【連載】ちろうのAKB体験記 第10回 ■1周年記念公演~秋葉原大運動会~

■1周年記念公演 秋葉原大運動会

2006年12月8日はAKB48劇場が始まって1周年である。この頃は前にも触れたように初日・千秋楽といった節目の公演は混雑が予想されることから、完全メール抽選となっていた。しかしこの1周年公演にはそういうアナウンスはない。それでも何かしらのサプライズはあるという予想がファンの中で共有されていたので、この日のチケット争奪戦は熾烈なものになりそうだった。

それを察知した運営側は、変わった策に出る。チケット販売の10時の1時間前、午前9時にチケット販売のための整理券を配る列を作る場所を発表するというのだ。よくよく考えれば、その程度のことで混雑が解消されるわけはないと思うが、これが後に伝説となる「秋葉原大運動会」の始まりである。整理券配布場所を変えるといっても、ドンキホーテからそう遠くないことは予想されたから、200人ほどのファンが午前9時前にはすでにドンキホーテの裏に集結していたのだった。

整理券の配布場所はトガブロで発表されるということだったので、そこにいたほぼ全員が携帯電話の画面とにらめっこをしていたが、ぼくはただ周りのファンの動きに合わせれば良いと気楽に構えていた。

それはほんの一瞬だった。誰かが走り始めたのだろう。堰を切ったようにその場にいた全員が一方向に走り始めたのである!それはまさに大運動会の号砲、お祭りの始まりだった。

果たして整理券のための列はドンキホーテの裏通りからさらに一本裏、万世橋消防署のある通りのJR高架のすぐ脇だった。そこに先頭のスタッフが立っていたらしく、ファンが雪崩のように突撃していく。これまで見たこともないような異様な光景だった。後に、運動会のコース上にたまたま居合わせた一般人が怪我をしたなどの情報があったし、その運動会に参加していたぼく自身、ヘタをしたら命の危険に関わるよなという恐怖に駆られた。列もあってないようなもので、徐々に先頭から整列していくわけだが、後からそこにやってきたとしても律儀に後ろの方に回り込まずに、前の方に突撃していけば列に吸収されるという無法地帯だった。しかしその光景を、目の前の万世橋消防署の人たちはどんな気持ちで見ていたのだろうか(笑)。

チケットが買えるのは180~200人程度までだったと思うが(メール抽選枠が40枚ほどあった)、ぼくは100番前後の整理券をGETすることができた。整理券が配られたあと、通常通りドンキ前に列を移した。そこで1時間程度列に並ぶのだが、ちょっとした事故が起こる。たまたまぼくの近くに並んでいた人(推定40代男性)が歩道と車道を隔てる手すりに腰掛けようとしたところ、その部分だけ手すりがない状態で、そのまま後ろに転がってしまったのだ。そこで頭を切ったのか流血し、救急車が出動する騒ぎになった。意識ははっきりしていたので安心したが、血が出ていたので救急車に収容されることになる。整理券を取り、チケットをまだ購入していない状態である!

スタッフが駆けつけて救急車に収容されるが、担架に横たえられた状態でそのファンが放ったセリフは今でも忘れられない。「わたしチケット買えますよね!?ここに並んでたんです!」

恐るべき執念だ。そしてそのファンは無事に、頭に包帯を巻いた状態で1周年記念公演に入っているのだった。。。

さらにはこのことにも触れておこう。この日の夕方17時ころ、公演前の時間にドン・キホーテ前に篠田麻里子が立っていた。何をしているかといえば、その日の公演のチケットを配っていたのである(無料で!)。それはまさに1年前のその日、AKB48の劇場OPENの際、少しでも多くの観客に劇場に足を運んでもらうべく、当時のカフェっ娘がチケットを無料で配っていたことを再現しているのであった。しかしよく考えてみて欲しい。この日の朝に大運動会を巻き起こすほどのチケット争奪戦を繰り広げたプラチナチケットである。それをたまたまこの時間・この場所に居合わせたなら、無料で入手できてしまうなんて!

何とも不公平な話だが(笑)これこそAKB48運営が最も大切にするサプライズ精神を表す象徴的な姿だった。スタッフ用の白のウォーマーを着た篠田麻里子が、ドンキ前の歩道を通りかかる一般人に声をかける。物珍しそうにして受け取る人もいたが、たまたま通りかかった若い男性3人組は、篠田麻里子の「良かったら19時からの公演見に来てください!」という呼びかけに対し、一度チケットを受け取ったものの「やっぱ良いです。」などと言って突き返したのだった。

ああ、なんという!!!後に彼らは、それが世を席巻するAKB48の重要な日の公演であったこと、そしてそれを勧めてきた子があの篠田麻里子だったことを知り一生後悔することになるだろう!いや、後悔しろ!!!バカバカっ!

そんな光景にたまたま遭遇してしまったぼくは、そのチケットをもらうわけにも行かず、すぐ脇から眺めていた。スタッフ、篠田麻里子、そしてたまたまその場に居合わせた数人のファンたちと共に苦笑いをするのだった。このとき篠田麻里子と「し、しょうがないよね苦笑」などと会話することができ、そんな出来事があったために、これまではっきりと決まっていなかったチームA内の推しメンが、それ以降は篠田麻里子になったことは言うまでもない。

この日の公演は文字通り、劇場1周年記念を祝うものだった。劇場の柱に貼られているピンクのテープ。年を重ねるごとに1本ずつ追加されているあのテープの1つめが登場した日だった。高橋みなみが「1年経つごとに、この印が追加されていきます」などと言っていたように記憶しているが、その時の客席は「なんだそりゃ」と苦笑するのみだった。。。それも今となっては歴史を感じさせる印になっているから感慨深いものがある。

(次回に続きます)


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