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千寿の小説まとめ

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私の書いた小説を纏めました。
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#ファンタジー小説

【小説】心臓の気持ち

私が死んだら、私の心臓を取り出して、海へと還してちょうだい。 そうしたら私は魚に生まれて、貴方の瞳の様な朝焼け色の尾鰭を持って、また貴方に会いに行くわ。 拝啓、私の心臓の持ち主。 貴方が願った通り、私は朝焼け色の尾鰭を持った魚として生まれました。 だけども、この不可思議な色のせいで、何時も何時も他の魚から遠巻きにされます。 貴方が愛したらしい、誰かの瞳の色。私はとてもじゃないけれど、好きだ、愛しいなんて気持ちにはなれません。嫌いです。 いえ、憎いです。 貴方のせいで私は独り

【小説?】洗濯機前線

ごうんごうん 音がする ごうんごうん 空っぽの音 ごうんごうん 回る回る空っぽの洗濯機 意味もなく 理由も無く ごうんごうん 回る回る 僕の耳の奥、頭の底、脳みその裏側では、いつもごうんごうん音がする。 今日は雨降り。こういう日は特に酷い。 気を紛らわせたくて雨の中に飛び出した。 しとしとざざざ、雨が降る。 しとしとぴっちゃん、雨が降る。 公園の紫陽花さん。何か言ってる。どうしたの。 「来ないで。登らないで。何処かに行って。」 カタツムリ君に言ってるみたい。 分かる。粘着