【連載】ちろうのAKB体験記 第23回 ■女ヲタヲタ

■女ヲタヲタ

女ヲタヲタとは何か。それは「女ヲタ」のヲタ。つまりはアイドル現場に来ている女ヲタに積極的に絡んで仲良くなろうとするヲタのことだ。AKB48も世間的に認知度が上がってくると、現場にも女の子のファンが増えてくる。それは単にアイドルが好きでというだけでなく、自分自身がアイドルになることを夢見ていることもある。昨今の小中学生の女の子の将来の夢の上位に「アイドル」が挙げられることを考えても、不思議なことではないだろう。AKBにおいても、過去にAKBのファンだったというメンバーは少なくない。

そもそもアイドルヲタというのは(というか男というのは)、可愛い女の子が好きなのだから、同じ現場にいるファンの女の子と仲良くなろうとするのはわからない話ではない。そしてぼくも含め、これまで女の子と話をするのが得意ではなかったパターンが多いわけだが、AKB現場においては話すネタがないということはありえない。何しろ「誰推し?」というマジックワードで、どんなキモメンでもとりあえず会話の糸口を掴むことができるからだ!

しかしそれは当然の如く、冷たい視線を向けられる対象でもあった。お前はアイドルを見に来ているのではないのかと。女の子なら誰でもいいのかと。そして同時に「男ヲタヲタ」と呼ばれる女ヲタも存在した。当時は今のように若いヲタは少なかったが、多くのおじさんヲタにちやほやされて、各種権利や握手券や写真を融通してもらうことを得意としていた女ヲタだ。さらにエスカレートすると食事や車での送り迎えまでがあった。それはバブル時代のアッシーやメッシーを彷彿させる。しかし女の子と仲良くしたい男ヲタと、ちやほやされたい女ヲタで、需要と供給はマッチしていると言えるのではないだろうか。

ぼくは当時、ナンパ師気質でかつ昼間からフラフラしている友人とよくつるんでいた。それで、「ちろうさん、こんなに可愛い女の子のファンがたくさんいるのに、放っておくのはもったいないよ!」などとけしかけられ、一時期は徹底的に女ヲタヲタ行為に勤しんだ時期があるのだ。(あくまでも自分の意志でやったのではない、とでも言いたげで恐縮である)

公演のチケットを買ってから公演が始まるまでの空いた時間に劇場をうろうろしたり、握手会場で女ヲタに声をかけるということをよくしていた。仲良くなって一緒に劇場外のコンサートや食事に行くこともあった。その結果、2ちゃんねるの女ヲタヲタスレというところで、「女ヲタヲタのいぶし銀」などという不名誉な称号を付けられてしまった。まったくもって恥ずかしい話である。

2009年の話だが、劇場で4人組の女の子に話しかけたら、それは香港からの旅行者だった!聞くと、香港でもAKBは人気なのだという(後の2010年には香港でAKBオフィシャルショップがOPENする)。AKBが好きで、秋葉原の劇場にまでやってくるくらいだから、日本語も勉強していてそれなりに話せたのだ。しかし当然の如く、ふらりと劇場に訪れても公演のチケットを買えるわけではない。それは少し可哀想だと思い、その時たまたま持っていた「言い訳Maybe」の劇場版CDをあげたのだった。

熱心なAKBヲタなら分かると思うが、劇場版CDというのは大量購入してしまいがちで、処分に困るものだ。しかしその子たちからすればそんな事情は知らないので、ものすごくビックリしていた。それもそのはずで、たまたま居合わせた日本人のファンが通常1000円するCDをくれたらそれは驚くだろう(笑)。彼女たちがAKBのことをもっと好きになり、そして彼女たちの日本への旅行がより良い思い出になってくれれば良いと思ったものだ。(さらにこの話には続きがあり、2010年の香港のAKBオフィシャルショップのOPEN記念握手会に行ったとき、その時の香港のファンに再会したのだ!その熱心なファンは現地でAKBの衣装に似た制服のコスプレをしておりひときわ目立っていた。それで「その衣装すごいねー」と話しかけたりしたのだが、そうしたらあまり上手いとは言えない日本語で「私あなたに会ったことある」と言われて、この子は一体何の勘違いをしているのかと一瞬思った(笑)。それがあの時のことなのだとわかるまでに数秒を要したのだ。事実は小説よりも奇なり。)

2007年10月。その頃はまだAKB現場に若いファンが多いとは言えなかった。しかし劇場などにたまに若い女の子のファンがいたりするのである。その空間はほとんどがおじさんヲタで、しかもヲタ同士はコミュニティを形成しており、一人ぼっちでその場にいるのは寂しいものである。これはぼく自身が過去に体験したことだったから分かるのだ。特に若い女の子であればなおさらだ。そういう迷える子羊を救済するのがぼくの使命であった。

その時は中学生と思しき女の子が一人でいたので、話しかけた。するとその子は福岡から来ているファンなのだという。これには驚いた。まずその距離の遠さに、そして何より女の子がたった一人で来ているという事実について驚いた。少なくともぼくは東京から福岡への遠征などその時はしたことがなかったからだ。よほど自分よりも熱心なファンに思えてしまった。彼女は2007年3月に行われた「春のちょっとだけ全国ツアー」の福岡公演にも行っているほどの熱心なヲタだった。

推しメンを聞いたらゆかりん(佐藤由加理=当時チームA、後にSDN)だという。それならば遠征の記念になればいいと思って、それもたまたま持っていたゆかりんの写真をプレゼントしたのだった。それはものすごく喜ばれてぼくも良い気持ちになった。

まったく何と取るに足らない話だと思われるだろう。自分でもそう思う。しかしこの10ヶ月後、ぼくはその名も知らぬ女の子と思わぬ形で再会を果たすのである。

(次回に続きます)

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