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惑星移住計画
世の中には“がんばらない星”という惑星があるらしい。そこの住人は今日もがんばらず、毎日好きなことをやったりできることをやったりのびのびくらしているそうだ。
とてもいいな、と思った。コジカも引越ししたいと思った。
コジカは“がんばる星”で生まれ育った。この星はがんばることを美徳とし、生きがいとし、がんばる人間が讃えられる星だ。しかしこの星にはがんばれない人間の居場所はない。そしてがんばれなくなったコジカはこの星で息を吸う権利を失ったのだった、ほんの数ヶ月前のこと。
物理的な引越しと違って、価値観の引越しは早々簡単にできるものではない。コジカは苦しんだ。今も少し苦しんでいる。30年近く頭と体に染み付いた価値観をさっくり捨てられるほど、コジカは単純に出来ていないからだ。
眠れない夜は続いている。命を燃やして生きてきたコジカの大脳が、今日も人生という蒸気機関のエンジンに命を投げ込もうと必死になって焚きつけてくる。寝ている場合じゃない、起きて、がんばって、テストで100点をとって、認められながら生きていくんだと。勝手に人の交感神経を刺激して夜中に叩き起こしてくるので、普通にうるさい。
惑星移住は、今日も少しずつ進んでいる。
ついでに“好きなことだけやっていけるほど人生は甘くない星”や“母親に心配をかけちゃいけない星”からも住民票を移したい。
コジカは変化が苦手なので、何事にも人よりたくさん時間がかかってしまう。けれど幸福なことに、コジカの周りの人たちはちゃんと待ってくれる人がいる。お金の心配もあるにはあるけど、今すぐ稼がないと明日死ぬみたいな状況ではないので身体にムチ打って生きていかなきゃいけない状況でもない。
今までがんばってきたご褒美かな。
あまりコジカ自身、自分の人生をがんばってきたつもりはないんだけど(まあそもそも他人任せの人生を生きていたので)ゆっくりミルクティーでも飲みながら出来ることを増やしていきたいと思う。
おわり。
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