【連載】ちろうのAKB体験記 第9回 ■ 初めての2ショットポラ

■初めての2ショットポラ

初めての握手によって、自分が推しメンに認知されるというこれ以上ないという感動に浸っていたわけだが、人の欲というものは止まらないもので、ぼくも「2ショットポラ」というものを撮りたくなってきた。2ショットポラは基本的に劇場公演のあとに劇場内に呼び出され、指定のメンバーと2ショット写真を撮れるというものだ。その写真にはサインとメッセージを書いてもらい、当日あるいは後日に受け取るのだが、何といっても好きなメンバーと3~5分直接しゃべることができるということが魅力だった。(補足だが、通称「ポラ」は商品名(ポラロイド)で、後に生産中止になり現在は存在していない。今あるのは一回り小さな「チェキ」、あるいはポラロイドと同程度の大きさの「ワイドチェキ」である。現在の地下アイドル現場でもおなじみのものである)

2ショットポラの始まりはインディーズシングル「桜の花びらたち」。1期生20人、それぞれのジャケットのCDがセットになった20枚入りのBOXを購入すると、その購入特典として与えられる権利であった。BOXの価格が2万円である。もちろんそれはあくまでも「おまけ」であるのだが、今現在個別握手券が「1枚1,000円(正しくはCDが1,000円であり握手券はおまけだが)」と換算されるように、「2ショットポラは2万円」という暗黙の基準が制定されたのであった(後にあくまでもファン同士の中で5万円、3万円、10万円以上と変動する)。

次のインディーズシングル「スカート、ひらり」でも20枚セットのBOXが販売される。さらには当時劇場のカフェで販売していた「AKB浴衣(販売価格24,000円)」にも2ショットポラの権利は特典としてついてきた。そのような2ショットポラ券が乱発されていた時代を、ぼくは経験していない。

正確に言うと、撮ってはみたかったがしかし、本来はおまけでしかないはずのものを2万円や3万円も出して買うことは躊躇われた。だからまあ「機会があればそのときで良いだろう」というくらいの気持ちだったのである。

しかしメジャーデビューも果たした2006年11月ころ、2ショットポラを撮る権利はしばらく提供されておらず、3万円でも5万円でも出して撮りたいという人が現れ始めていた。そんな中、tgskこと劇場支配人の戸賀崎氏が平日の昼間にAKBカフェスペースに現れ、事務所から「スカートひらり」の20枚BOXセットを持ってきて、ドカドカと物販スペースに並べ始めたのである。個数にして10個弱、おそらく8個程度だったと思う。理由は「在庫があったから」(笑)。そのBOXセットは完全に受注生産で販売されており、すでに入手は不可能なものだった。戸賀崎氏に「これ売ってるの?」と聞くと、「売ってますよ~」とあっけない答え。まったく不公平な話だが、平日昼間にカフェに常駐しているファンほど有利に振る舞えるということの典型だ。それはものの十数分で完売していた。

それを見ていたぼくは、決して安価ではないそれを即買いした。今更CDが欲しかったわけではない。もちろん2ショットポラを撮る権利が欲しかったからだ。そんなわけで突如として2ショットポラを撮る権利を入手したので、さっそく小林香菜で申請したのだった!

数日後、撮影日はやって来た。それを撮る直前はやはり心臓が飛び出るくらいに緊張した。公演後の、人がいなくなったカフェスペースに残って順番を待つのだが、当時併設のカフェで働いていた店員(カフェっ娘)に励ましてもらったりしていた。そしていざ劇場内に呼び込まれて小林香菜と対面する。思えば後にも触れるMVP写真撮影もそうだが、この2ショットポラ撮影というのも推しメンに対してその好意をダイレクトに示す行為であるなあと思う。決して少なくないメンバーの中から一人を選ぶのだから、伝わりやすい。もし緊張してしまってうまく喋れなかったとしても、その権利を行使している時点できっとその想いは伝わるのだ!そう自分に言い聞かせていた(笑)。

その時はお互いにチームKポーズで撮影(そしてそれは小林香菜のイニシャルでもある!)。そのときはつい先日の日本青年館コンサートの感想などを伝えたのだが、その際に着ていたTシャツについて指摘された。「面白いTシャツ着ていましたね!」と言われビックリした。まさかそこまで見られているとは・・・客席でおかしなことはできないなと思ったものだ。しかしそんな大きな会場でもぼくのことを認識してくれていたことを嬉しく思い、終始幸せな気分で撮影を終えることができた。

後日受け取った写真には、「Tシャツ作ってくれてありがとうございました。うれしかったです。うらやましいです。これからも応援してください」と書かれていた。その2ショット写真はぼくの中で宝物となった。そして来るべき時に、彼女にもそのTシャツをプレゼントしなければならないだろうと思ったのだった。

(次回に続きます)


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