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芦原妃名子先生の件に関する日テレの報道について

この記事は2月6日に更新しました。マガジンとしては「1月分の記事」のところ、更新が遅れてしまっており、大変申し訳ございません。



瓜を破る

先日、TBSで『瓜を破る』の実写ドラマ版の放送が始まりました。

※『瓜を破る』は、ネット広告で人気が出たパターンの漫画。オッサン向けの雑誌に連載しているのに、女性漫画として人気があります。

 

ちんすこう

『瓜を破る』の主人公は、32歳で未経験なのがコンプレックスの女性。

……と、ちんすこうのシーンも実写化。

『週刊漫画TIMES』2020年9/25号
『瓜を破る』#2(2024年1月31日放送)

原作の絵柄だと、あまり32歳に見えないのですが、ドラマでは久住小春さん(31歳)が演じています。(wiki

 

パックマン

原作では、32歳OL(処女)の主人公が、29歳派遣社員(童貞)と、『ヴァンパイアハンター』的な格ゲーをきっかけに親しくなります。

『週刊漫画TIMES』2021年2/12号

実写版では、この『吸血鬼退治人』が、なぜか『パックマン』に変更。

この後、原作では、格ゲーの話で盛り上がるのですが……。

ドラマでは、もちろん『パックマン』の話で盛り上がります。

欲を言うと、ちゃんと許可をとって『ヴァンパイアハンター』で実写化した絵ヅラは見たかったです。

とはいえ、本筋とはあまり関係ないですし、力配分を優先すべきポイントではないのかも知れません。

同じような深夜ドラマで、もっとキャラが別人になって主旨が変わってるのもありますが……。
いまのところ、『瓜を破る』に関しては、20分×全8話におさめるためにエピソードやキャラを削ったりしつつも、大筋では原作の骨子を「ドラマ化」しようとしている、ように見えました。

(もちろん、好きなシーンが省かれたとか、キャスティングがイメージと合わないとか、原作ファンからの不満の声も多いですけど)

そんな感じで、『ヴァンパイアハンター』が『パックマン』になったという小ネタでした。

 

『セクシー田中さん』の件

と、いま「ドラマの原作と違う部分」の話をすると、変な意味が生まれてしまいそうですね。

周知の話ですが、先日起きた事件について、軽く経緯を確認させていただきますと……。

 

(周知の情報)

2017年、小学館の『姉系Petit Comic』で、

芦原妃名子先生の『セクシー田中さん』の連載が始まりました。

『姉系Petit Comic』2017年9月号

これがドラマ化されて、2023年10月22日~12月24日に放送されます。

全10話のうち、8話までは相沢友子さんが脚本。
9話・10話だけ、原作者の芦原妃名子先生の脚本
でした。

最後だけ原作者が脚本というのは、どういう事情だったのか。

最終話の放送日(2023年12月24日)に、1~8話の脚本だった相沢友子さんが、インスタにこう書きました。

「今夜最終話放送です。
最後は脚本も書きたいという原作者たっての要望があり、過去に経験したことのない事態で困惑しましたが、残念ながら(以下略)」

現在は削除

と、ワガママな原作者が「脚本も書きたい」と言い出して困ったもんだという感じの説明でした。

最終回の放送後(12月28日)にも、相沢友子さんは、こう言います。

「繰り返しになりますが、私が脚本を書いたのは1〜8話で、最終的に9・10話を書いたのは原作者です。誤解なきようお願いします。
(中略)
どうか、今後同じことが二度と繰り返されませんように

現在は削除

その投稿に対して、次のようなコメントが付いていました。

相沢さんの9.10話が見たかった。とても残念です」

「相沢さんならちゃんと描くだろうなと思いながら観ました。(中略)重ねてきた登場人物たちの厚みが最後に薄くなってしまったのが残念でした」

「急に世界観もテンポも変わったので不思議でした(中略)私も物書きの1人として尊厳を傷つけられたお気持ち、お察しします

と、原作者のワガママでドラマが台無しになったというような話が、脚本家のインスタから、ネットに広まったのでした。

それについて、2024年1月26日に、原作者の芦原妃名子先生が発信します。

魚拓

これによると、

  • 最初、「必ず漫画に忠実に」「結末は、未完の漫画に影響を及ぼさないよう、原作者があらすじからセリフまで用意する」という条件でドラマ化を許可した

  • しかし、毎回、漫画を大きく改変した脚本が提出された

  • 原作者があらすじとセリフを用意する約束だった8話〜10話でも、当初の条件が守られず、大幅に改変した脚本が提出された

そして、何度申し入れても改変されるため、やむを得ず、芦原妃名子先生が自分で脚本を書き、専門家に整えてもらう形になったそうです。

1月26日から、この話がネットで大きな話題となり、脚本家のインスタ発言への批判も集まりました。

それから、1月28日にこのツイートがあって、

URL

1月29日に、この報道がありました。

URL

 

(補足メモ)

「原作者 → 小学館 → プロデューサー → 脚本家」で、どういう伝達があったのか分からないので、私には何とも言えないのですが……。

ネット上での発端は、脚本家が「原作者のワガママでドラマの最後が台無しになった」というようなことをインスタに書いたことでした。
それによって、芦原妃名子先生に対する、あらぬ風評が流れました。

芦原妃名子先生の発信は、それに対する「原作者の側から見たらこうだった」という丁寧な説明でした。
どういう事情で、どう考えて、どう行動したのか、自分の立場を理解してもらう(誤解を解く)ことが目的で、脚本家を攻撃したいという意図はなかったのだと思います。

 

狭く見ると「脚本家がインスタで原作者の悪口を言った」という話。
広げるなら「原作漫画を単なる素材にしているドラマの作り方」とか、「漫画を実写化する際の契約のありよう」みたいな話題にもなりそうです。

 

日テレの報道

最初の「ドラマ化の条件」を脚本家が守ろうとしなかったという問題に関しては、日本テレビの責任が大きいと思われます。

『セクシー田中さん』のスタッフ(URL

「小学館→日テレ→脚本家」でどういう経緯があったのかは分かりませんが、「小学館がまったく話を伝えていなかった」とかじゃなければ、その点に責任を持つ立場は日テレのプロデューサーになりそうな気がします。

しかし、この事件を報じた日本テレビの番組は、『セクシー田中さん』のドラマ制作において具体的にどのようなトラブルがあったのかという部分には一切触れないというスタイルでした。

 

1月29日 23時~『news zero』

たとえば、当日23時の『news zero』では、

と、先生が亡くなったことを報じてから、『セクシー田中さん』の件について言及。

「現在マンガ雑誌で連載中の『セクシー田中さん』は、去年10月から日本テレビ系列でドラマ化されていました。
先週金曜日には、芦原さんは自身のSNSで、ドラマの9話・10話の脚本を自ら担当した経緯を明かしていましたが、昨日になって経緯のコメントを削除し、『攻撃したかったわけじゃなくて ごめんなさい』というコメントだけを残していました

……この説明だと、知らん人が『news zero』だけ見たら、「先生が何か攻撃的なことをSNSに書いて削除して謝罪した」と誤解しそうだと思います。

(まず、「ドラマの9話・10話の脚本を自ら担当した経緯を明かしていましたが、昨日になって経緯のコメントを削除し」というのが、説明しているように見せかけて、予備知識ナシだと意味の分からない話です。
そこに「ごめんなさい」のツイートだけを引用することで、まるで加害者だったような印象を残すというか)

私には、わざと情報を省いて、誤解させようとしているように見えました。

その不十分な説明に続いて、日本テレビの公式コメントが読み上げられます。

「日本テレビは、『芦原妃名子さんの訃報に接し哀悼の意を表するとともに、謹んでお悔やみ申し上げます。2023年10月期の日曜ドラマ「セクシー田中さん」につきまして、日本テレビは映像化の提案に際し原作代理人である小学館を通じて、原作者である芦原さんのご意見をいただきながら、脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし放送しております。本作品の制作にご尽力いただいた芦原さんには感謝しております』とコメントしています」

この「俺は悪くない」を訃報で言うのが、イカれてると思いました。

原作者からいただいた意向を軽視して、話し合いを重ねたけど脚本家が原作者の意向を無視し続けて、ついに原作者が自分で書くしかなかったのを、「最終的に許諾をいただけた脚本」という表現に。

この件は、「最終的に自分で書いてOK出したんだから問題ないでしょ?」という話じゃなくて、自分で書くところまで追い込まれた経緯に問題がありそうなのですが……。

自分の作品を守るために日テレ側の改変と戦った先生に、「ドラマのために頑張ってくれて感謝します」てのも、よく言えたなと思います。

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