【連載】ちろうのAKB体験記 第22回 ■AKBフォロワーグループ

■AKBフォロワーグループ

今さらここでAKB以降のグループアイドルについて語るのは趣旨が違ってきてきてしまうかも知れないが、ぼくの体験記としてはやはり記述しなければならない。具体的にはAKB登場以降、そのブームにあやかるように勢いを増してきたグループアイドルについてである。それらの流れは、やはり大なり小なりAKBの影響を受けていると言わざるを得ないだろうから、AKBフォロワーグループというタイトルにさせていただいた。AKBの劇場公演が満足に見られず、またどうしても見たいという欲もなくなってきていたとき、ヲタの中で評判になっていたのは「ももいろクローバー(ももクロ。現在はももいろクローバーZ)」だった。もちろん結成当初からの歴史を知っているわけではないが、この頃のももクロはAKB48劇場に入れないヲタを救済してくれる場所として機能していた。

何しろキャッチフレーズがAKBの「会いに行けるアイドル」に対抗して、「今会えるアイドル、週末ヒロイン」である。しかもその場所がAKB48劇場のあるドンキホーテから裏通りを一本挟んだUDX内のUDXシアター。ここまで露骨にやられると逆に気持ちいい。開演30分前に劇場前に行くと抽選券が配られ、1000円の入場料を払って1時間ほどのライブを見る。メンバーは皆可愛く、パフォーマンスも一生懸命、しかもライブ後にグッズやCDを購入するとサインをもらったり握手ができる。ぼくですらAKBでこれほどの距離感を経験していなかったから、とても新鮮に映った。

何より週末だけとは言え、ライブを定期的に見られるという楽しさを改めて思い出させてくれたものだ。またライブの曲数の多さも突出しており、無料ライブでも10曲以上披露するということが頻繁にあった。ももクロも徐々に人気を獲得し始めると、開演直前ではチケットが買えないようになっていった。余裕とモチベーションがあるときは多少並んででもイベントを見に行った。そしてついに2010年5月5日、「行くぜっ!怪盗少女」でメジャーデビューを果たすと、その後の活躍は周知の通りである(とはいえ現在のように紅白歌合戦に出場できるようになるほど大きくなるとは思っていなかった!)。

次にぼくが通い始めたのが「ぱすぽ☆(現在はPASSPO☆)」だ。そのきっかけはやはりももクロを見に汐留の野外ステージに行った際、客席の後ろの方で見学をしていたのが後にぱすぽ☆のメンバーになる子たちで、とりあえずアイドルの卵と思しき子たちには話しかけるという精神の元、がっついていたのだ。もしこの子達がデビューするときには見に行こうと思った。この時にメンバーの増井みおさんとデジカメで撮らせてもらった2ショット写真は今でも大切にしている。そして2009年11月、彼女たちのデビューライブにも駆けつけた。9人組のグループアイドルで、中野サンプラザ、Zepp Tokyoを満員にするほどの人気を博した。後に指原莉乃プロデュース「第一回ゆび祭り」にも出演している。推しメンは槙田紗子(さこてぃ)と増井みお(みおみお)と奥仲麻琴(まこっちゃん)。アイドル戦国時代と言われた時期を牽引したグループだが、2018年9月22日に解散。

特典会のシステムが面白かったのは「AKBN0(エーケービーエヌゼロ。現在はNゼロ)」。これはもうほとんど「そのまま」である(笑)。彼女たちのデビューイベントが行われた代々木公演のステージには、かつてAKB現場に通っていた歴戦の現場系ヲタクたちが集結していた。もちろん変なもの見たさという理由でもある。このグループの特徴は「デートができる」という点だ。「打ち合わせ券」というものを購入すると、5000円で20分、あるいは1万円で40分ほど2人でイベント会場近くの喫茶店なりゲームセンターに行くなどしてデートができるのだ(もちろん2人きりというわけではなく、スタッフが同行する)他にも1分トーク券や2ショット撮影券等を販売している。これには賛否両論があるが(どちらかというと否が多いかもしれない)、今はコミュニケーションにお金を払う時代、CDに握手券をつけて売る時代である。それをストレートに表現していて潔いとすら言えるのではないだろうか。Nゼロの「ゼロ」は「資金ゼロ、所属アイドルゼロ、稽古場なし、衣装なし、もちろん専用劇場なんてなし。すべてゼロから真剣に紅白出場を目指す」というコンセプトから来ており、キャッチフレーズは「会って、話せて、打ち合わせができる募金アイドル」である。上記のような打ち合わせ券、あるいはトーク券、2ショット撮影券の売上を使って、コンサートを行う会場の規模を一つずつ大きくしていくのだ。これは成長の過程としてもシンプルでわかりやすい。徹底的にコストは抑えられ、楽曲は公募、通常イベントを行う場所はライブハウスなどではなく区や市の施設を使うことが多いことも理にかなっている。「聖地」としている赤羽会館での定期ライブの他、メンバーがそれぞれ好きなグループの1曲を披露する場である「ゆるぐだカラオケ大会」などのイベントも定期的に行っている。特に後者は衣装やダンスまで自分でプロデュースすることができ、重要なアピールの場となっていて、またファンにも評判の良いイベントである。最終的な目標は「紅白歌合戦に出場して、次の日に解散」。あらゆる意味で注目のグループである。

「アイドルカレッジ」の現場にもずいぶん通った。通称「アイカレ」は、今でも精力的に活動し続けているグループの一つで、つい先日結成10周年を迎えた。公式サイトによると、「“未来のアイドルをみんなと育てていこう”をテーマに、女の子たちに、歌唱、ダンス、演技のレッスンを積ませ、過程を公開イベントで行いスキルアップをはかりその成長過程を応援してもらうプロジェクト。」である。とにかく彼女たちのパフォーマンスは気迫が凄いのだ。キレも抜群である。AKBはかねてから「歌もダンスも上手くない」とはよく言われてきた。それに対比するように、かつてならハロプロが、あるいはももクロがよりクオリティの高いパフォーマンスを魅せるという人もいる。しかしそれは結局は好みの問題であって、自分の好きなものを見ていればいいというしかないだろう。ただ、アイカレに関しては、特にこれまでアイドル現場に関わりのなかった人にこそ見てもらいたい。純粋にエンターテインメントとして魅了されるはずである。もちろんAKBであってもももクロであっても(アイドル現場の面白さを広く知ってもらいたいと思うぼくからすれば)一度見てもらいたいのは同じだが、そう簡単に見られないのが現実である。しかも顔も判別できないような大きな会場であることが大半だ。そんななか、300人程度のキャパシティの会場で気軽に見られるアイカレはお勧めである。目の前数メートルの距離で、女の子の弾ける笑顔と躍動を体感するという(まさにぼくが初めてAKB48劇場で体験した)感動を味わえるはずである。

秋葉原でライブアイドル体験をしたいという人には、万世橋近くにあるカラオケパセラの7階に常設劇場を持つ「仮面女子」をお勧めしたい。ほぼ毎日公演をやっており、平日であれば1回1500円と比較的安価にライブを楽しむことができる。日によって出演者が変わるが(同じ場所を拠点にしている「スリジエ」というグループもまた勢いがある)、たまたま立ち寄ったときに運命的な出会いがあるかもしれない。

これらは今現在あるアイドルグループのうちのほんの一例にすぎない。ぼくが2008年以降、体験したアイドル現場である。どのアイドルグループであっても推しメンが見つかり、話しているうちに認知されたり、ライブパフォーマンスのなかで成長を見守れたりと、その楽しさはAKBで体験したものと全く変わらない。そして2019年現在、東京、あるいは全国にどれほどのアイドルグループがあるかというのはとても把握しきれるものではない。日々新しいグループが生まれては消えている(淘汰も厳しいだろう)。もしAKB48を通してアイドル現場というものの楽しさを知った人には、是非また新たな楽しみを求めていろんなアイドルグループの現場に足を運んで欲しいと思う。誰もが認めるメジャーアイドルとなったAKB48とはまた違った世界が、そしてまた、まだ全国的な人気を獲得していなかったころのAKBを追体験できる場所が、そこには広がっている。

(次回に続きます)

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