチャー・銀』を連載する前は、『週刊少年宝島』で『冒険仮面』を連載していました。

週刊少年宝島 1986年12/19号

こちらは「神風五郎」名義ですが、同一人物かと存じます。(別人だったらビビります

いまGoogleで検索すると "神風五郎"で15件、"巻上ゆうき"で9件という感じで、どちらの名義が有名という感じでもなさそう? です。

 

『少年宝島』のこと

『冒険仮面』が連載したのは、1986年12月に創刊して1987年2月に休刊した伝説の雑誌、『週刊少年宝島』でした。

わずか11冊の短命誌でしたが、その11冊を完走することもなく、5冊で終わったスゴいヤツが『冒険仮面』です。

週刊少年宝島 1987年1/23号

『週刊少年宝島』の連載で、ちゃんと「おわり」と書かれた最終回があるのは珍しいです。
(唐突に休刊したので、だいたいの連載は「つづく」で終わっていました

『週刊少年宝島』については、今月発売の『二次ドリ』に記事を書いたところで、話題がカブってしまって申し訳ありません。

 

『冒険仮面』の内容

神風五郎先生は、1984~1986年ごろに『にゃおん』という創作系同人誌のシリーズを出していて……。

こんなの

『冒険仮面』は元々、そこで描かれていたオリジナルの同人漫画でした。

同人版『冒険仮面』

それが商業連載化したのですが、『少年宝島』版でも、「80年代の漫研でメッチャ絵のうまい先輩が描いた、趣味に走りすぎのヒーローもの」みたいな雰囲気は色濃く残っています。

週刊少年宝島 1986年12/19号

「アピア!」は、英語の「appear(姿を見せる、出現する)」から。
たぶん「見参!」みたいなノリなのですけど、『少年宝島』では特に説明もなくアピアするのが、ちょっと分かりにくい気もしました。

『冒険仮面』という漫画は、「こういうの好き」って人と、「うわぁ…」ってなる人に分かれるかも知れません。

 

ドリーミィルル

同人版では「冒険仮面」「隼ジェット」「ドリーミィルル」の3人が変身するのですが、

『週刊少年宝島』の連載では、最終回でかろうじて「隼ジェット」が登場するだけで、ルルの変身はありませんでした。

ここから先は

4,812字 / 36画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?