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大山倍達総裁の人生相談

この記事を含めて、今月中にあと2回更新を目指しています。

前置き

これまでに何度か、「人生相談」について記事を書いたことがあります。

『寺山修司から高校生へ』。
『周富徳の中華人生相談』。
『富野に訊け!!』。
『試みの地平線』(北方謙三先生)。

『星一徹のモーレツ人生相談』。
『青春一騎打ち』。
……どれも素晴らしく、甲乙つけがたい人生相談でした。

青春一騎打ち梶原一騎先生は、『巨人の星』や『あしたのジョー』を作った漫画原作者なのですが、

この人生相談のカタギじゃない感はスゴいです。

そして、若き日の梶原一騎先生が本当に暴力団と揉め事になったときに、かねてから親交のあった空手家の大山倍達さんに相談したところ……。

梶原一騎先生の自伝的作品『男の星座』の一場面

大山倍達さんは「おまかせなさい」と言ってくれて、しばらくしたら、暴力団の方から梶原先生に謝ってきたそうです。(怖すぎる)

その後、梶原一騎先生は、大山倍達さんをモデルにした『空手バカ一代』『カラテ地獄変』といった作品を作ることになります。

……てな感じで、極真会館の館長にして、牛を素手で殺せる空手家。
それが、大山倍達さんです。

『グラップラー刃牙』の登場人物・愚地独歩の「神心会の総帥」「虎殺し」といった部分も、大山倍達さんがモデルになっていると思われます。

 

『正拳一撃』

さて、その大山倍達さんも、『月刊パワー空手』という雑誌で、若者の相談に返事をするコーナー『正拳一撃』を連載していました。

過去の「人生相談」記事で、この『正拳一撃』については触れたことがなかったので、以前から、一度ご紹介しておきたいと思っておりました。
しかし、なかなか機会がなくて……。

もろもろの都合で、今日、『正拳一撃』の話をさせていただきます。

(ほかの「人生相談」を複数まとめて紹介だったのに、これを単独の記事にするのもヘンな感じなのですが)

 

手刀は強いのか?

『正拳一撃』の単行本は1994年に出版され、そのときまでの17年分の内容をまとめたものなので、時期的には古いです。
しかし、色々な問いにあの大山総裁がこう答えたという情報は、やはり興味深いです。

たとえば、「手刀」について。

「手刀の技は、選手権大会ではあまり見られません。
また、実戦でも、正拳ほど有効ではないと思いますがどうでしょうか」

と、25歳の若者が質問していました。

手刀といえば、プロレスラーの力道山さんに手刀を伝授したのも大山総裁だという説があります。
力道山さんは、その「空手チョップ」で巨大な外国人レスラーを倒していく姿で、戦後社会の英雄となりました。

また、1956年には、若き日の梶原一騎先生が『少年』という雑誌にプロレスの観戦記を寄稿。
その中で「力道山の空手チョップの雨嵐にも、コングの誇り高き巨体はひるまなかった」と書いたところ、力道山ご本人から怒られたという逸話があります。

力道山さんは「空手チョップちゅうモンを見とけい!!」と叫ぶと、梶原一騎先生の目の前で、料亭の柱をチョップで破壊。

『男の星座』

「本気の空手チョップを最初からブッ放せば、コングだろうと誰だろうと3分間ともたず担架に乗っちまう!」
と、コングのタフさはプロレス的な演出にすぎず、本気の空手チョップは必殺なのだと説明されたのでした。

……少なくとも、梶原一騎先生の『男の星座』にはそう描かれています。

やはり、手刀は強いのでしょうか。
『正拳一撃』では、極真空手・大山倍達総裁の見解が述べていました。

「手刀よりは、正拳が強い。正拳よりは肘が強いし、肘より足の方が強い」
「漫画や映画では、手刀で木を折ったり、石を割ったりというのがあるが、それはあくまで漫画や映画の世界の話です。実際には、手刀にそれほどの威力はない
「まして選手権大会に出る選手は鍛えに鍛えているから、手刀で打っても効果はない

大山総裁を信じるなら、あの柱破壊はフィクションだったようです。
(コングに空手チョップが効いていなかったという観戦記の方が事実に近かったのかも知れません)

とはいえ、この回答の一番最後には、「なにも鍛えていない相手だったら、手刀で鎖骨を折れる」とサラッと書かれています。
大山総裁の意見でも、一般人にとって空手家の手刀は十分ヤバいようです。

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