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『ダッシュ!四駆郎』の思い出

※この記事は「4月分」の更新ですが、5月8日に「追記」の形で更新しました。
※以下は、2006年4月の『二次元ドリームマガジン』Vol.28に書いた文章の再掲載です。『ダッシュ!四駆郎』のネタバレが含まれます。

四駆郎とローラー

『ダッシュ!四駆郎』は、1987年から『コロコロコミック』に連載したミニ四駆の漫画です。

全14巻。いまは電子書籍で読めます

「ミニ四駆」というのは、単三電池で走る車の模型。
タイヤやモーターといった部品を別売りの高性能パーツに交換したり、ドリルで穴を開けて改造できるのが魅力です。

ミニ四駆用のパーツはたくさん販売されていて……。

『GO!GO!ミニ四ファイター』第1巻

ミニ四ファイターの漫画でも、「見た目にも銀色のローラー、カッコいいだろ?」と、ローラーセット(150円)が宣伝されていました。

『ドラゴン改造ミニ四駆BOOK』

この「みんなも、ローラーだけは必ず装備しよう!!」みたいな販促をするために、『コロコロ』の漫画が存在しているハズです。

ところが、『ダッシュ!四駆郎』の主人公たちは、このローラーを使用しません。
その理由を聞かれた四駆郎は……。

『ダッシュ!四駆郎』 第4巻

「だって、あれ……かっこ悪いじゃん
「目立たないようにつけるならいいけど、大いばりでつけるのはねぇ……

と、『コロコロ』誌上で関連商品をディスりまくる四駆郎でした。

 

デフ! フロントエンジン!

そんな感じで、『ダッシュ!四駆郎』では、販促漫画という大人の事情よりも、作者の美意識が優先されていたのでした。

(個人的にはあのローラーも好きですが、実車にはローラーを付けたりしないわけで、走る模型として実車に近づけるなら……という思想も分かります)

作者の徳田ザウルス先生は、たぶん本気で車を愛しておられて、メカの知識を前提にした上で、単に速度だけを求めるのではなく、己のロマンを語ります

それが男心をくすぐり、メーカーに迎合した宣伝などせずとも、「ミニ四駆はオモチャじゃない!」という魂の波動が自然に出まくって、なんか分からんけどミニ四駆ってスゲェ! と共振したチビッコたちにミニ四ブームを起こさせたのでした。

『コロコロ』のホビー漫画といえば、荒唐無稽な部分が注目されることが多いところ、『ダッシュ! 四駆郎』では、

  • ミニ四駆はプロペラシャフトだからジャンプ中に車体が横転する

  • 原始皇帝プロトエンペラーの異常なコーナー性能の正体は、ラジコンのようにデフを搭載していること

  • クリムゾンの秘密は、モーターをフロントに置いていること

……という感じに、車の機構に関しては、思いのほか現実的な理屈が出てきたりします。

まあ、出てくる人間の名前とかは、すめらぎ 快男児かいだんじさんとか、閻魔えんま 地獄丸じごくまるくんとか、あまり現実的ではありませんでしたけど。

『ダッシュ!四駆郎』 第8巻

ミニ四駆とは全然関係ない異常も、わりと起こります。

『ダッシュ!四駆郎』 第13巻

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